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4話ー➄ 幸福の音色と似顔絵詐欺
しおりを挟む観光を続けていると、興味深い光景が目に入った。
子供たちが広場で遊んでいる中、一人の壮年らしき男が独特な音のする楽器を奏でている。
「すごいな。あの楽器......僕でも知らないぞ。」
「そうなの?珍しいわね?全く心当たりないなんて。」
「話しかけてみよう。」
「ちょっ!まっ!?」
近づくと、老人はにこやかに僕たちを迎え入れてくれた。風貌はローブを被っており顔はあまり見えないが、周囲の子供達の空気に溶け込んでいる。その雰囲気は穏やかかつ理知的で、その微笑みからは何かを慈しむような慈愛が感じられた。
「その楽器について、よかったら教えてもらえませんか?」
「なるほどそうか。これは『幸福の始まり』と呼ばれる楽器だ。風を受けて音を奏でる。音階は44ある穴を開閉し自身の手で織りなす。」
「すごいな……風を受けて音を出すなんて......触らせてもらえませんか?」
「かまわぬよ。」
僕はそっと楽器に触れ、『幸福の初まり』を奏でてみた。風が音を運び、美しく、物寂しい旋律が広場に広がる。
その音色に、心が癒される思いだった。
「この楽器、どこで手に入れたんですか?」
「かつて私が高い障害に当たった時、その現状を何とか変えたいと思って作ったものだ。」
するとルシアは暖かい顔で微笑み返した。
「素敵ですね……」
「私はこの楽器を通じて、人々が幸福を享受できるよう手伝いたいものだ。」
「きっと叶いますよ。」
「そうだな。そうなる事を心から望んでいる。」
壮年の男性と別れた後、僕たちは夕暮れの空を見上げた。
空はオレンジ色に染まり、樹上の枝々には少しづつ光が灯し始めている。
それは正にこの世界の楽園のようで、不均一な明るさで輝くその光景は絵画のような美しさを見せていた。
「実はあれ。明かりの半分はこの惑星にしかいない暗光蛍なんだよ?」
「そうなの!?全部点滅するランタンだと思ってたわ。」
「今度は雪が降る時期にまた見に来よう!」
「いいわね。絶対よ?」
よっぽどまた来たいようでその後何度も念押しをされた。
そうして夕暮れ時、街を散策していると、広場の一角に絵描きがいるのを見つけた。
小さなテントの中で、彼は通りすがりの観光客の似顔絵を描いているようだった。
「ルーク、あれ見て。似顔絵師さんがいるわ。」
「面白そうだね。描いてもらおうか?」
「うん、記念にいいかもしれないわ。」
僕たちは似顔絵師のところに足を運び、依頼することにした。
似顔絵師は凛とした立ち振る舞いの女性で、白っぽいローブを被り芸術的な雰囲気を纏っていた。
ローブからはみ出す長髪は薄いアイボリー色でとても美しい。
金髪でも、白でもない色は何とも言えない魅力を持っている。
「こんにちは。二人の似顔絵を描いてもらえますか?」
「どうぞ。座っちゃってー。」
僕たちは並んで椅子に座り、似顔絵師がスケッチブックを開くのを待った。
彼女はじっと僕たちを見つめ、ペンを走らせ始めた。
「どんな絵になるんだろう?」
「楽しみね。」
10分ほど経った後、似顔絵師は描き終えたようだ。彼は絵をひっくり返して僕たちに見せた。
「どうぞ!返品は......できればしないで欲しいかな?」
しかし、その絵を見た感想は驚愕の一言に尽きる。
絵には僕たちの特徴が誇張され、奇妙な風貌が描かれていた。
それはB級コメディ映画のキャラクター以下の風貌で、似顔絵のセンスの悪さが際立っていた。
「これは……そのユニークだね。」
「…………」
「うん。描いた私もそう思う......元々別の目的で来たし......」
金取った後に言うな......
どうやら芸術的な雰囲気は纏っていただけのようだ......
観光客狙いの小遣い稼ぎとしか思えない。下手をすればルシアの方が上手いかもしれない。
しかし何故か似顔絵師は満足そうに笑い、僕たちもつられて笑った。
......完全に苦笑である......するとルシアは通信神術で話しかけてきた。
「これはこれで記念になるわね。」
「うん、まぁ確かに。」
いやただの詐欺だろ......
これ以上いてもあまり意味がないので、一先ずここを後にすることにした。
「似顔絵ありがとうございます。」
すると女性はこちらに笑顔を向けてといかけて来た。
「寝室にでも飾っといてください。運が上がって助かるかも!」
「は、はは......どうも......」
毎日変な悪夢に魘されそうだな......と思いつつ、僕たちは似顔絵を受け取り、広場を後にした。
奇妙な絵を収納ポーチにしまい、更に観光を続けた。
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