15 / 36
魔王軍襲来
しおりを挟むそれからひとしきりパーティを楽しんで、夜を過ごした俺は、自宅に戻り、一眠りつこうとした。
その時ドアからノックする音がした。
やれやれ、また訪問者が…誰だよ、こんな夜更けに? まさか…魔王軍か?
俺は警戒しつつドアを開いた。
「なんだよ、ティミか…脅すなよ。どうし…た。」
ティミの顔を見ると、腫れていた。
「悪い、実は親にさ、勘当されちまって、行くとこないんだ。頼れるのお前しかいなくて。今日だけでも泊めてくれないか?」
ティミが切実な、今にも泣き崩れそうな表情で言う。
「ああ、実は俺と、母親明日からこの村から出て行くんだ。今日だけなら大丈夫。ね? 母さん。」
俺は眠そうにしている母に、許可を求めた。
「あらあら、子供に暴力振るう様な所には行かせられないわ。泊まって行きなさい。」
ありがとう、さすが話の分かる優しい母さんだ。
「すみません、マギのお母さん。助かります。」
ティミが頭を下げて、胸を撫で下ろした。
「その前に…回復してやろう。」
ふふ、この台詞言いたかったんだよね。俺はティミの顔に小指を指した。癒しの薬指癒翼。
あっという間に、ティミの腫れた顔が、イケメンの顔になった。
「すまない…なんて言えば良いのか…うぅ…マギにノロマとか言っておいて、自分がビビって逃げ出した。情け無いよな。」
ティミが目を擦りながら、反省する様に謝ってきた。
「いや、ティミはそもそも途中で帰ろうって、提案したんだ。言うこと聞かなかった、スビアにも責任あるよ。もう終わった事さ。いつまでもクヨクヨしてちゃ駄目だ。」
「あらあら、本当にうちの息子は口が達者というか、私の夫みたいね、ウフフ。」
「あっ武器も持って来てるんだけど、入れて良い? 僕弓包あると落ち着くから。」
ティミが武器を部屋に入れる許可を求めた。
あっ…この展開ってまさか俺を殺しにきた刺客? な訳ないか…すまん疑った、武器を持ってくるなんて紛らわしい。
「どうぞ、とりあえず今日は遅いし、布団用意するわね。」
母さんがティミに言って、ティミも感謝の言葉を返した。
それから深夜になり、2人ともご就寝だ。
俺はと言うと、寝れなかった。
やっぱり明日からこの村を出ると考えると、不安で寝付けなかった。
…外が何やら騒がしい。俺はドアを開き、外の様子を伺った。レニスが深刻な表情をして遠くを見ていた。
「レニス何かあったの?」
「魔王軍が、この村に攻めて来たんです。」
…早い。もう来たのか。しかもこんな深夜を狙って。狡猾だな、魔族は。
「おーい、女子供は避難させろ! 戦える男どもは、残って魔王軍と戦うぞ!」
レニスの師匠が大きな声で指示を出していた。
「魔王軍大体ですけど、総勢100隊はいます。結構面倒ですね。」
俺は魔王軍を見つめた後、右手の人差し指を見た。
いけるか? この前のゴブリンみたいに…やってみよう。
「俺に任せてくれないか? 魔王軍を倒してみる。」
レニスにそう伝えた。200メートルは離れているか。なら100メートルまできたら、ぶっ放そう。
「ええっ? マギ1人で…ですか? 任せますけど、危なくなったら助けますからね?」
レニスが驚きながらも、頷いた。
…しばらく待ち、魔王軍の魔物と言っていいのか、空を飛ぶ石で出来たガーゴイルと、一つ目の巨人大きな棍棒を持った、サイクロプスやらがいる。100メートルまできた。俺は狙いを定め、閃光神指雷鳴を使った。
頭部を狙い連写させまくった。わずか1分ほどだろうか? 俺は、全員をやっつけた。
「し…しゅごい…魔王軍100隊が、あっという間に全滅させちゃいましたね…さすがマギです!
やったー。」
レニスが目をパチクリさせた後、抱きついてきた。
いや…俺ってこんなに強かったんだ。頭をかきながら、終わったとレニスに言おうとした。
「ふん、所詮バリアも貼れねぇ雑魚が、役にも立たたんな。」
「…想定内です。ただ人質の1人も取れないのは、情けないですね。」
「誰だ!」 俺は叫んだ。
急にワープして来たのだろうか?
3人の男達が現れた。
「誰か…ですか? 私はメシア13教徒の1人ラピディフィカ・ティオです、お見知り置きを。」
丁寧に男が挨拶して来た。片方の左半身が石で出来ている。
「ふん、ラピなんとか知らんが、俺が相手になってやる! それとも3人まとめて相手してやろうか?」
レニスの師匠がメシア13教徒に、戦いを挑む様に言う。
「ふっ…良いでしょう、相手になりましょう。後ろの2人は、戦力温存させないとなので、あなた如き、私1人で充分です。」
こいつらが魔族の…確かに名前が長い…ラピディとでも呼ぶか。レニスの師匠の戦いぶりも見ておくか。
はぁー! 大きな斧を持ったレニスの師匠が、ブンブンと斧を振り回す。
ラピディが左手から、武器を作った。石の剣だ。
カチッカチッと音が深夜の村に響く。
お互いの互角だ。レニスの師匠が斧で宙を斬る様にラピディに攻撃を仕掛ける。
ラピディもそれを上手く捌いていく。
5分程膠着状態が続いた。
「ふっ…やりますね、こんなに手こずったのは、久しぶりです。ですが…これならどうです。」
剣をラピディが左手から右手に持ち替え、左手から何やら白い煙を出し始め、それをレニスの師匠に噴射した。
「ちぃ、目眩しか! だが俺は…なんだこれは!」
レニスの師匠が…みるみるうちに、石の様になっていく。
…完全に石化した。俺は、それに恐怖心を抱いた。今までの相手とは、レベルが違う…とんでもない魔法を使ってくるぞ。
「師匠ー! こいつっ! よくも師匠を…私が相手だ!」
レニスが、ラピディに突撃していった。
ジャンプして、剣で攻めていく。
「子娘が! 子供もはママのミルクでも飲んでろ!」
「そんな歳じゃないやい!」
レニスの猛撃、凄まじいスピードで剣で斬りかかる。ラピディは、それを捌ききれずに、徐々に体が切り裂かれていく。
「くっ…なんだこいつは…強い…さっきのやつより桁違いだ。コンクルカ! 手を貸せ! 俺1人ではやられる。」
「情けない! どいつもこいつも、ガキ相手に何やってやがる。」
コンクルカと言われた男が、ラピディに加勢をした。
さすがにレニス1人では危険だ。俺もレニスに加勢をしようと近寄った。
それにしても、他のエルフの大人達は何してるんだ? みんな寝てるのか?
そう俺は心で愚痴った。
「おっと~お前の相手はこの俺アリエナが相手してやるよ。」
アリエナが立ち塞がり、俺と相対した。
0
あなたにおすすめの小説
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。
凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。
だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった……
同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!?
一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる