42 / 116
在学編
第四十一話 銀ちゃん
しおりを挟む
10月も半ばとなり、ちらほらとブレザーを着てくる生徒も増えてきた。会長のおかげもあり、放課後は文化祭の準備でいつもよりも騒がしくなった。規制の改正があったため、いつもなら作品展示や、しょぼい縁日ぐらいしかやることがなかったが、今年はメイドカフェ、お化け屋敷、迷路など色々なことが他のクラスで出た。
3年生しか出店を開くことができなかったが、今年からは全学年開くことができるようになったから、色んなものを食べ歩きできそうだ。有志のバンドもいつも以上に出たから今年は忙しくなりそうだ。
俺たちのクラスはカジノをすることになった。なぜこれになったかと言うと、先生がカジノに詳しいってのとディーラーの服装なら男子も女子にも抵抗感がなかったからだ。
トランプゲーム、サイコロ、ルーレット、ダーツ、おまけに花札まである。ババ抜きと簡単なものからブラックジャック、ポーカーなどの本格的なものまである。今俺たちは休み時間返上でトランプをやりまくっている。放課後も小物づくりと中々忙しく、シンさんも文化祭が終わるまで特訓を中止してくれた。
その代わり、自動負荷装置がいつもより本当にきつくなった。寒くなってきたのに体を動かすとすぐに汗が噴き出す。
そして、会長が企画した俺との鬼ごっこ&ドッジボールはもうすでに予約が埋まってしまったらしい。
それに合わせて当日は鬼ごっこ1回とドッジボール2回だったところを鬼ごっこ2回、ドッジボール4回となった。つまり合計600人が参加する。高校、中学、そして地元の人たちを巻き込んだ大プロジェクトへとなってしまった。レッドアイを倒したことと体育祭での活躍が思いのほか広まってしまい、こんなことになってしまったのだ。
会長はご満悦だったが、こっちは胃が痛い。聞けば、高校と中学の運動部は全員参加しているらしい。本当にたまったもんじゃないよ。全く。
「焔君、私も手伝うよ」
1人黙々と自分の席で小物づくりをしていた焔に絹子が声をかけた。
「そりゃ助かるわ。そんじゃそいつ切っといて」
「わかった」
そう言って、絹子は焔の前の席に座り、一緒の机で作業し始めた。
黙々と作業している2人に綾香が割って入る。
「ね、ねえ。私も何か手伝おっか?」
少し引きつった笑顔で聞いてくる綾香に焔はきっぱりと言い放つ。
「いや、こっちはもう人数は足りてるからいいわ。それよりも綾香は龍二のところを頼む」
「……はーい」
トボトボとした足取りで綾香は後ろの方で作業している龍二の所に向かった。
「はあ……」
「どうしたそんな大きなため息ついて。焔にでもフラれたか。ハハハ!! なんちゃって……」
そう言って、笑いながら綾香の方に振り向く龍二だったが……
「……はあ……!」
その言葉で綾香は更に深く落ち込んでしまった。
(え? まじで)
驚いた龍二は焔がいるほうに目を向ける。すると、何か納得したようにニヤッと笑う。
「なるほどなー。焔にもう絹子ちゃんがいるから他のとこ手伝ってこいみたいなこと言われたんだな」
図星だったようで更に落ち込む綾香。
「焔と絹ちゃんって最近仲良くなってない? もしかして付き合ってるとか……」
不安そうな顔をする綾香に龍二は即座に反応する。
「それはないな。俺から見れば綾香や絹子ちゃんに対する焔の態度は全然一緒だからな。ただ何となく焔と絹子ちゃんの雰囲気が似てるからそうやって綾香が錯覚してるだけだよ」
「そう……そうよね! あの2人に何かあるわけないか……そうと分かれば早く取り掛かろ龍二!!」
「お、おう!!」
元気を取り戻す綾香だったが、それと同時に浮かない表情を浮かべる龍二。
(焔は誰に対しても同じように対応する。当然、絹子ちゃんに対しての対応もいつも通りなんだが……1週間前ぐらいかな。焔がちょうど顔に傷を作ってきた時だ。その時から、時々絹子ちゃんが焔に向ける視線が綾香のそれと同じように感じるんだが……気のせいにしとくか)
龍二は何食わぬ顔で作業に戻った。
「龍人は元気にしてるか?」
作業をしている中、焔は唐突に口を開いた。
「元気にしてる。鬼ごっこ行くって」
「そうか。そんじゃ、見つけ次第全力で捕まえるって言っといてくれ」
「うん。わかった」
「絹子は参加しないのか?」
「私は見てるほうがいいから」
「なるほどね」
会話は終わり、また黙々と作業を始める。
そんな中、1人の男が焔たちのクラスに現れた。
「よお焔。お前たちのクラス前の廊下、まともに踏めるとこなくて大変だったぞ」
そう言って、焔の方に寄って来る男は服装がだらけており、首からヘッドフォンを垂れ下げ、いかにもチャラそうだった。
「何だ銀ちゃんか……」
「おいおい。連れないこと言うなよ」
そう言って、焔の肩に手を回すが、すぐにみぞおちに焔の肘が入る。
「グフッ……相変わらず容赦ねえな」
そんなやり取りを絹子はキョトンと見ていると、それにチャラついた男が気づいた。
「お! 焔この子があの時いた子か?」
「ああ、そうだ」
「どうも初めまして。瀧藤銀次と言います。以後お見知りおきを」
そう言って、銀次は絹子に向かって丁寧に自己紹介をする。
「あ、どうも」
「絹子、前に話しただろ。あいつがあの動画を拡散してくれた本人だ」
絹子は焔の言葉にビックリしたような表情を浮かべると立ち上がり、深々と銀次にお礼した。
「ありがとうございました。おかげで弟も平穏な学校生活を送ることができました」
「あ、いいのいいの。同い年なんだし敬語なんて必要ないって。それに俺はただ単に動画を明るくして、SNSにアップしただけ。あの動画撮ったのは焔なんだからお礼は焔にしといてよ」
「いや、焔君にはもう何十回もお礼してるから。それに銀次君がいなかったらここまでうまく事が運ぶことはなかったって焔君が言ってたから」
「焔……お前……」
感動の眼差しを向ける銀次に少し恥ずかしくなったのか焔は席から離れる。
「トイレ行ってくるから銀ちゃんちょっと俺の代わりにやっといて」
「えー……ま、暇だしいっか」
焔と入れ替わるように銀次が席に座る。
「確か……絹子ちゃんであってるかな?」
「うん。あってる」
「そう。良かった。君も焔に助けられた1人ってわけか。あいつはどれだけの人間を救えば気が済むのかな」
「うん。焔君は本当にすごい……も……ってことは銀次君も焔君に助けられたの?」
「俺はそのつもりなんだけど……きっと焔はそんな風に思ってないんだろうな」
絹子は銀次のその言葉を聞き、興味津々な様子を見せる。その様子を見てニヤニヤしながら絹子に問いかける。
「聞きたい?」
「聞きたい!」
「フッ……あれは中学2年生のころだったかな―――」
―――俺は中学時代ネットにドハマりした。その中でも特にSNSに。いつもは気弱な俺もネットの中でなら強くなれた。他人とも普通に話をすることができた。自分のちょっとした恥ずかしい趣味のことも話し合うことができた。日頃の嫌なことも吐き出すことができた。
次第に俺のフォロワーは3000人以上になった。学校にはスマホを持ってきては行けないことになっていたが、俺は持っていっていた。もちろん、学校では携帯をいじらなかったけど、下校中に誰にも見つからないようにいじっていた。
そんなある日、俺はあまりに携帯に夢中になっていたせいかクラスのやつらが来たのが分からなかった。案の定、俺の携帯は奪われ俺のアカウントを知られてしまった。
当然、学校中のやつらに知られてしまい、俺はいい笑いものになった。気持ち悪い、オタク、イキリ。Mr.シルバーって言うアカウントの名前で呼ばれてたこともあったな。いじめとまでは言わないが、俺に居場所はなくなった。唯一のネットの世界も皆から見張られていると思うととてもできなかった。かと言って、別のアカウントに変えるとまた何か言われると思った。
先生、親にはSNSなんかするんじゃないと言われた。俺の生きる楽しみは完璧になくなった。
そんな俺に焔だけは『お前すげえな』って言ってくれた。
『俺もSNSやってるんだけど、フォロワーなんて1桁しかいないわ。それに比べたらお前マジですごいな』
それから焔とは話をするようになった。そんな時、俺は自分について焔に聞いた。ネットと現実でまるっきり人格が変わってる俺って変なのかな? って。そしたらあいつは素っ気なく『どうでもいいんじゃね?』って言ったんだよ。
『人間、表裏あるのは当たり前だ。そして、お前の表は多分ネットの中なんだろうな。だってあんなに楽しそうにしてんだもん』
そこで俺は初めて知った。そうか、ネットの中の俺が本当の俺だったんだって。
『ネットの中が本当の俺……焔、現実でも本当の自分出してもいいかな!?』
俺は期待を込めて焔に聞いたんだけど……あいつはあっさり『そんなもん自分で決めろ』って言ってきたんだよ。あいつはそう言った後、しょんぼりした俺を置いて自分のクラスに戻ろうとしたんだけど、
『だけど、3000人以上は本当のお前のこと認めてくれてるみたいだけどな。そんじゃ』
―――「あれはかっこよかったなあ」
「そして、銀次君は本当の自分を現実でも出すようになったんだ」
「そゆこと。そしたら皆には変人みたいな目で見られたけど、心底どうでもよくなった。だって、俺のことを認めてくれてるやつはいっぱいいるんだからな」
「うん。そうだね……でも、昔から焔君は素っ気ない人なんだね」
「ああ、そうだな。でもそれがあいつの良いとこなんだよ。いい意味でも悪い意味でもあいつは冷たい。だからこそ逆に気兼ねなく接することができるんだよな」
「何かわかるかも」
「フッ……そんな絹子ちゃんにいいものを見せてやるよ」
「何?」
気をよくした銀次はカッターシャツのボタンを全部外し、バッとカッターシャツを広げ、中に着ているシャツを見せた。
「……アニメの……キャラクター?」
「ピンポーン!! 正解。これは俺の嫁のティアちゃんでーす!! どう? 可愛いでしょ!?」
「可愛い」
「でしょでしょ!! こんなかわいい顔して背も小っちゃいのに胸Gカップもあるんだよ!! しかも……痛!!」
饒舌になる銀次に背後から焔が頭をぶっ叩いた。
「おい銀ちゃん。ちゃんと作業してたんだろうなー?」
「……テヘペロー」
「てめえ……!!」
もう一発殴ろうとするが、銀次は素早くドアの方まで逃げる。
「ごめんごめん。また今度何か手伝うから。あ! 絹子ちゃんまたねー。また話そうねー」
「うん。わかった」
「ほんじゃこれで」
そう言って、銀次は去っていった。それを見届けると、焔は疲れたように席に座る。
「はあ……あいつは本当に面倒だな。で、銀ちゃんと何話してたんだ?」
絹子は考えるしぐさを見せるが……
「フフッ……秘密」
「……あっそ」
それから2人は何食わぬ顔で作業に戻った。
3年生しか出店を開くことができなかったが、今年からは全学年開くことができるようになったから、色んなものを食べ歩きできそうだ。有志のバンドもいつも以上に出たから今年は忙しくなりそうだ。
俺たちのクラスはカジノをすることになった。なぜこれになったかと言うと、先生がカジノに詳しいってのとディーラーの服装なら男子も女子にも抵抗感がなかったからだ。
トランプゲーム、サイコロ、ルーレット、ダーツ、おまけに花札まである。ババ抜きと簡単なものからブラックジャック、ポーカーなどの本格的なものまである。今俺たちは休み時間返上でトランプをやりまくっている。放課後も小物づくりと中々忙しく、シンさんも文化祭が終わるまで特訓を中止してくれた。
その代わり、自動負荷装置がいつもより本当にきつくなった。寒くなってきたのに体を動かすとすぐに汗が噴き出す。
そして、会長が企画した俺との鬼ごっこ&ドッジボールはもうすでに予約が埋まってしまったらしい。
それに合わせて当日は鬼ごっこ1回とドッジボール2回だったところを鬼ごっこ2回、ドッジボール4回となった。つまり合計600人が参加する。高校、中学、そして地元の人たちを巻き込んだ大プロジェクトへとなってしまった。レッドアイを倒したことと体育祭での活躍が思いのほか広まってしまい、こんなことになってしまったのだ。
会長はご満悦だったが、こっちは胃が痛い。聞けば、高校と中学の運動部は全員参加しているらしい。本当にたまったもんじゃないよ。全く。
「焔君、私も手伝うよ」
1人黙々と自分の席で小物づくりをしていた焔に絹子が声をかけた。
「そりゃ助かるわ。そんじゃそいつ切っといて」
「わかった」
そう言って、絹子は焔の前の席に座り、一緒の机で作業し始めた。
黙々と作業している2人に綾香が割って入る。
「ね、ねえ。私も何か手伝おっか?」
少し引きつった笑顔で聞いてくる綾香に焔はきっぱりと言い放つ。
「いや、こっちはもう人数は足りてるからいいわ。それよりも綾香は龍二のところを頼む」
「……はーい」
トボトボとした足取りで綾香は後ろの方で作業している龍二の所に向かった。
「はあ……」
「どうしたそんな大きなため息ついて。焔にでもフラれたか。ハハハ!! なんちゃって……」
そう言って、笑いながら綾香の方に振り向く龍二だったが……
「……はあ……!」
その言葉で綾香は更に深く落ち込んでしまった。
(え? まじで)
驚いた龍二は焔がいるほうに目を向ける。すると、何か納得したようにニヤッと笑う。
「なるほどなー。焔にもう絹子ちゃんがいるから他のとこ手伝ってこいみたいなこと言われたんだな」
図星だったようで更に落ち込む綾香。
「焔と絹ちゃんって最近仲良くなってない? もしかして付き合ってるとか……」
不安そうな顔をする綾香に龍二は即座に反応する。
「それはないな。俺から見れば綾香や絹子ちゃんに対する焔の態度は全然一緒だからな。ただ何となく焔と絹子ちゃんの雰囲気が似てるからそうやって綾香が錯覚してるだけだよ」
「そう……そうよね! あの2人に何かあるわけないか……そうと分かれば早く取り掛かろ龍二!!」
「お、おう!!」
元気を取り戻す綾香だったが、それと同時に浮かない表情を浮かべる龍二。
(焔は誰に対しても同じように対応する。当然、絹子ちゃんに対しての対応もいつも通りなんだが……1週間前ぐらいかな。焔がちょうど顔に傷を作ってきた時だ。その時から、時々絹子ちゃんが焔に向ける視線が綾香のそれと同じように感じるんだが……気のせいにしとくか)
龍二は何食わぬ顔で作業に戻った。
「龍人は元気にしてるか?」
作業をしている中、焔は唐突に口を開いた。
「元気にしてる。鬼ごっこ行くって」
「そうか。そんじゃ、見つけ次第全力で捕まえるって言っといてくれ」
「うん。わかった」
「絹子は参加しないのか?」
「私は見てるほうがいいから」
「なるほどね」
会話は終わり、また黙々と作業を始める。
そんな中、1人の男が焔たちのクラスに現れた。
「よお焔。お前たちのクラス前の廊下、まともに踏めるとこなくて大変だったぞ」
そう言って、焔の方に寄って来る男は服装がだらけており、首からヘッドフォンを垂れ下げ、いかにもチャラそうだった。
「何だ銀ちゃんか……」
「おいおい。連れないこと言うなよ」
そう言って、焔の肩に手を回すが、すぐにみぞおちに焔の肘が入る。
「グフッ……相変わらず容赦ねえな」
そんなやり取りを絹子はキョトンと見ていると、それにチャラついた男が気づいた。
「お! 焔この子があの時いた子か?」
「ああ、そうだ」
「どうも初めまして。瀧藤銀次と言います。以後お見知りおきを」
そう言って、銀次は絹子に向かって丁寧に自己紹介をする。
「あ、どうも」
「絹子、前に話しただろ。あいつがあの動画を拡散してくれた本人だ」
絹子は焔の言葉にビックリしたような表情を浮かべると立ち上がり、深々と銀次にお礼した。
「ありがとうございました。おかげで弟も平穏な学校生活を送ることができました」
「あ、いいのいいの。同い年なんだし敬語なんて必要ないって。それに俺はただ単に動画を明るくして、SNSにアップしただけ。あの動画撮ったのは焔なんだからお礼は焔にしといてよ」
「いや、焔君にはもう何十回もお礼してるから。それに銀次君がいなかったらここまでうまく事が運ぶことはなかったって焔君が言ってたから」
「焔……お前……」
感動の眼差しを向ける銀次に少し恥ずかしくなったのか焔は席から離れる。
「トイレ行ってくるから銀ちゃんちょっと俺の代わりにやっといて」
「えー……ま、暇だしいっか」
焔と入れ替わるように銀次が席に座る。
「確か……絹子ちゃんであってるかな?」
「うん。あってる」
「そう。良かった。君も焔に助けられた1人ってわけか。あいつはどれだけの人間を救えば気が済むのかな」
「うん。焔君は本当にすごい……も……ってことは銀次君も焔君に助けられたの?」
「俺はそのつもりなんだけど……きっと焔はそんな風に思ってないんだろうな」
絹子は銀次のその言葉を聞き、興味津々な様子を見せる。その様子を見てニヤニヤしながら絹子に問いかける。
「聞きたい?」
「聞きたい!」
「フッ……あれは中学2年生のころだったかな―――」
―――俺は中学時代ネットにドハマりした。その中でも特にSNSに。いつもは気弱な俺もネットの中でなら強くなれた。他人とも普通に話をすることができた。自分のちょっとした恥ずかしい趣味のことも話し合うことができた。日頃の嫌なことも吐き出すことができた。
次第に俺のフォロワーは3000人以上になった。学校にはスマホを持ってきては行けないことになっていたが、俺は持っていっていた。もちろん、学校では携帯をいじらなかったけど、下校中に誰にも見つからないようにいじっていた。
そんなある日、俺はあまりに携帯に夢中になっていたせいかクラスのやつらが来たのが分からなかった。案の定、俺の携帯は奪われ俺のアカウントを知られてしまった。
当然、学校中のやつらに知られてしまい、俺はいい笑いものになった。気持ち悪い、オタク、イキリ。Mr.シルバーって言うアカウントの名前で呼ばれてたこともあったな。いじめとまでは言わないが、俺に居場所はなくなった。唯一のネットの世界も皆から見張られていると思うととてもできなかった。かと言って、別のアカウントに変えるとまた何か言われると思った。
先生、親にはSNSなんかするんじゃないと言われた。俺の生きる楽しみは完璧になくなった。
そんな俺に焔だけは『お前すげえな』って言ってくれた。
『俺もSNSやってるんだけど、フォロワーなんて1桁しかいないわ。それに比べたらお前マジですごいな』
それから焔とは話をするようになった。そんな時、俺は自分について焔に聞いた。ネットと現実でまるっきり人格が変わってる俺って変なのかな? って。そしたらあいつは素っ気なく『どうでもいいんじゃね?』って言ったんだよ。
『人間、表裏あるのは当たり前だ。そして、お前の表は多分ネットの中なんだろうな。だってあんなに楽しそうにしてんだもん』
そこで俺は初めて知った。そうか、ネットの中の俺が本当の俺だったんだって。
『ネットの中が本当の俺……焔、現実でも本当の自分出してもいいかな!?』
俺は期待を込めて焔に聞いたんだけど……あいつはあっさり『そんなもん自分で決めろ』って言ってきたんだよ。あいつはそう言った後、しょんぼりした俺を置いて自分のクラスに戻ろうとしたんだけど、
『だけど、3000人以上は本当のお前のこと認めてくれてるみたいだけどな。そんじゃ』
―――「あれはかっこよかったなあ」
「そして、銀次君は本当の自分を現実でも出すようになったんだ」
「そゆこと。そしたら皆には変人みたいな目で見られたけど、心底どうでもよくなった。だって、俺のことを認めてくれてるやつはいっぱいいるんだからな」
「うん。そうだね……でも、昔から焔君は素っ気ない人なんだね」
「ああ、そうだな。でもそれがあいつの良いとこなんだよ。いい意味でも悪い意味でもあいつは冷たい。だからこそ逆に気兼ねなく接することができるんだよな」
「何かわかるかも」
「フッ……そんな絹子ちゃんにいいものを見せてやるよ」
「何?」
気をよくした銀次はカッターシャツのボタンを全部外し、バッとカッターシャツを広げ、中に着ているシャツを見せた。
「……アニメの……キャラクター?」
「ピンポーン!! 正解。これは俺の嫁のティアちゃんでーす!! どう? 可愛いでしょ!?」
「可愛い」
「でしょでしょ!! こんなかわいい顔して背も小っちゃいのに胸Gカップもあるんだよ!! しかも……痛!!」
饒舌になる銀次に背後から焔が頭をぶっ叩いた。
「おい銀ちゃん。ちゃんと作業してたんだろうなー?」
「……テヘペロー」
「てめえ……!!」
もう一発殴ろうとするが、銀次は素早くドアの方まで逃げる。
「ごめんごめん。また今度何か手伝うから。あ! 絹子ちゃんまたねー。また話そうねー」
「うん。わかった」
「ほんじゃこれで」
そう言って、銀次は去っていった。それを見届けると、焔は疲れたように席に座る。
「はあ……あいつは本当に面倒だな。で、銀ちゃんと何話してたんだ?」
絹子は考えるしぐさを見せるが……
「フフッ……秘密」
「……あっそ」
それから2人は何食わぬ顔で作業に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる