貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月

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3.お見合い相手はいったい誰?

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 私は揶揄われているんだろうか……。もしかしたら、このお見合い自体が盛大なドッキリ?

 急に楽しそうな表情になった主任を見て私はそんなことを思った。

 目の前のご馳走も無くなるころ、スタッフさんがデザートの飲みもののオーダーを聞きにやって来た。

「俺はホットコーヒーで。朝木は?」
「あ、アイスミルクティーで」

 と言うか……。やっぱり揶揄われてたんだ。早くも朝木呼びに戻ってしまった主任を見て私は思う。

「ああ、そうだ。次に寄りたいところがあるんだが、一緒に来てくれるか?」
「はい……。私でよければ」

 ようやく食べ終え、水の入ったグラスを持ち上げながら私は答える。

「じゃあ、悪い。ちょっと外で電話してくる。デザート、俺のぶんも食べてていいぞ?」

 そう言って主任は立ち上がり、部屋を出て行った。

 その姿が見えなくなったのを見届けると、私は「はぁぁ~……」と肩を落とすように息を吐き出した。

 怒涛の展開とは、こう言う事態を言うのだろうか。
 なんか勢い余って婚約を了承したけど、もちろん……偽装ってことでいいんだよね?なんて今更思う。でもさっき主任は、『口先だけだとすぐバレる』と言っていた。と言うことは……偽装じゃない?

 考えすぎて、頭から煙が出そうだ。ちょっと落ち着こうと、私はバッグからスマホを取り出して通知を確認した。

 ちょうど双子達からそれぞれメッセージが届いていて、私はそれを開けてみた。

 いっくんは、合宿先の海をバックにピースする写真付きで『与織姉にもお土産買って帰るからな!』と書いてある。りっちゃんからは『与織姉、元気にしてますか。今回会えなかったのは残念だけど、また顔を見せに帰って来てください』と、らしい、文面だけのメッセージだ。

 私は久しく会えていない弟達の顔を思い出しながら、少しほっこりしていた。そして、もう一人からのメッセージが目に留まった。

『何かあったらいつでも電話してこいよ』

 これが届いたのは1時間ほど前だ。

 それを見て、一言文句を言ってやろうと私は通話ボタンをタップした。

『お、与織子。どうだ見合いは。順調か?』
「いっちゃん! なんで相手が主任って教えてくれなかったのよ!」

 勢いよく返す私に、いっちゃんは予想通りと言いたげに『どうだ。驚いただろう!』と答えた。

「驚いたじゃすまないわよ! それに、思惑通りなんだろうけど、婚約することになったんだからね!」

 私がそう言うとしばらく静寂が訪れた。

「はぁぁ⁈」

 そして、耳をつんざくようないっちゃんの叫び声が聞こえてきた。

「ちょっといっちゃん! 声大きいよ! なんで驚くの?」

 てっきりいっちゃんも、とにかく婚約まで持ち込みたいのだと思っていた。けれどこの驚きよう。どうも違うらしい。

「俺はとにかく見合いさえすればいいって……。つうか、創一は? そこにいないのか?」
「ええと。主任のこと、だよね? 今はちょっと出てるよ」

 電話の向こうではこちらまで息が届きそうな大きな溜め息が聞こえてくる。でも私は、全く別のことを考えていた。

 下の名前で呼び合うほど仲良かったのか。……って、入社式のとき、みー君の様子がおかしかったのは、それを知っていたからじゃないんだろうか?

「与織子……」
「何?」
「もしかして……創一と……。付き合ってたのか?」

 落胆したような声で尋ねられ、私は「はいっ?」と変な声を上げる。

「なっ、わけないでしょう? 話し合いの結果そうなっただけで……」

 いっちゃんは詳しい話を聞いてないのだろうか。経緯を話そうか、と口を開いたとき、ドアがノックされ、デザートを乗せたワゴンと共にスタッフさんが姿を現した。

「とにかく、家に帰ってから詳しい話はするから。とりあえず落ち着いて。じゃ、デザートきたし切るね」

 私はそう言うと、電話の向こうで「おいっ! 与織子!」と慌てているいっちゃんを置いたまま電話を切った。

 説明しだしたら長くなるから、ごめんね、いっちゃん。

 心の中で謝りながら、私はお皿が置かれるのを眺めていた。

 一口サイズのデザートで春らしく彩られたお皿は、見てるだけでワクワクする。ちょうどいいや、と持っていたスマホで写真を撮ると、フォークを手にした。

 この前のアフタヌーンティーも美味しかったけど、ここのも絶品だ!なんて食べながら、この前の主任といっちゃんの会話を思い出す。

 あの時主任は、『今日は疲れただろうから家でゆっくりされていると思ったのですが、こんなところに来る体力が残っていて何よりです』なんて言っていた。
 それを思い出し、今更ながら腑に落ちた。主任はあの時、残業で疲れてるだろうからお見合いをキャンセルしたのに、私がノホホンと現れたからあんなことを言ったんだということに。

「だってしかたないじゃない。知らなかったんだもん」

 つい愚痴めいた独り言を呟く。

 知ってたら……ちゃんと行ったもん。

 そんなことを思っていると、部屋のドアが開き、それはそれは不機嫌そうな顔をして主任は入って来た。
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