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第5章:黒髪の騎士と、不器用な邂逅
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その日、空はびっくりするほど灰色で、湖畔には冷たい雨がしとしとと降っておりました。
霧をまとうような空気のなか、雨粒が水面を打ち、ぽつり、ぽつりと静かな音を奏でては波紋を描いてゆく。風はほとんどなく、ただしっとりと濡れた世界が、まるで時間ごと静止しているかのように感じられました。
温室の中は、そんな雨音に包まれて、どこか心地よい静寂に満ちていました。湿気がガラスの内側をうっすら曇らせていて、空の色までも薄墨で塗りつぶしたよう。だけど、不思議と心は落ち着いていたのです。
わたしは、静かにミューゼリアの葉に霧吹きを当てていました。冷えた空気の中で、小さなつぼみがうつむくように身を縮めている様子が、まるでわたし自身のように思えてならなかったのです。
「……寒くない? あんまり揺れないわね、今日は」
そっと囁くように話しかけながら、ミューゼリアの葉に触れました。もちろん、返事が来るわけではないとわかっていながら、それでも言葉をかけずにはいられないのです。この静かな命と心を通わせたい――そんな衝動に似た想いが、胸の奥にあったのでしょう。
と、そのときでした。
「……っ、ここって誰の屋敷だ……?」
外の茂みのほうから、荒い息遣いと、低くしわがれた男の声が聞こえてきました。
反射的に窓のほうを見やると、雨に濡れきった黒髪の青年が、ぼろぼろの騎士服を身にまとい、肩で息をしながら佇んでいたのです。
その姿はまるで、どこか異世界から滑り込んできたかのような、場違いな現実感でした。だというのに、わたしは少しも怖くなかった。むしろ、傷ついたその姿に、胸の奥がちくりと痛んだのです。
(どなた……? 騎士服……それに、血……?)
思考よりも早く、身体が動いていました。気づけば、わたしは温室の扉を押し開けて、冷たい風に顔をしかめながら、彼に駆け寄っていたのです。
「……怪我をしてるの? 立っていられる? すぐ、タオルと包帯を持ってくるわ。中に入って」
青年は少し驚いたように目を見開いてから、黙ったままわたしを見つめ返してきました。その瞳は、まるで何かを測るように、じっと奥を探るように。けれど――やがて彼は、ぎこちなく頷きました。
「……悪い。助かる」
それからは、クラリスの手も借りて、わたしたちは彼の傷の手当てに取りかかりました。脇腹に擦り傷と打撲があり、左肩には浅い切り傷。どうやら落馬したうえ、何かに追われていたようでした。
「……名前は、レオナール・クローディアス。元・辺境騎士団の隊長だ」
薬を塗りながら、彼はぼそりと名乗りました。口調はぶっきらぼうで、どこか諦めを孕んでいるような響きがありました。
「元……ということは、今は?」
「今は、ただの流れ者だ。潔白を証明できず、騎士団を去ることになった。言ってみれば、厄介者だな」
(辺境騎士団……王都から遠く離れた場所で、外敵や反乱分子の制圧を担っている精鋭部隊。噂では、政治的な思惑も多く絡む部署だと聞いていたけれど)
彼の言葉には、言い訳や自己弁護の色はなかった。ただ淡々と、事実だけを語るような声音でした。でも、わたしにはその奥にある痛みや、押し殺した誇りの欠片のようなものが、なんとなく伝わってきたのです。
「俺には……祝福も称号も、何もない。でも、あなたの手を汚させたくないと思った」
その言葉に、わたしはつい微笑んでしまいました。
「……ふふっ、それって、優しさのつもりかしら?」
「……優しさって、なんだかよく分かんねぇ。でも、そう思ったから……そうしただけだ」
その不器用な言葉は、なぜだか心に響きました。
その日を境に、レオナールは屋敷に滞在することとなりました。
最初は遠慮がちだった彼も、次第に温室の修繕や庭の手入れを手伝ってくれるようになり、私たちは少しずつ言葉を交わすようになっていきました。
「……この花、誰が育ててたんだ?」
「わたしよ。元・王太子妃候補、いまはただの温室の住人」
そう返すと、レオナールは眉をひそめて、少しだけ首を傾げました。
「……元王妃? そんなもん、もう背負う必要ないだろ」
その言葉が、どこか真っ直ぐすぎて、胸に少しだけ刺さりました。
「……ふふっ、そうね。わたし自身が、そう思えたら、きっと、もっと楽になれるのかもしれない」
雨が止んだ午後、ガラス越しの空が少しだけ明るくなり、遠くの湖面が淡い光を反射していました。
ふと目を向ければ、ミューゼリアのつぼみが、わずかに膨らんでいるように見えました。
「この花、咲きそうだな」
「……咲かないかもしれない。でも、わたし、待つの」
「理由は?」
「自分がどんな花だったか、見てみたいから」
そのとき、レオナールがほんの少しだけ、口元を緩めました。笑った、というにはあまりにささやかで、けれど確かにそれは――微笑みでした。
恋とか、愛とか、そういった名前の感情ではないと思うのです。
けれど、自分を見てくれる人がいる。
咲かないかもしれない花を、咲くまで待つと言ってくれるような、そんな人が目の前にいることが――ほんの少しだけ、嬉しかったのです。
霧をまとうような空気のなか、雨粒が水面を打ち、ぽつり、ぽつりと静かな音を奏でては波紋を描いてゆく。風はほとんどなく、ただしっとりと濡れた世界が、まるで時間ごと静止しているかのように感じられました。
温室の中は、そんな雨音に包まれて、どこか心地よい静寂に満ちていました。湿気がガラスの内側をうっすら曇らせていて、空の色までも薄墨で塗りつぶしたよう。だけど、不思議と心は落ち着いていたのです。
わたしは、静かにミューゼリアの葉に霧吹きを当てていました。冷えた空気の中で、小さなつぼみがうつむくように身を縮めている様子が、まるでわたし自身のように思えてならなかったのです。
「……寒くない? あんまり揺れないわね、今日は」
そっと囁くように話しかけながら、ミューゼリアの葉に触れました。もちろん、返事が来るわけではないとわかっていながら、それでも言葉をかけずにはいられないのです。この静かな命と心を通わせたい――そんな衝動に似た想いが、胸の奥にあったのでしょう。
と、そのときでした。
「……っ、ここって誰の屋敷だ……?」
外の茂みのほうから、荒い息遣いと、低くしわがれた男の声が聞こえてきました。
反射的に窓のほうを見やると、雨に濡れきった黒髪の青年が、ぼろぼろの騎士服を身にまとい、肩で息をしながら佇んでいたのです。
その姿はまるで、どこか異世界から滑り込んできたかのような、場違いな現実感でした。だというのに、わたしは少しも怖くなかった。むしろ、傷ついたその姿に、胸の奥がちくりと痛んだのです。
(どなた……? 騎士服……それに、血……?)
思考よりも早く、身体が動いていました。気づけば、わたしは温室の扉を押し開けて、冷たい風に顔をしかめながら、彼に駆け寄っていたのです。
「……怪我をしてるの? 立っていられる? すぐ、タオルと包帯を持ってくるわ。中に入って」
青年は少し驚いたように目を見開いてから、黙ったままわたしを見つめ返してきました。その瞳は、まるで何かを測るように、じっと奥を探るように。けれど――やがて彼は、ぎこちなく頷きました。
「……悪い。助かる」
それからは、クラリスの手も借りて、わたしたちは彼の傷の手当てに取りかかりました。脇腹に擦り傷と打撲があり、左肩には浅い切り傷。どうやら落馬したうえ、何かに追われていたようでした。
「……名前は、レオナール・クローディアス。元・辺境騎士団の隊長だ」
薬を塗りながら、彼はぼそりと名乗りました。口調はぶっきらぼうで、どこか諦めを孕んでいるような響きがありました。
「元……ということは、今は?」
「今は、ただの流れ者だ。潔白を証明できず、騎士団を去ることになった。言ってみれば、厄介者だな」
(辺境騎士団……王都から遠く離れた場所で、外敵や反乱分子の制圧を担っている精鋭部隊。噂では、政治的な思惑も多く絡む部署だと聞いていたけれど)
彼の言葉には、言い訳や自己弁護の色はなかった。ただ淡々と、事実だけを語るような声音でした。でも、わたしにはその奥にある痛みや、押し殺した誇りの欠片のようなものが、なんとなく伝わってきたのです。
「俺には……祝福も称号も、何もない。でも、あなたの手を汚させたくないと思った」
その言葉に、わたしはつい微笑んでしまいました。
「……ふふっ、それって、優しさのつもりかしら?」
「……優しさって、なんだかよく分かんねぇ。でも、そう思ったから……そうしただけだ」
その不器用な言葉は、なぜだか心に響きました。
その日を境に、レオナールは屋敷に滞在することとなりました。
最初は遠慮がちだった彼も、次第に温室の修繕や庭の手入れを手伝ってくれるようになり、私たちは少しずつ言葉を交わすようになっていきました。
「……この花、誰が育ててたんだ?」
「わたしよ。元・王太子妃候補、いまはただの温室の住人」
そう返すと、レオナールは眉をひそめて、少しだけ首を傾げました。
「……元王妃? そんなもん、もう背負う必要ないだろ」
その言葉が、どこか真っ直ぐすぎて、胸に少しだけ刺さりました。
「……ふふっ、そうね。わたし自身が、そう思えたら、きっと、もっと楽になれるのかもしれない」
雨が止んだ午後、ガラス越しの空が少しだけ明るくなり、遠くの湖面が淡い光を反射していました。
ふと目を向ければ、ミューゼリアのつぼみが、わずかに膨らんでいるように見えました。
「この花、咲きそうだな」
「……咲かないかもしれない。でも、わたし、待つの」
「理由は?」
「自分がどんな花だったか、見てみたいから」
そのとき、レオナールがほんの少しだけ、口元を緩めました。笑った、というにはあまりにささやかで、けれど確かにそれは――微笑みでした。
恋とか、愛とか、そういった名前の感情ではないと思うのです。
けれど、自分を見てくれる人がいる。
咲かないかもしれない花を、咲くまで待つと言ってくれるような、そんな人が目の前にいることが――ほんの少しだけ、嬉しかったのです。
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