謎多きお見合い相手は、秘めた愛を彼女に注ぐ

玖羽 望月

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時間をかけて、一通り見て回ったあと、智臣さんに候補を尋ねてみる。自分の中でこれがいいかもと考えていたものも含まれていて、それを智臣さんに伝えると、彼はこの百貨店限定の焼き菓子に決めていた。

「ありがとう、琴葉。これで里子さんを、あっと驚かせられそうだよ」

智臣さんは満足そうな顔で、嬉しそうに笑う。ただ祖母に、義理で贈物をしているわけではなさそうで、私の知らない時間を、二人が確かに積み重ねてきたのだと感じさせた。

「どういたしまして。お祖母ちゃんも、きっと喜んでくれると思います」

どんな感想を聞かせてくれるか楽しみだ。祖母に会うのは、年が明けた1月の連休。年始は来客の多い家だから、私たちの家族はいつも、それが落ち着いたころに訪問しているのだ。

「さて、と。このあとはどうする? どこか寄りたいところがあるなら付き合うよ」

何基かあるエレベーターホールには人だかりができていて、そこに並ぶ。まだ当たり前のように、智臣さんのコートの袖を掴んでいたことにハッとして、その余韻を手放すように、そっと指を離した。

「そうですね……。文房具売り場に寄ってもいいですか? 手帳のリフィルが少なくなってて」

いつでも買えるものだけど、今浮かんだのはそれくらいだ。そう混んでいないはず、と智臣さんに伝えてみた。

「いいね。行ってみよう」

興味があったのか笑顔でそう言われ、エレベーターに乗る。降りた階は、さっきの地下フロアとは打って変わって、落ち着いた雰囲気だった。
すぐに売り場は見つかり、そこへ向かう。よく見かける文房具のほか、時期的にスケジュール帳がたくさん並んでいたり、高級な筆記具が並べられていたりした。

「そういえば、琴葉のスケジュール帳、かなり使い込んでいるようだね」

智臣さんは、ショーケースを眺めながら思い出したように言う。最初に会った日、彼の目の前で取り出した手帳を覚えているようだ。

「ですね。実は初任給で、ちょっと背伸びして買ったんです。革なので、使い込むほど味がでるって聞いて」

今日もバッグに入れている、手帳を買ったときのことを思い出す。そのときは、初めて数万円するものを買うことにドキドキしていた。不相応だろうかと悩みもしたが、この手帳に負けないくらい仕事を頑張ろうと思い切った。

「確かに、良い風合いになっていると思うよ。大事にしているのがよくわかる」

もしかして、会社でも無意識に手に取っているところを見られていたのだろうか。一度見ただけとは思えない口ぶりでそう言う。

「ですね。もう、私の戦友、かもしれません」

リフィルだけ入れ替え、ずっと使い続けてきた。私の歴史が詰まっている、宝物のような存在だ。

「いいね、そういうの。僕は、あまり物にこだわりがないからなぁ」
「そうなんですか? 意外です」

智臣さんの持ち物をじっくり見たことはないが、身に付けているものはどれも、上質なもののようだ。何かこだわりのようなものがあると思っていた。

「そうか? 僕も、何か琴葉のような、こだわりのものを持ってみようかな。何がいいと思う?」

さりげなく尋ねられ、うーんと唸る。仕事で使いそうな、名刺入れや手帳をイメージするが、どこかしっくりこない。自然に歩きながら考えていると、ふとそれに目が止まった。

「……ペン、とかどうですか? 毎日、使いますよね」
「そうだな。仕事中、使わない日はないな」

スケジューリングはデジタルの人も増えているが、まだまだペンを使う機会は多い。智臣さんが普段どんなものを使っているのか知らないが、反応はよさそうだ。
売り場の端にある壁に沿ってケースが置かれ、その中には高級な万年筆から、手の届きそうな値段のボールペンまで、美しく並んでいた。

「うん。これは、なかなかにいいな」

美術品でも見るような表情で、智臣さんはそれらを眺める。私も同じように、スポットライトを浴びて光をまとった筆記具に視線を送った。
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