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30.馬鹿野郎。
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相澤和真は林間学校に来てからギクシャクしている福井奏と二人になれる瞬間を探していた。
だが、なかなか二人で話をする機会が見出せないでいた。班のメンバーでいろいろ活動しなければならない上に奏は班長で、側から見ていても忙しそうで、声をかける事をどうしても躊躇してしまう。
もしかしたら、心のどこかでは、奏と今までのような関係でいられなくなる事を恐れているのかもしれない。
(だからと言って、もし奏が誤解していたり、奏を傷つけていたとしたら、放置していい理由にはならない……)
和真は意を決して話ができる時間を尋ねる事にした。
「奏!」
先生と話し終えた瞬間を狙い、奏の名前を呼ぶ。
その瞬間、奏が弾かれたように振り返った。駆け寄る和真の姿に奏が目を見張る。
目の前に立てば、奏はどこか惚けた顔で和真を見下ろしていた。奏と二人きりで向き合うのはとても久しぶりな気がした。
「奏」
再び名前を呼ぶと、まるで夢から覚めたようにはっとしたのが分かった。
「奏と二人で話がしたい」
「え?!」
直球で切り出せば、奏は明らかに動揺し始めた。
(やはり、おれは何か奏にやらかしていたんだ)
疑問が核心に変わり、和真は自分を鼓舞するように拳を握り締めた。
「忙しいのは分かってる! でも少しでいいんだ。どこか時間取れるところないか? もしかしておれは奏に……」
和真は奏の左腕を掴んだ。無意識での行動だった。
バッ
間髪入れずに奏が和真の手を振り払った。
「え……」
「あ! ち、違うんだ! その……ごめん!」
頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くす和真に慌てて奏が何か言おうとして言い淀み、謝罪を口にするとそのまま黙り込んでしまった。和真は居た堪れなくなる。振り払われた手が置き場を無くして空に浮いたままだ。胸が締め付けられるようだ。
(おれは、奏に嫌われている!)
「……おれの方こそ、ごめん。忙しいのに引き留めてしまったな」
それだけ言うと、和真は踵を返した。背後から奏の焦った声が聞こえた気がしたが振り切るようにそのまま走り続けた。息が苦しくなって立ち止まり、その場に蹲る。
「ははは、……また逃げてしまった。今まで人とあまり接してこなかったせいだな。こんな時どうすればいいのか分からないや……」
情けない事に、唇からは弱音しか出て来ない。無性に汐音に会いたくなった。
一人なんて慣れているはずだった。汐音に奏、大切な人が増える度に弱くなっている気がした。
「汐音、何で居ないんだよ。馬鹿野郎」
この場に居ない男に八つ当たりをする。
今頃、汐音はくしゃみを連発していたり、寒気を感じているかもしれない。その姿を思い浮かべると、なぜか少し気持ちが落ち着く気がした。遠くにいても、通じ合っているように思えたからだ。
だが、なかなか二人で話をする機会が見出せないでいた。班のメンバーでいろいろ活動しなければならない上に奏は班長で、側から見ていても忙しそうで、声をかける事をどうしても躊躇してしまう。
もしかしたら、心のどこかでは、奏と今までのような関係でいられなくなる事を恐れているのかもしれない。
(だからと言って、もし奏が誤解していたり、奏を傷つけていたとしたら、放置していい理由にはならない……)
和真は意を決して話ができる時間を尋ねる事にした。
「奏!」
先生と話し終えた瞬間を狙い、奏の名前を呼ぶ。
その瞬間、奏が弾かれたように振り返った。駆け寄る和真の姿に奏が目を見張る。
目の前に立てば、奏はどこか惚けた顔で和真を見下ろしていた。奏と二人きりで向き合うのはとても久しぶりな気がした。
「奏」
再び名前を呼ぶと、まるで夢から覚めたようにはっとしたのが分かった。
「奏と二人で話がしたい」
「え?!」
直球で切り出せば、奏は明らかに動揺し始めた。
(やはり、おれは何か奏にやらかしていたんだ)
疑問が核心に変わり、和真は自分を鼓舞するように拳を握り締めた。
「忙しいのは分かってる! でも少しでいいんだ。どこか時間取れるところないか? もしかしておれは奏に……」
和真は奏の左腕を掴んだ。無意識での行動だった。
バッ
間髪入れずに奏が和真の手を振り払った。
「え……」
「あ! ち、違うんだ! その……ごめん!」
頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くす和真に慌てて奏が何か言おうとして言い淀み、謝罪を口にするとそのまま黙り込んでしまった。和真は居た堪れなくなる。振り払われた手が置き場を無くして空に浮いたままだ。胸が締め付けられるようだ。
(おれは、奏に嫌われている!)
「……おれの方こそ、ごめん。忙しいのに引き留めてしまったな」
それだけ言うと、和真は踵を返した。背後から奏の焦った声が聞こえた気がしたが振り切るようにそのまま走り続けた。息が苦しくなって立ち止まり、その場に蹲る。
「ははは、……また逃げてしまった。今まで人とあまり接してこなかったせいだな。こんな時どうすればいいのか分からないや……」
情けない事に、唇からは弱音しか出て来ない。無性に汐音に会いたくなった。
一人なんて慣れているはずだった。汐音に奏、大切な人が増える度に弱くなっている気がした。
「汐音、何で居ないんだよ。馬鹿野郎」
この場に居ない男に八つ当たりをする。
今頃、汐音はくしゃみを連発していたり、寒気を感じているかもしれない。その姿を思い浮かべると、なぜか少し気持ちが落ち着く気がした。遠くにいても、通じ合っているように思えたからだ。
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