おトイレにまつわる短編集

東城

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ぴえん

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ショッピングモールで急にお腹が痛くなり「ちょっとヤバい」と妻に言い残して俺はトイレに向かった。

どうにか間に合い、ホッとしたのもつかの間、男子トイレと勝手が違うことに気がついた。
緊急事態で焦るあまり、女子トイレに入ってしまったのだ。
「でさー、彼氏がーさー」
女の声が聞こえる。

落ち着くんだ、人がいなくなるまで待って、こっそり出ていけばいい。
あれこれ十分くらい便器に座って待っていただろうか、まだ女子高生たちは化粧をしながらおしゃべりを続けている。
「まじうけるぅ」
「パネェ」
俺が個室から出てきたら、ウケるどころじゃすまないだろう。

「あの個室やばくね? ずっと閉まったままじゃん」
ドンドンドン。
「大丈夫ですかぁ?」

うわっ、ノックしてきた。
俺は裏返った女声で答えた。
「あっ、大丈夫です。ちょっとお腹の具合が悪くて……」
「そっすかー」
すぐに女子高生たちの気配は消えた。

個室の扉を開けた。
子連れの若い女がトイレに入ってきて、慌ててまた個室に閉じこもった。
ひっきりなしに人が入ってくる、逃げるチャンスがない。

スマホを取り出すと妻に電話をかけた。

「もしもし俺だけど。女子トイレに閉じ込められて出られないんだけど」
「もう、何やってんのよ。すぐに行くから」

五分ほどしてドアをノックする音が聞こえた。
「来たわよ」妻の声だ。
そっとドアを開けると紙袋が押し込まれてきた。長髪のウィッグが入っていた。

ウイッグを被り、個室を出る。
トイレ待ちで並んでいる女たちに男だと見破られないように下を向いて早足で出る。

派手系の女子高生軍団が女子トイレの前でスマホをいじっていた。
俺を見るなり、パシャ。

写メ撮られてしまった。
「さっきの個室の人、オカマだったんだー。マジウケる。キャハハハハ」
そう言い残して奴らは去っていった。

俺は泣いた。
「ぴえん」



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