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4.王女と騎士。
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近隣諸国が羨むほど華やかな王宮文化が発展していたアルメリア国。その豪奢な宮殿前の広場では、皮肉にもその国の民によって現国王一家の処刑が行われていた。
今まで民衆から取り立てた税を湯水のごとく使い、贅の限りをつくしてきた国王と妃、そして、三人の王女達だ。
最後に目隠しをした姿で現れたのは、この国の第三王女フィーリア・クラウゼだった。彼女が断頭台に立つと、民衆達の熱狂は最高潮へと達した。
ちょうどその時、王都の大門を疾風のように潜り抜け、湧きかえる群衆の背後へ騎馬が一騎駆け込んで来た。嘶きながら棹立ちになる馬の背から飛び降りたのは若い騎士だった。彼の目が断頭台に立つうら若い王女の姿を捉えた瞬間、悲鳴のような声を上げた。
「フィーリア様!」
群衆達がどよめく中、届くはずのない男の声に反応するように俯いていた王女が顔を上げた。
「……お願いがあります」
王女は側にいた処刑人に声を掛ける。
「何だ?」
「この目隠しを外してください」
「それは、できない」
「ほんの少しの間で良いのです。どうかお願いします!」
王女とはいえ、まだあどけなさが残る少女の最後になるであろう懇願に、処刑人は躊躇いを見せた。
そして、哀れに思ったのか、王女の願いを聞き入れる。
「少しの間だけだぞ」
「ありがとうございます。感謝いたします」
フィーリアの目元を大きく覆っていた白い布が外された。澄んだ青い空のような瞳が現れる。囚人用の粗末な服を身に着け、化粧を施していないにもかかわらず、凛とした花のような美しさと可憐さが相まったフィーリアの姿をまじかで見る事となった前方にいた民衆から波が引くように静まり返っていく。
やがて人々の口から『そんな』や『まさか』など困惑する声が漣のように広がって行く。彼女の顔に見覚えのあるもの達が動揺しはじめたのだ。
それもそのはず、実は、第三王女であったフィーリアは身分を伏せ、化粧を施さず、平民たちと同じ服装で、イリアと名乗り、町や村へ頻繁に通い、交流を図っていたからだ。
もちろん、それは何とか民の生活を良くしようと奔走していたからだった。彼女に出来る事は限られていた。人と人を結び付け、必要な知識や情報を循環させる。
そのせいもあって、王都だけでなく、近隣の民達はほとんどの者がイリアとしてのフィーリアの顔を知っていたのだ。
しかし、王室を含む貴族社会を変えることが出来なかった為に、民衆の不満は膨れ上がり、とうとう民の怒りは王宮の襲撃という暴動へと発展してしまったのだった。国王一家は捉えられ、斬首の刑に処されることとなった。
もちろんフィーリアも例外ではなかった。
澄んだ青い瞳が広場に集まる民衆へ向けられる。彼女のまっすぐな眼差しは群衆を掻き分けながら必死で近づいてくるあの若い騎士へと注がれていた。彼もまた彼女の視線に気づき、しばし見つめ合う。
殺伐とした断頭台にいながら、フィーリアは花がほころぶような笑みを浮かべた。
騎士に向け、彼女の唇がゆっくりと動く。
『愛しています。……ルーク』
男の目が大きく見開らかれていく。
「何をしている! 早くしろ!」
この暴動の首謀者の一人が騎士の姿に気付き、慌てて処刑人へ声を荒げた。再びフィーリアの美しい目が白い布に覆われる。
「やめろ! やめてくれ!! フィーリア!!!」
再び騎士が血を吐くような声で叫んだ。
だが、次の瞬間、騎士の願いも空しく、彼の目前で第三王女の命は断頭台の露と消えたのだった。
今まで民衆から取り立てた税を湯水のごとく使い、贅の限りをつくしてきた国王と妃、そして、三人の王女達だ。
最後に目隠しをした姿で現れたのは、この国の第三王女フィーリア・クラウゼだった。彼女が断頭台に立つと、民衆達の熱狂は最高潮へと達した。
ちょうどその時、王都の大門を疾風のように潜り抜け、湧きかえる群衆の背後へ騎馬が一騎駆け込んで来た。嘶きながら棹立ちになる馬の背から飛び降りたのは若い騎士だった。彼の目が断頭台に立つうら若い王女の姿を捉えた瞬間、悲鳴のような声を上げた。
「フィーリア様!」
群衆達がどよめく中、届くはずのない男の声に反応するように俯いていた王女が顔を上げた。
「……お願いがあります」
王女は側にいた処刑人に声を掛ける。
「何だ?」
「この目隠しを外してください」
「それは、できない」
「ほんの少しの間で良いのです。どうかお願いします!」
王女とはいえ、まだあどけなさが残る少女の最後になるであろう懇願に、処刑人は躊躇いを見せた。
そして、哀れに思ったのか、王女の願いを聞き入れる。
「少しの間だけだぞ」
「ありがとうございます。感謝いたします」
フィーリアの目元を大きく覆っていた白い布が外された。澄んだ青い空のような瞳が現れる。囚人用の粗末な服を身に着け、化粧を施していないにもかかわらず、凛とした花のような美しさと可憐さが相まったフィーリアの姿をまじかで見る事となった前方にいた民衆から波が引くように静まり返っていく。
やがて人々の口から『そんな』や『まさか』など困惑する声が漣のように広がって行く。彼女の顔に見覚えのあるもの達が動揺しはじめたのだ。
それもそのはず、実は、第三王女であったフィーリアは身分を伏せ、化粧を施さず、平民たちと同じ服装で、イリアと名乗り、町や村へ頻繁に通い、交流を図っていたからだ。
もちろん、それは何とか民の生活を良くしようと奔走していたからだった。彼女に出来る事は限られていた。人と人を結び付け、必要な知識や情報を循環させる。
そのせいもあって、王都だけでなく、近隣の民達はほとんどの者がイリアとしてのフィーリアの顔を知っていたのだ。
しかし、王室を含む貴族社会を変えることが出来なかった為に、民衆の不満は膨れ上がり、とうとう民の怒りは王宮の襲撃という暴動へと発展してしまったのだった。国王一家は捉えられ、斬首の刑に処されることとなった。
もちろんフィーリアも例外ではなかった。
澄んだ青い瞳が広場に集まる民衆へ向けられる。彼女のまっすぐな眼差しは群衆を掻き分けながら必死で近づいてくるあの若い騎士へと注がれていた。彼もまた彼女の視線に気づき、しばし見つめ合う。
殺伐とした断頭台にいながら、フィーリアは花がほころぶような笑みを浮かべた。
騎士に向け、彼女の唇がゆっくりと動く。
『愛しています。……ルーク』
男の目が大きく見開らかれていく。
「何をしている! 早くしろ!」
この暴動の首謀者の一人が騎士の姿に気付き、慌てて処刑人へ声を荒げた。再びフィーリアの美しい目が白い布に覆われる。
「やめろ! やめてくれ!! フィーリア!!!」
再び騎士が血を吐くような声で叫んだ。
だが、次の瞬間、騎士の願いも空しく、彼の目前で第三王女の命は断頭台の露と消えたのだった。
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