【完結】なんで俺?勇者はなぜか聖女に慕われる。

朝日みらい

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「エルドレッド……」

 セリーヌが幸せそうな声でつぶやいた。

 彼女は勇者の首の後ろに手を回すとぎゅっとしがみついてくる。

「エルドレッド……好き……」

「ああ……」

 勇者はセリーヌの髪をなでながらそう答えた。

 さらさらとした感触が心地良い。

 なんだか眠ってしまいそうな気分になったときだった。

 ──突然セリーヌがハッとした表情をする。

 そして勇者からぱっと離れると、立ち上がった。
 
 その顔は少し青ざめているようだった。

(どうしたんだ?)

 不思議に思っていると、セリーヌがきょろきょろと周りを見回す。

 そして険しい表情になると、勇者に話しかけてきた。

「エルドレッド……なんだか変よ」

「え?」

 勇者は耳を澄ましてみたが、何も聞こえない。

 だが、セリーヌの表情は真剣そのものだった。

 どうやら冗談を言っているわけではなさそうだ。

(おかしいな……?)

 そう思って勇者も立ち上がると周囲を見回したのだが、やはり何もおかしなところはないように思える。

 するとセリーヌが言った。

「魔物が近づいている……気配を消しているだけ……でも、私たちよりも強いわ!」

「なんだって!?」

 勇者は驚きの声を上げた。
 
 だが、それと同時にあることに気づいた。

(ん……?)

 地面が少し揺れているような気がした。

 それもかすかな振動ではなく、ずしんとした重みのある揺れ方である。

(地震か?  いや違うな……これはもしかして……!)

 次の瞬間──地面を突き破って巨大な影が飛び出してきた!

 それは巨大なミミズのような姿をしており、全身が粘液のようなもので覆われていた。

 それがウネウネと蠢いている様子はおぞましいとしか言いようがない。

(これは……巨大魔物か……!)

 勇者はすぐに剣を抜いて構えたが、同時にセリーヌが呪文を唱え始める。

 どうやら戦うつもりのようだ。

 聖女が使う魔法は非常に強力で、普通の魔物ならば一撃で倒してしまうほどの威力を持っている。

 だが、今回の敵はそう簡単にはいかなそうだった……何しろ大きさが違うのである。力を発揮するには、まだしばらく時間稼ぎが必要だ。

「うおおっ!」

 勇者は聖女を守るために、気合いの声を上げながら巨大魔物に切りかかっていく。
 しかし、巨大魔物はその巨体からは想像もつかないほどの速さで攻撃を避けると、勇者に向かって襲いかかってきた。

「くっ!」

 勇者は間一髪のところでそれをかわすと、体勢を立て直すため距離を取ろうとするが──それは叶わなかった。
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