【完結】義妹に全て奪われた私。だけど公爵様と幸せを掴みます!

朝日みらい

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第35章: アルノーの弱さ

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その日、アルノーは朝からずっと無口だった。

私は彼がいつもより硬くて、心ここにあらずな姿勢に気づいていた。

アルノーがこんなふうに感情を露にするのは珍しい。

普段は冷静で、どんな困難にも動じない彼なのに。

「アルノー、どうかしたの?」

私は少し躊躇しながらも、彼に声をかけた。

いつもなら「何でもない」と軽く流されるはずなのに、今日は違った。

アルノーは顔を少し背け、深い溜息を吐いた。

「失敗したんだ。」

その言葉に、私はドキッとした。

大口の商談が上手く行かなかったことを、彼は正直に話した。

彼が弱気な顔を見せるなんて、何だか信じられない。

「アルノー…」

私は少しでも慰めようと、彼に近づいた。

「そんなに自分を責めなくてもいいんじゃない?みんな、そんなことはないって分かってるわよ。」

でも、彼は視線を合わせようとせず、無言で手元の書類を睨んでいた。

目を合わせることなく、彼の表情がわずかに歪んだのが見えた。

普段はあんなに鋭い目をしているのに、その日はなんだかとても悲しそうに見えた。

「リリアナ、俺のせいで部下たちに迷惑をかけたんだ。」

彼は低く呟いた。

普段の彼ならあり得ない言葉だ。

私は彼の横に座り、慎重に言葉を選んだ。

「でも、それって誰だってあることだし…アルノーだって、完璧な人じゃないの…」

やっぱり言い方がうまくいかないな、なんて思いながら、彼の肩に軽く手を置いてみた。

アルノーの身体がピクッと震えたのがわかる。

私の手が温かくて、少しでも安心してほしい、そんな気持ちが伝わったらいいなと思ったけれど、彼はすぐに立ち上がった。

「すまない。一人にしてくれ。」

その一言が、私の胸に突き刺さった。

振り向きもせずに、アルノーは部屋を出て行ってしまった。

…え、何それ?

こんなこと言われるなんて。

私はその場に残されたまま、ぽかんとしていた。

ふと、冷たい空気の中で、一人だけぽつんと立ち尽くしている自分が、すごく寂しく感じられた。

少しの間、何もできなかったけれど、だんだん心が冷静になってきた。

アルノーがどんなに強くても、どんなに冷徹であろうと、私には分かる。

彼は完璧じゃない。

もちろん、私だってそうだし、でも、そんなところを私は愛しているんだから。

「アルノー、そんなに一人で抱え込まないで…」

私は心の中で呟きながら、アルノーが去ったドアの前に立った。

少し経って、そっと彼の部屋の扉をノックしてみる。

返事はないけれど、試しにもう一度。

「アルノー…?」

ようやく、かすかに返事が聞こえた。

「…入れ。」

私は恐る恐るドアを開けると、彼は背中を向けてソファに座っていた。

普段なら少しもこんな空気を作らないのに、なんだかすごく大きな背中が見えた。

「アルノー、無理しないで。失敗したって、私はあなたを見捨てたりしない。」

私はできるだけ優しく声をかけた。

「…リリアナ。」

アルノーが振り向き、少し驚いたように目を見開いた。

「君は…」

「何度も言うけれど、私、あなたのそばにいるよ。あなたが落ち込んでいるときは、私だって一緒に悲しいんだから。」

私は思わず手を伸ばして、彼の肩を軽く叩いた。

アルノーの目がほんの少しだけ優しくなったような気がして、私は胸が高鳴った。

まだ少し硬いけれど、彼が少しでも元気を取り戻してくれたらいいなと思う。

「すまない、リリアナ。」

アルノーはついに、少しだけ笑顔を見せてくれた。

照れくさそうに目をそらすその姿が、なんだか可愛らしい。

「アルノー…」

私は少し顔を赤くしながら、彼に近づいていった。

そのまま、二人の間に静かな時間が流れた。

どちらからともなく、手を繋いで、私は彼に微笑みかけた。

「私は、いつでもあなたの味方だよ。」 

「わかってる。」

アルノーは、ほんの少しだけ、照れ笑いを浮かべて言った。

「俺も、君を離さない。」

その言葉に、私の心は温かくなった。
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