8 / 18
(8)
しおりを挟む
「エルドレッド……」
セリーヌが幸せそうな声でつぶやいた。
彼女は勇者の首の後ろに手を回すとぎゅっとしがみついてくる。
「エルドレッド……好き……」
「ああ……」
勇者はセリーヌの髪をなでながらそう答えた。
さらさらとした感触が心地良い。
なんだか眠ってしまいそうな気分になったときだった。
──突然セリーヌがハッとした表情をする。
そして勇者からぱっと離れると、立ち上がった。
その顔は少し青ざめているようだった。
(どうしたんだ?)
不思議に思っていると、セリーヌがきょろきょろと周りを見回す。
そして険しい表情になると、勇者に話しかけてきた。
「エルドレッド……なんだか変よ」
「え?」
勇者は耳を澄ましてみたが、何も聞こえない。
だが、セリーヌの表情は真剣そのものだった。
どうやら冗談を言っているわけではなさそうだ。
(おかしいな……?)
そう思って勇者も立ち上がると周囲を見回したのだが、やはり何もおかしなところはないように思える。
するとセリーヌが言った。
「魔物が近づいている……気配を消しているだけ……でも、私たちよりも強いわ!」
「なんだって!?」
勇者は驚きの声を上げた。
だが、それと同時にあることに気づいた。
(ん……?)
地面が少し揺れているような気がした。
それもかすかな振動ではなく、ずしんとした重みのある揺れ方である。
(地震か? いや違うな……これはもしかして……!)
次の瞬間──地面を突き破って巨大な影が飛び出してきた!
それは巨大なミミズのような姿をしており、全身が粘液のようなもので覆われていた。
それがウネウネと蠢いている様子はおぞましいとしか言いようがない。
(これは……巨大魔物か……!)
勇者はすぐに剣を抜いて構えたが、同時にセリーヌが呪文を唱え始める。
どうやら戦うつもりのようだ。
聖女が使う魔法は非常に強力で、普通の魔物ならば一撃で倒してしまうほどの威力を持っている。
だが、今回の敵はそう簡単にはいかなそうだった……何しろ大きさが違うのである。力を発揮するには、まだしばらく時間稼ぎが必要だ。
「うおおっ!」
勇者は聖女を守るために、気合いの声を上げながら巨大魔物に切りかかっていく。
しかし、巨大魔物はその巨体からは想像もつかないほどの速さで攻撃を避けると、勇者に向かって襲いかかってきた。
「くっ!」
勇者は間一髪のところでそれをかわすと、体勢を立て直すため距離を取ろうとするが──それは叶わなかった。
セリーヌが幸せそうな声でつぶやいた。
彼女は勇者の首の後ろに手を回すとぎゅっとしがみついてくる。
「エルドレッド……好き……」
「ああ……」
勇者はセリーヌの髪をなでながらそう答えた。
さらさらとした感触が心地良い。
なんだか眠ってしまいそうな気分になったときだった。
──突然セリーヌがハッとした表情をする。
そして勇者からぱっと離れると、立ち上がった。
その顔は少し青ざめているようだった。
(どうしたんだ?)
不思議に思っていると、セリーヌがきょろきょろと周りを見回す。
そして険しい表情になると、勇者に話しかけてきた。
「エルドレッド……なんだか変よ」
「え?」
勇者は耳を澄ましてみたが、何も聞こえない。
だが、セリーヌの表情は真剣そのものだった。
どうやら冗談を言っているわけではなさそうだ。
(おかしいな……?)
そう思って勇者も立ち上がると周囲を見回したのだが、やはり何もおかしなところはないように思える。
するとセリーヌが言った。
「魔物が近づいている……気配を消しているだけ……でも、私たちよりも強いわ!」
「なんだって!?」
勇者は驚きの声を上げた。
だが、それと同時にあることに気づいた。
(ん……?)
地面が少し揺れているような気がした。
それもかすかな振動ではなく、ずしんとした重みのある揺れ方である。
(地震か? いや違うな……これはもしかして……!)
次の瞬間──地面を突き破って巨大な影が飛び出してきた!
それは巨大なミミズのような姿をしており、全身が粘液のようなもので覆われていた。
それがウネウネと蠢いている様子はおぞましいとしか言いようがない。
(これは……巨大魔物か……!)
勇者はすぐに剣を抜いて構えたが、同時にセリーヌが呪文を唱え始める。
どうやら戦うつもりのようだ。
聖女が使う魔法は非常に強力で、普通の魔物ならば一撃で倒してしまうほどの威力を持っている。
だが、今回の敵はそう簡単にはいかなそうだった……何しろ大きさが違うのである。力を発揮するには、まだしばらく時間稼ぎが必要だ。
「うおおっ!」
勇者は聖女を守るために、気合いの声を上げながら巨大魔物に切りかかっていく。
しかし、巨大魔物はその巨体からは想像もつかないほどの速さで攻撃を避けると、勇者に向かって襲いかかってきた。
「くっ!」
勇者は間一髪のところでそれをかわすと、体勢を立て直すため距離を取ろうとするが──それは叶わなかった。
1
あなたにおすすめの小説
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~
天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。
どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。
鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます!
※他サイトにも掲載しています
本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
氷雨そら
恋愛
本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。
「君が番だ! 間違いない」
(番とは……!)
今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。
本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる