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54.靴箱。
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福井奏にお姫様抱っこで運ばれながら、相澤和真は羞恥のあまり顔を真っ赤にさせて憤慨していた。
「奏! 降ろせ! 何の嫌がらせだ!」
「思っていたより元気で良かった!」
「話しが通じない! 何でだ⁈」
「通じているよ。嫌がらせな訳ないだろ? 俺のせいで歩けないんだ。俺が和真の足になる」
あまりに真摯な声に、和真は口を噤んだ。
(ずっと責任を感じていたのか? 蛇に噛まれたのは、おれが勝手にしたことなのに……)
「……はあ~。何度も言うけど、奏のせいじゃ無い」
「……ありがとう。和真」
どこか泣き出しそうな笑顔を向けられ、これ以上悪態をつき続ける事は出来なくなってしまった。奏から視線を外し逡巡する。
「……歩く時に、肩を貸してもらえると助かる」
ボソリと告げれば、突然奏が立ち止まった。何ごとかと、視線を戻す。
「もちろん! 肩だけじゃなく、これからは遠慮なく俺を使いまくってくれよ!」
瞳をキラキラ輝かせて言い募る奏の勢いに、和真は若干引き気味だ。
「ははは。……じゃあ、早速、使いまくらせてもらうよ。だから、一度地面に下ろしてくれ」
「え~」
不承不承ながら奏はゆっくりと和真を下ろす。
「相澤、上履きは? どうするんだ?」
和真の鞄を抱き抱えながら、中田が声を掛けてきた。
「あ……、考えていなかった」
「オッケー。来賓用のスリッパを借りてくるよ」
中田は本当に良く気がつく。
「中田、ありがとう! 助かる。あ、鞄も!」
「気にすんなって!」
爽やかに駆けて行く後ろ姿を見送りながら、奏の肩を借りて自分の靴箱へ向かう。
「奏! おっ ……相澤⁈」
「相澤が来てんの⁈ おおっ! サッカー部の救世主! うちのエースを助けてくれてありがとな!」
一瞬で賑やかな声に囲まれる。サッカー部の松井と芝崎だ。
「相澤が来てくれて良かったな~。奏?」
松井がニヤニヤしながら奏を肘で軽くつついている。
「で? こんな所に二人で突っ立って、何やってんの?」
芝崎が奏の肩に手を置き、覗き込んで来た。
「上靴に和真の足が入らないんだ。今、中田に来賓用のスリッパを取りに行ってもらってる」
「スリッパ? おわっ! 相澤の足、めっちゃ腫れてるじゃんか! 何か手伝えることある?」
「今は奏と中田がいるから大丈夫。ありがとう」
「うん。そっか。じゃあ、また何かあったら言ってくれよ~」
そう言って手を振りながら賑やかな二人は教室へと去って行った。
「という訳だ。後は、俺達で和真を見る」
突然、奏が和真の背後に向かって口を開いた。そこにいたのは汐音だった。ずっと和真の後ろにいたようだ。あまりに静かだったので、気づかなかった。和真をじっと見つめているその顔にはまったく動きが無く、汐音が何を考えているのかさっぱり分からなかった。
「……和真さん、お昼に迎えに行きます」
「あ、ああ。ありがとう。汐音」
汐音は軽く頭を下げると、静かに背を向け去って行ってしまった。
(え? 何か、あまりにあっさりしてないか? 昼休みに来るって言ってるけど……)
いつもの汐音ならば、和真が自分の教室へ戻れと言ってもなかなか聞かないのに、あまりに素直すぎて少し怖くなった。
「相澤! お待たせ!」
汐音と入れ替わるようにすぐに中田がスリッパを掴んで戻って来た。和真は奏に肩を借りながら教室へ向う。朝からかなりのダメージを食らいすでにお疲れモードの和真に反し、奏は終始機嫌が良かった。いつもよりテンションが高い奏の様子に内心安堵する。
だが、その反面、汐音の事がずっと気になっていた。昼休みには会えると分かっていても、気になってしかたがなかった。
国語の授業中には、気づけばノートに汐音を表現する四字熟語を書き連ねていた。
眉目秀麗。
頭脳明晰。
文武両道。
質実剛健。
(これじゃあ、当然周りに人が集まって来るよな……)
ふと脳裏に今朝の無表情で去って行った汐音の背中が浮かび上がって来た。
(あいつに背を向けられてしまったら、おれは……)
汐音が自分の元から去ってしまったらと考えるだけで胸が苦しくなる。
(本当にそんなことになってしまったら自分はどうなってしまうのだろうか?)
きっと、以前の和真にはもう戻れないという事は確かだった。
「奏! 降ろせ! 何の嫌がらせだ!」
「思っていたより元気で良かった!」
「話しが通じない! 何でだ⁈」
「通じているよ。嫌がらせな訳ないだろ? 俺のせいで歩けないんだ。俺が和真の足になる」
あまりに真摯な声に、和真は口を噤んだ。
(ずっと責任を感じていたのか? 蛇に噛まれたのは、おれが勝手にしたことなのに……)
「……はあ~。何度も言うけど、奏のせいじゃ無い」
「……ありがとう。和真」
どこか泣き出しそうな笑顔を向けられ、これ以上悪態をつき続ける事は出来なくなってしまった。奏から視線を外し逡巡する。
「……歩く時に、肩を貸してもらえると助かる」
ボソリと告げれば、突然奏が立ち止まった。何ごとかと、視線を戻す。
「もちろん! 肩だけじゃなく、これからは遠慮なく俺を使いまくってくれよ!」
瞳をキラキラ輝かせて言い募る奏の勢いに、和真は若干引き気味だ。
「ははは。……じゃあ、早速、使いまくらせてもらうよ。だから、一度地面に下ろしてくれ」
「え~」
不承不承ながら奏はゆっくりと和真を下ろす。
「相澤、上履きは? どうするんだ?」
和真の鞄を抱き抱えながら、中田が声を掛けてきた。
「あ……、考えていなかった」
「オッケー。来賓用のスリッパを借りてくるよ」
中田は本当に良く気がつく。
「中田、ありがとう! 助かる。あ、鞄も!」
「気にすんなって!」
爽やかに駆けて行く後ろ姿を見送りながら、奏の肩を借りて自分の靴箱へ向かう。
「奏! おっ ……相澤⁈」
「相澤が来てんの⁈ おおっ! サッカー部の救世主! うちのエースを助けてくれてありがとな!」
一瞬で賑やかな声に囲まれる。サッカー部の松井と芝崎だ。
「相澤が来てくれて良かったな~。奏?」
松井がニヤニヤしながら奏を肘で軽くつついている。
「で? こんな所に二人で突っ立って、何やってんの?」
芝崎が奏の肩に手を置き、覗き込んで来た。
「上靴に和真の足が入らないんだ。今、中田に来賓用のスリッパを取りに行ってもらってる」
「スリッパ? おわっ! 相澤の足、めっちゃ腫れてるじゃんか! 何か手伝えることある?」
「今は奏と中田がいるから大丈夫。ありがとう」
「うん。そっか。じゃあ、また何かあったら言ってくれよ~」
そう言って手を振りながら賑やかな二人は教室へと去って行った。
「という訳だ。後は、俺達で和真を見る」
突然、奏が和真の背後に向かって口を開いた。そこにいたのは汐音だった。ずっと和真の後ろにいたようだ。あまりに静かだったので、気づかなかった。和真をじっと見つめているその顔にはまったく動きが無く、汐音が何を考えているのかさっぱり分からなかった。
「……和真さん、お昼に迎えに行きます」
「あ、ああ。ありがとう。汐音」
汐音は軽く頭を下げると、静かに背を向け去って行ってしまった。
(え? 何か、あまりにあっさりしてないか? 昼休みに来るって言ってるけど……)
いつもの汐音ならば、和真が自分の教室へ戻れと言ってもなかなか聞かないのに、あまりに素直すぎて少し怖くなった。
「相澤! お待たせ!」
汐音と入れ替わるようにすぐに中田がスリッパを掴んで戻って来た。和真は奏に肩を借りながら教室へ向う。朝からかなりのダメージを食らいすでにお疲れモードの和真に反し、奏は終始機嫌が良かった。いつもよりテンションが高い奏の様子に内心安堵する。
だが、その反面、汐音の事がずっと気になっていた。昼休みには会えると分かっていても、気になってしかたがなかった。
国語の授業中には、気づけばノートに汐音を表現する四字熟語を書き連ねていた。
眉目秀麗。
頭脳明晰。
文武両道。
質実剛健。
(これじゃあ、当然周りに人が集まって来るよな……)
ふと脳裏に今朝の無表情で去って行った汐音の背中が浮かび上がって来た。
(あいつに背を向けられてしまったら、おれは……)
汐音が自分の元から去ってしまったらと考えるだけで胸が苦しくなる。
(本当にそんなことになってしまったら自分はどうなってしまうのだろうか?)
きっと、以前の和真にはもう戻れないという事は確かだった。
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