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第四章 秘密の真実
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あの日、湖畔には星が散るように輝いていました。
村に来てから初めて、手伝いをほぼ一人で終えられた日の夜。わたしの心は妙に高鳴っていました。理由は……よく分かりません。いえ、本当は分かっていたのです。エリアスさまと過ごしているうちに、胸が苦しくなる瞬間が増えてきたことを。
その夜、用事を終えて村人たちと別れた後、湖のほとりに足を運び、わたしは水面に映る星を見ていました。
(……綺麗です)
うっすら浮かぶ自分の顔。ほんのり笑っているその姿に、以前までの「無表情の人形」と呼ばれていた頃のわたしは、きっと戸惑ったでしょう。
「こんな時間に、何をしている」
低く響く声に、思わず振り返りました。――彼がいました。
「エリアスさま……」
常と変わらぬ無愛想な表情。けれどその後ろに夜空と星が重なって、無骨な姿さえ神秘的に見えました。
「星が……綺麗で」
「こんな辺境に来て、その感想が出るなら、お前は案外図太い」
皮肉。けれど、その声色はどこかやわらかくなっている気がしました。
「図太い、なんて……! これは前向き、というのです」
「言い訳の才能はあるようだな」
「むっ……!」
わたしが頬を膨らませると、彼は小さく笑ったように見えました。気のせいかもしれません。でも、確かに心臓が跳ね上がったのです。
湖畔の草地に並んで座ったとき、ふと手の甲が触れ合いました。慌てて引こうとしたわたしの手を、彼が静かに掴み止めました。
「……え?」
冷たいと思ったその掌は、意外にも温かくて。驚いたまま言葉を失うと、エリアスさまは夜空を仰ぎながら低く呟きました。
「お前には……知っておいてもいいことがある」
そう始まった話に、わたしは耳を傾けます。
「俺が“冷徹”だと噂されているのは事実だ。だが王都で血を分けた兄たちと権力を争う気はなかった。ただ辺境を守るため、この村に身を置いている。それだけだ」
「王……弟、さま……」
彼が本当に王家の方だと、この村に来てから何度か囁きを耳にしていました。しかし、本人の口から明かされると、胸の底がずしりと重みを持ちました。
「噂だけを見れば、王城から追われた冷酷な男。だが、俺が選んだのは戦わぬことだった。それを臆病者と笑う者もいる」
彼の横顔は星の光に浮かび上がり、痛みを押し隠すようでした。
(ああ……この人も孤独なのですね)
わたしは知らぬ間に、手を強く握り返していました。振り向いた氷の瞳と視線が重なります。
「……あなたは、冷たくなんかありません。少なくとも、わたしには」
そう伝えると、彼の目がわずかに見開かれました。
沈黙の後、彼の指がわたしの髪へ伸びました。そっと流れる金の髪を掬い上げ、乱れた毛先を優しく梳きながら――。
「……笑え」
「え……?」
「お前の笑顔は、不思議と……俺を救う」
頬に触れた指先。ひんやりしているのに、触れた場所がじんわり熱を帯びました。
(わたしが……救う? この方を……?)
胸が切なく震え、言葉はもう出てきませんでした。気づけば彼の腕に軽く抱き寄せられ、肩越しに彼の鼓動を感じています。力強いようで優しくて、わたしはただ、その腕の中に身を委ねてしまいました。
村に来てから初めて、手伝いをほぼ一人で終えられた日の夜。わたしの心は妙に高鳴っていました。理由は……よく分かりません。いえ、本当は分かっていたのです。エリアスさまと過ごしているうちに、胸が苦しくなる瞬間が増えてきたことを。
その夜、用事を終えて村人たちと別れた後、湖のほとりに足を運び、わたしは水面に映る星を見ていました。
(……綺麗です)
うっすら浮かぶ自分の顔。ほんのり笑っているその姿に、以前までの「無表情の人形」と呼ばれていた頃のわたしは、きっと戸惑ったでしょう。
「こんな時間に、何をしている」
低く響く声に、思わず振り返りました。――彼がいました。
「エリアスさま……」
常と変わらぬ無愛想な表情。けれどその後ろに夜空と星が重なって、無骨な姿さえ神秘的に見えました。
「星が……綺麗で」
「こんな辺境に来て、その感想が出るなら、お前は案外図太い」
皮肉。けれど、その声色はどこかやわらかくなっている気がしました。
「図太い、なんて……! これは前向き、というのです」
「言い訳の才能はあるようだな」
「むっ……!」
わたしが頬を膨らませると、彼は小さく笑ったように見えました。気のせいかもしれません。でも、確かに心臓が跳ね上がったのです。
湖畔の草地に並んで座ったとき、ふと手の甲が触れ合いました。慌てて引こうとしたわたしの手を、彼が静かに掴み止めました。
「……え?」
冷たいと思ったその掌は、意外にも温かくて。驚いたまま言葉を失うと、エリアスさまは夜空を仰ぎながら低く呟きました。
「お前には……知っておいてもいいことがある」
そう始まった話に、わたしは耳を傾けます。
「俺が“冷徹”だと噂されているのは事実だ。だが王都で血を分けた兄たちと権力を争う気はなかった。ただ辺境を守るため、この村に身を置いている。それだけだ」
「王……弟、さま……」
彼が本当に王家の方だと、この村に来てから何度か囁きを耳にしていました。しかし、本人の口から明かされると、胸の底がずしりと重みを持ちました。
「噂だけを見れば、王城から追われた冷酷な男。だが、俺が選んだのは戦わぬことだった。それを臆病者と笑う者もいる」
彼の横顔は星の光に浮かび上がり、痛みを押し隠すようでした。
(ああ……この人も孤独なのですね)
わたしは知らぬ間に、手を強く握り返していました。振り向いた氷の瞳と視線が重なります。
「……あなたは、冷たくなんかありません。少なくとも、わたしには」
そう伝えると、彼の目がわずかに見開かれました。
沈黙の後、彼の指がわたしの髪へ伸びました。そっと流れる金の髪を掬い上げ、乱れた毛先を優しく梳きながら――。
「……笑え」
「え……?」
「お前の笑顔は、不思議と……俺を救う」
頬に触れた指先。ひんやりしているのに、触れた場所がじんわり熱を帯びました。
(わたしが……救う? この方を……?)
胸が切なく震え、言葉はもう出てきませんでした。気づけば彼の腕に軽く抱き寄せられ、肩越しに彼の鼓動を感じています。力強いようで優しくて、わたしはただ、その腕の中に身を委ねてしまいました。
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