焔の軌跡

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信頼編

第九十二話 練習場

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 シンとハクが合流し、練習場へと向かう焔たち。焔は思い出したかのように隣に歩くソラに、

「そういや、ソラはよくシンさんとハクさんが後ろにいること気付いたな。俺全く気付かなかったわ」

「そう言えば、そうよね。私も焔の隣にいたのに全く気付かなかった」

「あたしもネ」

「僕は気付いていなくもなくもなっ……!」

「私も全然気配を読み取ることが出来なかったわ」

 皆口々にそう言った。それほどに2人はその存在を誰にも悟られることがなかった。ただ1人を除いて。

 皆の話を聞いた後、ソラは小さく首を振った。

「確かにソラは気付いたけど、それはハクの気配だけ。シンが一番近くにいたのに、シンの気配だけが全くわからなかった」

 確かに、ソラは後ろを振り返ったとき、一番最初に目を向けたのはハクの姿だった。だが、ハクを捉える前に視界に最初に映ったのはシンの姿だった。その時、感情をあまり表さないソラではあったが、全身に寒気が走った。

「アハハ、流石に忍者のようにはいかないか」

 ソラの言葉を聞き、シンの隣を歩くハクが頭を掻きながら笑った。

「まあ、忍びだからね。こっちの専門分野で侍には負けられないよ」

 シンが放った侍という言葉で、焔は思い出したようにハクに話を持ち掛ける。

「そう言えば、ハクさんって最強の流派と言われた剣術を使うんですよね?」

「うーん……最強の流派か。確かに、昔はそんなこと言われてたみたいだね。ま、本当かどうか知らないけど」

「えーと、確か閃光抜剣流でしたっけ?」

「そうそう」

「ってことは、めちゃくちゃ速い抜刀術みたいな感じですか?」

「うん、まあそうだけど……何で分かったの?」

 そう言って、焔に質問するハクだが、焔はこんな質問がくるとは思ってなかったのか、一瞬動揺する。

「え? だって、閃光の……抜剣流……だからでは……」

 タジタジになりながら、答える焔にしばらく考えるハクだったが、やっと意味が分かり、納得したように声を上げる。

「あー、そういうことか……なるほど、焔は少し勘違いしてるかもしれないな」

「勘違い……ですか?」

「『せんこう』って言うのは、光の『閃光』ではなくて、鮮やかな紅と書いて『鮮紅』って読むんだよ」

「へえ、『せんこう』ってそういう意味だったんですね。思いっきり勘違いしてました」

「アハハ、私もてっきり光の方の閃光だと思ってた」

 茜音も勘違いしていたようで、恥ずかしそうに笑う。

「確かに、日本人でもこっちの『鮮紅』はあまり使わないからね。それに、元々は焔たちが勘違いしていた『閃光』が本来使われていた漢字だったらしいから無理もないさ」

「へえ、そうなんすか……それだったら、なんで『閃光』が『鮮紅』に変わったんですか?」

「ま、戦乱の時代だったからね」

「……ああ、そういうことですか」

 焔と茜音は『戦乱』という言葉からすぐに理解した。『閃光』が『鮮紅』に変わった背景に『血』が関係していることを。

 それからしばらく歩き、エレベーターなど使い移動を繰り返すと、廊下が広くなり、次第に廊下を歩く人たちが増えていった。

「ご無沙汰してます! ハク教官、シン教官!」
「お疲れ様です!」
「また、ご指導のほどよろしくお願いします!」

 すれ違う人たちは全員、シンとハクの存在に気づくや否やすぐに声をかけ、挨拶を交わす。だが、それは上司に対してする挨拶という感じではなく、本当に尊敬しているからこそ出る表情や、態度などが見て取れた。そこで、改めて焔たちは教官という存在がいかにすごいのかということを理解した。

 それと同時にすれ違う人たち皆が、

「お! 新人か? これからよろしくな!」
「これから一緒に頑張ろうね」
「困ったら、いつでも頼ってくれよな!」

 と、優しく声をかけてくれ、少し緊張感がほぐれた。

 シンとハクはある扉の前で止まると、シンがAIに確認を取る。

「AI、今空いている練習場はあるかな?」

「現在、9番練習場が使用可能です」

「そんじゃあ、そこで」

「かしこまりました」

 すると、扉が開いた。そこはエレベーターのような空間だった。乗り込むと、扉が閉まり、しばらくすると、

「到着しました」

 AIの声が流れると、扉が開いた。扉の前に広がる景色は焔たちが電脳世界で見たような白い空間だった。白の正方形のタイルが無数に貼られたような空間は体育館ほどの広さであった。

「おおー!」

 いの一番に練習場に入っていったのはリンリンであった。はしゃぐリンリンにつられるように焔たちも続々と練習場に足を踏み入れる。真ん中まで走り、あたりを見回すリンリン。

「何もないネ!」

 最初に練習場に入って、出てきた感想はまさにこれだった。

「確かに何もねえな」

「だが、何もない分、戦いやすそうではあるがな」

 焔とサイモンも同じような感想を口にしながら、リンリンの元へ向かう。

「ハク教官、少しいいですか?」

「どうしたんだい、コーネリア?」

「練習場では、あらゆる場面を想定した戦闘が可能と総督はおっしゃっていましたが、一体どんな仕組みなんですか?」

「あ、私もそれ聞きたいです」

 コーネリアが丁寧な言葉使いでハクに質問をすると、茜音もその質問の答えが気になったのか、コーネリアの隣に移動する。

「そんじゃ、ここは頼んだよ。俺は少し焔たちと遊んでくるから」

 そう言って、シンはハクの肩を2回ほど叩くと、焔たちの元へ歩いて行った。焔たちと合流したシンは何やら短いやり取りをした後、再び焔を吹っ飛ばす。すると、リンリンとサイモンが手を上げ、はしゃいでいる姿が遠くから見て取れた。

「まったく、あいつは……」

 ため息を吐くハク。だが、すぐに切り替えコーネリアたちに向き返る。

「えーっと、ここの練習場の使い方の説明ってことで良いんだよね?」

 その問いにコーネリア、茜音の二人は軽く頷く。

「まあ、この練習場は今回の焔、リンリンみたいに広い場所で組手をするときとか、または多人数戦闘をするために使うのが1つの使い道。もう一つは総督が言ってたあらゆる場面を想定した戦闘ね。ま、君たちにはもう体験してもらったと思うけど、電脳世界、いわゆるヴァーチャルリアリティってやつ。正直、あらゆる戦闘ってのはこれでも可能なんだよね。電脳世界では一応何でもできるからね。ここでするよりかは遥かに色々なことが出来る」

『だったらどうして』そんなことをコーネリアと茜音が思いかけていた時に、

「でも、リアルと電脳世界ではやはり感覚または緊張感に差が生じる。だから、現実でもそう言うことが出来る施設をつくろうと言うことでここはできたらしい。ここではまず、室温、湿度、あと風速の調整が可能だ。第一試験で経験した灼熱の砂漠、極寒の雪原を疑似的に作り上げることが出来る。雨も降らせることができるし、なんなら水かさを増して、水の中での戦闘もやろうと思えば、再現できる」

「え? 水の中で戦闘しなきゃいけない状況なんかもあるんですか?」

 単純に疑問に思ったのか、茜音が食い気味に質問する。

「まあ、ほとんどないけどね」

「ほとんど……ですか」

 その答えに茜音はコーネリアと目を合わせ、苦笑いを浮かべた。

「後は……ARって言うのかな。専用の眼鏡やコンタクトを付けると、この空間にVRと同じように色んな景色を映し出すことや敵を作ることが出来ることかな。もう茜音はヴァネッサとの試験で使ったと思うけど」

「あー! 確かに使いましたね。あれは本当に現実と見間違うほど凄かったです!」

「でしょ? 結構リアルなんだよね。後、実際に敵から攻撃を受けたときの痛みや衝撃を脳に入れられたマイクロチップが勝手に再現してくれたり、剣とかが振動したりして実際に相手の攻撃を弾いたみたいな感覚もリアルに再現してくれるから、練習場は皆けっこう使うんだよね」

「へえ、それだったら確かに訓練にはもってこいですね」

「なるほど、勉強になりました。ありがとうございます」

「いやいや、わかって貰えてよかったよ。それじゃあ、そろそろ合流しようか。でないと、怪我するよ、あれは」

 そう言って、ハクは心配そうに中心に目を向ける。つられるようにして、茜音とコーネリアも目を向けると、そこには楽しそうにシンに吹っ飛ばされているリンリンとサイモンの姿が映り、思わず、苦笑いになる。

 そして、ちょうどサイモンの番が来て吹っ飛ばされるが、着地に失敗して背中から落ち、もだえ苦しむ姿が映り、ハクの予言は見事に的中した。

「あららら」

「あー、痛そう」

「……ハー」

 ハクと茜音は心配そうにしていたが、コーネリアは本気であきれたようにため息をつくのであった。

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