焔の軌跡

文字の大きさ
37 / 116
在学編

第三十六話 最終種目

しおりを挟む
 テントに帰るとクラスの皆からすごい歓声が焔たちに注がれた。

「焔お前やばいな!!」
「流石はレッドアイを倒した男だぜ!!」
「次の種目も頼むぜ!!」

 正直、今まで体育祭で褒められた記憶なんてないから嬉しかった。

 そこに龍二が苦笑いで近寄ってきた。

「おおー!! 焔。お前やっぱすごいな。な、なあ……綾香……さん?」

 さん? 

 すると、綾香が龍二の後ろからのっそり出てきた。

「ええ。本当にすごいよ焔は。絹ちゃんおんぶして1位でゴールしちゃうんだもん。すごいすごい」

 顔は笑っていたが、その口調と雰囲気からはどこか物凄いプレッシャーを感じた。

 え? 怒ってる? 俺なんか悪いことした?

 焔は疑問に思い絹子の方を向く。

 それに気づいた絹子は焔に向かって腕を伸ばし親指を上に立て、グッドポーズをした。

 焔も胸元で小さく同じポーズをとった。


 だよな。俺ら何も悪いことしてないよな。


 2人のやり取りを見ていた綾香は更に燃え上がる。その圧を感じ取った龍二が綾香の肩を抑え込み、焔に一言。

「焔お前次、障害物競走だろ。は、早く行け!」

「お、おー」

 焔は龍二の必死さに首をかしげながら入場門の方に向かって行った。

 ホッと肩の荷を下ろす龍二。

(頼むからもう面倒ごとはよしてくれよ。焔)


 障害物競走。

 これは……と会長が説明してくれるらしい。


「会長……今回の障害物競走の説明お願いします!!」

「任せろ副会長!! まずはオーソドックスに平均台、そして網をくぐり、その後にピンポン玉をお玉に入れて指定された場所まで運ぶ。そして、跳び箱を飛んでからパン食いをしてゴールとなる」

「なるほど!! 皆さん頑張ってください!! ちなみに跳び箱の高さはどうなってるんですか?」

「男子は6段! 女子は4段だ! 最悪飛べずとも跳び箱の上に乗れさえすればOKとする!!」

「なるほど!! ピンポン玉を落とした場合はどおなるんでようか?」

「よくぞ聞いてくれた副会長!! 落とした場合……また初めの位置からピンポン玉を運んでもらう!!」

 会場はざわついた。

 これは1人だけでずーっとピンポン玉の所で立ち往生してしまうとすごく恥ずかしいな。慎重に行こ。

「さあそれでは早速始めたいと思います!!」


「位置について……よーい……」

 パン!!

 今回俺は4番目だからけっこうまだまだ時間があった。やっぱり皆ピンポン玉のところがネックみたいだな。落とすやつがまあまあいるな。あそこで落としたらもう1位は望めない。他で苦戦しそうなところは最後のパン食いぐらいか。

 そんなことを頭の中で巡らせていたら瞬く間に俺の番がきた。

「でたな!! 焔!! 今回は事前に知っていたからもう驚かんぞ!!」

「さあ今回はどんな姿を我々に見せてくれるんでしょうか!? 見ものです」

 2人のアナウンスで場が一気に沸き立つ。

 はあ……この2人のせいでもう下手なところは見せられなくなった。今回の体育祭は徹底的にマークされそうだな。全く。

 こんなことを思っている焔だったが、その顔は少し嬉しそうだった。

「位置について……よーい……」

 パン!!

 一斉に走り出すが、最初のスタートダッシュから1人抜きんでていた。

「早くも焔君1人躍り出ました!! 平均台も全くペースを落とすことなくクリアしていきました!!」

 早くも会場は興奮状態に入る。

「網も他の3組が入る頃にはもう出口に迫っています!! と、会長、今回はえらく静かですね?」

「フッ……もうこんなことでは驚かんからな。だが、勝負はここからだ!! いくら焔といえどもこの風が吹いている中、ピンボールを落とさずに行けるなんてこと……」

「お、お、お!! 落としませんでしたね……」

「……ハーハッハッハッハ!! これも計算のうちだ!! 私は最後の手を残していたんだよ!! 焔の行く先を見ろ!! 副会長!!」

 その言葉に副会長だけでなく会場の全員が注目する。

「次は跳び箱ですけど……あ、あれは!? 焔君の所だけ跳び箱が12段になっている!!」

 会場は歓声とブーイングの嵐に包まれた。

「ふざけんじゃねーぞ!!」
「そんなの不公平だろ!!」
「よくやった会長!!」
「会長最高!!」


「焔よ!! 飛べるものなら飛んでみろ!!」

 焔は真っすぐ跳び箱に向かって走って行く。

 はあ……会長度が過ぎてるだろ。だが、不思議と全然いける気がする。修行の成果だろうか、どれが出来てどれができないか。どれぐらいの力を入れれば、どんな風にやれば良いのか……そんなことが分かるようになった。この跳び箱も……

 焔は踏切板に勢いよく両足で踏み込み、そこから軽く蹴り上げるとスッと跳び箱の一番上までジャンプをした。そして、またまたスッとマットの上に着地した。

 固唾をのんで見守っていた生徒たちも焔が着地した瞬間、物凄い歓声を上げた。

 歓声鳴り止まぬまま、焔はパンを口で取りほぼ独走状態でゴールした。

「ゴール!! 焔君、独走状態でした!! いかがでしたか会長?」

「……ハーハッハッハッハ!! またしても焔にやられてしまった!! これはもう素直に負けを認めるしかない!! よくやった焔!! 面白かったぞ!!」

 会長が拍手を送ると、会場全員が焔に拍手を送った。

 焔も満更でない表情を浮かべる。

 ……今までで一番楽しい体育祭かも。シンさんには感謝だな。


 ―――「お疲れさん焔」

「ああ」

 焔はそう言って、龍二の横に腰を下ろした。

「大活躍だな」

「そうだな。あの会長は困ったもんだけど」

「ハハ。あの会長面白くて俺は好きだけどな」

「……俺も」

 そんなこんなで台風の目が終わり、借り人競争が始まった。

 借り人競争とは文字通り人を借りる。プレートにお題が書かれており、そのお題にあった人を借りてくる。お題は全て会長と副会長で決めたらしい。ろくなものがない気がするな。ちなみにこの競技には綾香と絹子が出ている。綾香は2番目で絹子が4番目だ。

 早速競技が始まった。

 皆一斉に伏せられたプレートに走り込み、お題を見るとテントの方に走ってきて声を上げる。

「今回のテスト学年ビリの人いますかー!!」
「自分こそ絶世の美女だと思う人ー!!」
「朝食に梅干し食べた人ー!!」
「犬飼ってる人ー!!」

 会場が笑いに包まれる。最初の2つのお題は会長だな。後の平凡なお題は副会長だな。

 意外にも2つ目のお題が一番最初に見つかった。ノリの良いブ……中々特徴的な顔の人だった。

 さあ勢いそのままで2回目が始まる。

 綾香はプレートをひっくり返す。

(もし好きな人なんて書かれてたらどうしよう……困っちゃうなー!!)

 期待を秘めた瞳でプレートを勢いよくめくる。

 "デブ"

 その言葉を見るや否や、見る見るうちに笑顔とはかけ離れた表情に変っていった。

 そのままテントに向かって呼びかけるのではなく、自分のクラスのテントに向かった。

「龍二、一緒に来て」

 暗い声で言う綾香とは裏腹に龍二は、

「お! 俺か! 早く行こうぜ!!」

 浮かれていた。

「なあ綾香? 何で俺なんだ? もしかして幼馴染とか!? 頼れるやつとか!? それとも……」

 そこで綾香は龍二の言葉を遮り、短く一言。

「デブ」

 さっきまで楽しそうな表情を浮かべていた龍二だったが、綾香と同様に表情が変わっていった。

「あ……そうすか……」

 1着だった。

 そして、4番目。絹子の番だ。

 プレートを見るや否や、真っすぐに焔の元に走って行った。

「焔君。一緒に来て」

「了解」

 一緒に走っている途中、焔は龍二同様に同じ質問をする。

「プレートにはなんて書いてあったんだ?」

「……教えない」

 教えないか……ま、良いか。

「お! 会長またあのペアですね!! なんて書いてあったんでしょう?」

「ハハハ!! 知っているが教えん!!」

「えー!? まあ生徒のプライバシーは守らなきゃならないですもんね」

「そういうことだ!! ハハハ!!(カップルなんておふざけ半分で言ったつもりだったが、これはこれは……)」

 それから、体育祭は大盛況の中、最終種目に入った。

 龍二は騎馬戦、ムカデ競争と大活躍だった。騎馬戦は赤組が1位、クラス対抗のムカデ競争と綱引きも1位となった。フォークダンスでは絹子とペアの時、どこからか物凄いプレッシャーを感じた。俺の勘違いだったのか? 

 そして、このままいけば赤組は優勝するかもしれない。更に、2年1組は全学年で一番点数を取った組としてグランプリをもらえる。このクラス対抗リレーで1位をとれば……

 1年のリレーが終わり、俺たち2年の番となった。

 流石にグランプリなんか目指していなかったが、ここまで来たらやはり夢見てしまう。

「位置について……よーい……」

 パン!!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...