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第1章

7、光の中で (彩奈視点)

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 「・・奈・・彩奈」

 何かふわふわした場所に自分がいる気がする。

 でも、目が開けることができない・・

 
 「彩奈、大丈夫!」

 お母さんの声が聞こえてくる。
 少しずつ視界が広がっていくと、お母さんが必死に手を伸ばしていた。

 首元の光が気になり見つめると、お誕生日にお母さんから貰った指輪が輝いていたのだ。

お母さんが何かを伝えようとしている。

 「彩奈、指輪をすぐに外しなさい。」

 その光はやがて次第に少しすつ強くなり始める中、
私はキラキラと輝いている指輪を見て喜んでしまった。

 
 「みてみて、指輪がキラキラ光ってる。」
 
 
 けれど、お母さんがネックレスにした指輪が光ることで、何かを感じたかのようだった。
彩奈は慌ててはずそうとするが、

 「えっ・・・分かったけど、外れないよ。」
 
  
 小さな手でネックレスのチェーンを外そうとするが上手く外れない。
 

 「彩奈、こっちに来なさい。・・何で外れないの」

   
     鳥の近くに行き、ネックレスを外してもらおうとするが、
それでもうんともすんとも外すことができなかった。

 
 「ママ、何か光が」


 「!」


 そうするうちに、少しずつ強くなっていきた、私たちをやがて光が
二人を包むのだった。 




 
 包んだ光はジェットコースターのように体が下へと落ちていくのを感じた。

とっさに、目を閉じるが次の瞬間に感じたのは、人の温もりであった。
まるで誰かに抱きかかえられたかのようだ。

 抱きかかえくれている人の事が気になるが、怖くて目を開けることができない。


「大丈夫だよ。怖がらないで、何もしないから・・

 君とお母さんを待っている人がいるよ。
こちらの世界には帰ってくることは多分できないと思うけど・・
もし、君たちが望むなら一つだけ願いを叶えて上げる。」

 男性のような、女性のような声の人が言うと、
さらに瞼(まぶた)を閉じても分かるほどの強い光が彩奈を照らした。

「異世界へと扉は開かれた。」
 
 体の感覚は、何かに吸い込まれていく、飲まれていくようだ。


 
 意識が戻るとお母さんの声が聞こえてくる。


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