焔の軌跡

文字の大きさ
95 / 116
信頼編

第九十四話 焔vsサイモン

しおりを挟む
「どうしてわかったネ?」

 リンリンはなぜさっきの蹴りで腕を折りにいっていたことがわかったのかを焔に問いかける。

「最初は顔を狙ってると思ったんだけどな……俺が腕でガードしようとした瞬間、足の出所が少しだけ変化しただろ? その時思ったんだよ。リンリンの狙いは顔じゃなくて、ガードしに来た腕なんだなって。だから、マジで焦ったぜ」

「あの一瞬でそんなことがわかるなんて……やっぱり焔はすごいネ」

「いやいや、それほどでも」

「それじゃあ、今度はこっちから行くネ……!」

 言い終わるや否やすぐにリンリンは焔の元へ突っ込んでくる。焔は自然と防御態勢を取り、リンリンの攻撃に備える。

 リンリンは素早い攻撃を焔に仕掛ける。指をピンと伸ばした手の型、いわゆる貫手ぬきてを顔に集中して仕掛けてくる。シンも時々貫手を仕掛けてくることはあったが、シンとリンリンとではその鋭さがやはり違っていた。そして、同時に思い出す。貫手への対処法を。


 貫手は避けるか、払うかのどちらかで対処すること。相手が素人なら、ガードしても、大したダメージはないと思うけど、さっきの動きからしてもリンリンはおそらく……いや、かなりの手練れだ。手首とか、指を掴めば動きを止められるけど、前にそれシンさんにやったら、合気道か何かの技で余裕で絞められたからな……。

 
 昔の苦い経験を思い出しながらも、焔はリンリンの貫手をかわし、払う。そして、頃合いを見計らって、反撃するが、そのことごとくにリンリンは攻撃を合わせてカウンターを仕掛けてくる。そして、そのほとんどが蹴りでのカウンターだった。しかも、どんなにきつい態勢、無理な体勢からでもスピードも威力もある蹴りを放つリンリンに、焔は悪戦を強いられていた。


 キッツいな。ソラはまだシンさんと似たタイプだったから、良かったけど、蹴り主体で攻めてくるやつとは今までに戦ったことないからな。更に、その蹴りがとんでもねえ。上段、中段、下段、回し蹴り、膝蹴り、二段蹴り、かかと落とし、何でもござれかよ。それに、そのほとんどがほぼノーモーションで溜が全くねえ。なのに、あれだけの威力とスピードが出るのはおそらく……。


 その瞬間、リンリンから上段蹴りが繰り出された。本当にいとも簡単に繰り出すものだから、焔も反応が遅れ、かわすのもギリギリとなる。だが、リンリンの攻撃はまだ続き、蹴りの反動で一回転すると、その隙に逆の脚から、刺すのような前蹴りが焔の胸元をえぐる。


 ヤバッ! 避けきれねえ……!!


 その前蹴りは焔の胸元にヒットする。

(やったネ!!)

 リンリンも手ごたえがあったのか、一瞬表情が明るくなる。だが、すぐにそれは間違いだと言うことをリンリンは理解した。

 蹴りは決まっていた。だが、ギリギリのところで、焔は両手をリンリンの足の裏に潜り込ませ、何とかクリーンヒットは免れていた。更に、焔は両足を浮かせ少しだけ後退することでリンリンの攻撃をほぼ無効化していた。

 決まっていたと思っていた蹴りが本当は決まっていなかったことを知ると、リンリンは悔しい思いに駆られるが、それ以上に焔の反応速度、判断力の速さに興奮を隠せずにはいられなかった。

「やっぱ、すごいネ」

 思わず笑顔になってしまうリンリン。

「だろ?」

 単純に感心するリンリンに、焔はきつい状況にもかかわらず、笑顔を作り強がって見せる。だが、そんな焔に、不敵な笑みを見せるリンリン。

「まだ終わってない……ヨ!」

 そう言うと、リンリンは軸足でつま先立ちすると、地面をつま先で蹴り、ほんの少しだけ前に出る。すると、焔の胸元に刺さった脚は伸び切っていたが、前進することによって少し曲がる。つまり、溜が出来ると言うことだ。全くもって攻撃力はないが、今現在、後ろにのけぞるように浮いている焔ならば、容易に転倒させることは可能だった。

「まずっ……!」

 焔もそのことにはすぐに気づいた。それと同時にリンリンも自身と同様に浮いていることを確認すると、焔は両手を思いっきり前を突き出す。

 両者が力を入れるタイミングはほぼ同時だった。

「よいしょ!」

「テイヤ!」

 2人は同時に後ろ向きで吹っ飛ばされると、地面にうまく手をつき、綺麗なバク転を見せ見事こけることなく着地する。

「おー」


 パチパチパチ


 2人同時に弧を描く見事な着地だったものだから、思わず拍手が起こってしまった。着地した2人は少し息が荒くなっていた。2人は相手がすぐには攻めてこないことを確認すると、ゆっくりと立ち上がり、息を整える。そして、焔は先ほどの一連の攻撃からリンリンのある特質に気づく。


 やっぱり、あの蹴りを生み出しているのは体の柔らかさが関係してるな。どんな無理な体勢からでも蹴りを繰り出すことが出来るのは、リンリンの技術と優れた体幹、そして体の柔らかさ。更に、あの鞭のような蹴りが出せるのもしなやかな筋肉と超絶柔らかい体があってこそってわけか。仮に、リンリンの脚がでっけえ鞭だと考えると……こわ。


 考察を終えた焔は改めてリンリンの蹴りの脅威に気づかされ、絶対に当たるまいと心に決めた。それと同時にリンリンも焔に対して、過大な評価をしているのだった。

(やっぱり、とんでもないヨ、焔は。これまで、けっこうな数の攻撃仕掛けたつもりなのに、全部防御されるなんて……しかも、少しのダメージも与えられなかったネ。こんなことできるのはお師匠だけだと思ってたのに、すごいヨ、焔。でも、だったらどうして攻撃はあんなに……)

 焔に関して、少し違和感を覚えたリンリン。その違和感について考えていると、不意に後ろから大きな影が伸びる。

「え?」

 振り返るリンリン。だが、その大きな影はリンリンには目もくれず、長い棒状のもので焔に攻撃を仕掛ける。

「まずっ!」

 焔は再び大きく後方へ飛び退く。そして、その大きな影を睨みつける。

「おいおい、どういうつもりだ……サイモン」

 その大きな影の正体はサイモンであった。

「あれ? サイモン君いつの間に!?」

「何してんのよ、あいつは」

 茜音は自身の横らへんに立っていたサイモンがいつの間にか移動していることに驚きを示す。一方で、コーネリアは呆れたような目つきでサイモンを見ていた。

「サイモン君、急にどうしたネ? 今はあたしが……」

「リンリンちゃんもソラちゃんとの戦いを見ているなら知っているだろう? 焔の耐久力と持久力はもはや化け物レベルだ」

「おい、サイモン……それ褒めてんだろうな?」

「ああ、十分褒めてるさ……だから、リンリンちゃん、ここからは選手交代だ」

「でも……うん、そうするヨ」

 一瞬だけ躊躇するリンリン。だが、先ほどの戦いでは、ペース配分せずにかなりの攻撃を繰り出したため、体力の消耗が激しかったこと。そして、焔の体力のことを考え、ここはサイモンの指示に従った。

 リンリンが離れるのを確認すると、サイモンは大きな声を出しながら、手に持っている槍を器用に回し始めた。

「さあ! ここからはこの僕……サイモン・スペードが相手だ! どこからでもかかってくるがいい!」

「どこからでも……つっても、素手じゃ……」

 焔がそう愚痴っていると、何かが足に当たった。

「あ?」

 そこにはなぜか焔がいつも練習で使う剣が置いてあった。

「ハハ、こいつはご丁寧にどうも」

 焔は目線を耳元に向け、独り言のように誰かに礼を述べると、剣を取って立ち上がった。2度ほど剣を振ると、ゆっくりとサイモンに向かって、切っ先を突きつけた。すると、サイモンもそれに呼応するように槍を肩に担ぐように構え、少しカッコつけながら、穂先を焔に向ける。

「行くぞ! トランプ野郎!」

「来い! レンジ!」

 気合を入れると、焔は真っすぐサイモンを見据え、一歩を踏み込んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...