焔の軌跡

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在学編

第十一話 夢

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 その後、焔は糸が切れたかのように前方に崩れ落ちた。倒れこむ焔をそっと龍二が支える。顔を見ずとも焔は龍二だとわかった。汗でびしょ濡れの体、筋肉の痙攣、自然と龍二の腕には力が入る。

 弱々しい声で、焔は龍二に問いかける。

「レッド……アイは?」

「気絶してるよ」

 黙々と答える。

「終わったんだな……」

「ああ」

「俺……頑張ったよな」

「ああ……」

「俺……綾香を、皆を……守れたかな……」

「ああ……!! 俺も綾香も皆も無事だ!! 全部お前のおかげだ!! お前が!!……焔が、ここにいる皆を守ったんだ……!!」

 次第に龍二の口調が力強くなる。その言葉を聞いた途端、焔の目から涙がこぼれる。

「ありがとう……龍二」

「それはこっちのセリフだ……ありがとう、焔!!」

 次第に薄れゆく意識の中、窓が割れたことを思い出し、自然と隣の棟に顔を向ける。

 ぼんやりとだが、屋上に2人いるのが見えた。一人はこちらに向けて手を振っていた。

 ここで、焔は力尽き目を閉じた。


 ―――「勝負あったみたいだね」

「『勝負あったみたいだね』じゃねーよ!! お前が石投げて外した時は焦りまくったぜ。お前でもミスすることあるんだな」

「あー、あれ? あれはミスじゃないよ。わざと外したんだ」

「は?……お前まさか、あいつのことを試したのか?」

 シンはニヤッと笑う。

「試した……というよりかは、確かめたの方がニュアンス的に近いかな。彼が俺の思い描く人物なら必ずレッドアイの隙を見逃さないと確信していたからね。たとえ一瞬だったとしてもね」

「はー、そうかよ。で、結果的にあいつはお前の思った通りの奴だったってわけか」

「当たらずも遠からじって感じだね。俺、実はもう一個石持ってたんだよね」

「ということは、お前あいつがレッドアイを倒すなんて思ってなかったってことか?」

「重い一撃を入れてくれるとは思ってたんだけどね。まさかアッパーをお見舞いするとはね。正直びっくりしたよ」

 シンは苦笑いを浮かべる。レオはため息をつく。

「で、やっぱあいつを誘うのか?」

「ああ、果然興味が湧いたね。判断力の速さ。格上に対しても物おじしない度胸。仲間を絶対に守るという姿勢。そして天性の才能。育てれば、必ず俺たちの力になってくれるよ」

「だが、まだまだ課題は山積みだ。ちゃんと使い物になるようにしろよ」

 レオも焔を誘うことに反論はしなかった。むしろ楽しみにしている、そんな顔をしていた。

「もちろんだ……よし、そろそろ帰ろうか」

「そうだな」

 そう言うと、シンは耳に付けていた小型の通信機を触った。

AIアイ、任務は終わったよ。今から帰還したい。転送を頼む」

「わかりました。座標確認。転送準備に入ります。10秒後転送開始します」

「了解。あと、一つ仕事を頼みたいんだけど、いいかな?」

「大丈夫ですけど、その仕事っていったい何ですか?」

「ある人物のことを調べてほしいんだ。レッドアイが現れた高校の2年1組のおそらく焔という名前だと思うんだけど……頼めるかな?」

「お安い御用です。では、転送準備が整いました。転送開始します」

 すると、見る見るうちに2人の体は消えていった。その際、最後までシンは焔のことを見ていた。

 その後、クラスの複数人の生徒が職員室に行き、何が起こったかを先生に伝えた。すぐに警察に連絡。レッドアイは逮捕された。意識が戻らなかったので、念のため警察病院に連れていかれた。焔も意識が戻らなかったので、近くの病院に搬送された。意識を失っている中、焔はある夢を見た。それは小学4年生の頃、将来の夢について話しているときの記憶だった。


 いつものように俺、龍二、綾香、冬馬の四人で遊んでいた。遊び疲れて公園の休憩所で休んでいるとき、話の流れで将来の夢の話になった。龍二はお金持ち、冬馬は医者、綾香は司書だった。

 龍二の家は早いうちに父親を亡くし、母親一人に育てられた。そのため、普通の家庭と比べると、少し貧乏だった。だから、龍二はお金には人より貪欲で、毎月500円のお小遣いをもらっていたけど、絶対に駄菓子とかジュースは買わず、いつも貯金箱に入れていた。

 高校に入るや否やすぐにバイトを始めた。休みの日はほとんどバイトに費やしている。そのお金で自分の携帯代を払っている。あとは全て貯金している。

 この前やっと貯金額が100万円を超えたと俺に自慢してきた。その笑顔は小学生の頃、貯金箱をじゃらじゃら鳴らしながら俺に向かって1万円溜まったと自慢してきた時の笑顔となんら変わらなかった。

 あいつは多分金持ちになっても自分のためにあんまり金は使わないだろう。

 冬馬は父親が医者をやっていた。その姿を小さい頃から見て、憧れたそうだ。だからか、小学生ながらにして医学的な知識をいろいろ持っていた。

 怪我をしたときは毎回うるさかったな。いつも絆創膏や消毒液、包帯なんかを持ち歩いていて。昔はちょっと鬱陶しいと思っていたが、今考えてみると、結構助けられたこともあったし、あいつのおかげで傷跡もほとんど残らなかった。

 おそらく今も誰かの世話を焼いてるんじゃないかな。

 綾香は昔から読書が好きだった。この性格は父親が影響している。綾香のお父さんは読書が趣味だった。前に書斎に行ったことがあるが、綾香のお父さんの身長より高い本棚にびっしりと本が詰まっているのが印象に残っている。

 この影響を綾香はフルに受けた。恋愛・FS・時代ものと色々な小説を読んでいたが、圧倒的に綾香はミステリーが好きだった。いつもミステリーを読むときは熱の入り方が全く違った。

 もし少しでも小説の話を聞こうとしようものなら、普段からは信じられないような饒舌になる。長い時では1時間以上も一方的にしゃべっていたこともあった。ただ、こういう話をするときの綾香は本当に楽しそうな顔をするから本当に困る。

 今では人気者になってしまったから、休み時間に読書をしているところを見ないけど、ずっと図書委員をしているから、まだ読書は好きなんだろう。たまに本屋にいるのを見るし。

 当時の俺にも夢があった。あったけど、俺はそのとき夢は特にないと答えた。理由は単純明快。めちゃくちゃ恥ずかしかったからだ。

 当時の俺の夢というのがヒーローだ。俺は小っちゃい頃からよくヒーローものを見ていた。特に好きだったのは戦隊ものだった。その中で俺はレッドにとても憧れた。中心的な存在で、敵に負けそうになるけど、諦めることなく最後には勝ってしまう。そんな姿が俺の目にはとてもカッコよく映った。

 小学4年生にもなってこんな夢を持っているなんて、恥ずかしくて俺は言えなかった。こんな夢を持っていたなんて正直全く覚えていなかった。まあ、おそらく中学1年生の途中ぐらいでこの夢は諦めたと思うけど。

 その日の帰り道、俺は龍二と一緒に畦道を歩いていた。その日はきれいな真っ赤な夕日で、夕日の光が水田に反射してとても綺麗だった。そこで俺は何を思ったのか、立ち止まり龍二に俺の夢を話した。振り返る龍二の顔は影がかかって、どんな表情をしているのかわからなかった。

 ここで俺の夢は終わった。

 目を開けると、そこには見慣れない天井が広がっていた。

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