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えっ! と声を上げ目を丸くしている私に、萌はニッコリ笑うと「たまには一駅くらい歩いたほうがいいかなぁって」なんて言うと私の腕を引いて歩き出した。
「戸田さんも。さっきもう少し筋力アップしようって言ってましたよね? 付き合ってください!」
戸田さんは呆れたように息を吐くと「萌は言い出したら聞かないもんね」とゆっくり歩き出した。
本当に戸田さんの言う通りで、それが萌の良い面でもあり悪い面でもある。長い付き合いで、そんなことは百も承知だ。それに萌は今、この状況を楽しんでいる。私の服装について何のツッコミもないのは、絶対に何か察しているからだと思う。
「えーと、萌? 私、結構急いでるんだよね。走ろうかなぁ……」
白々しく隣を歩く萌に言うと、萌は勢いよく私に向いた。
「ダメですよ! デートに汗だくで行ってどうするんですか!」
「あの、デートじゃない……から」
早足で歩きながらも、萌の勢いに押されて引き気味になる。
「じゃあ、合コン? 私も参加していいですか?」
食い気味の萌に「それも違う……」と仰反るように答える。
「でも、男の人と会うのは間違いないですよね?」
期待に満ちた顔を向けられ、顔が引き攣りそうになる。萌相手だと、つい感情を露わにしてしまいそうだ。
「そ、創かも知れないじゃない」
従兄弟の名前を出すと、萌は「あぁ。あのイケメン眼鏡の格好いいスポーツカーに乗った従兄弟さん」と思い出したように答えた。
「ないない。だって前、従兄弟さんが迎えに来たとき、澪さんすっぴんにジャージでしたよ?」
そういえばそんなこともあった。川村の家で夕食でもってなって、創が迎えに来たことが。確かにあのときは、時間もなくて酷い格好だったとは思う。
「まぁ、だいたい予想はできてますけどね? あとは答え合わせするだけです!」
ちょうど信号に引っかかり立ち止まると、萌は元気よく言った。助けを求めるように振り返ると、戸田さんは穏やかに笑みを浮かべた。
「ノリにノってる萌を止められるブロッカーがいたら、見てみたいよね?」
止める気は……全くないみたいだった。
よくよく考えると、このまま待ち合わせ場所に着いたら相手が一矢だとバレてしまう。別にデートじゃないし、もちろん付き合ってるわけじゃないけど、いざ合流したところで、この2人に『はい、さようなら』なんて言えるわけはない。特に萌からは、あとで何を言われるか。
どうしたらいいの⁈
頭の中をグルグルさせながら歩いていると、待ち合わせ場所が見えてきた。
さすがにもう、いるよね? と思うけど、そちらを向くことができない。萌にはどこで待ち合わせしてるかは言ってないから、ここでなんとか別れられないかなぁ、なんて思う。けれど私の願いも虚しく、萌は隣で「あっ」と小さく呟いたかと思うと、大声で手を振り始めた。
「一矢さ~ん!」
「えっ、萌⁈」
私のことなどお構いなしに、萌は走って行ってしまう。唖然としている私の横に戸田さんが来ると、その様子を面白そうに眺めていた。
「目立つよねぇ、朝木君。あれだけ男前なら相当モテるだろうね。気づいてないのかな? 周りの女の子たちが見てることに」
笑い声を漏らす戸田さんに、私は本日何度目かの溜め息を吐いた。
確かに一矢がモテるのは知っている。うちのチームにもファンがいるから。けれどそれは、女子高のノリに近い。試合で見かける他校の選手を見て、『◯◯君、格好いい!』と言っているのと変わらない。
それを言うなら、戸田さんだって人気がある。チーム内で、一矢派か戸田さん派か、なんてメンバーたちが面白おかしく話をしているのは聞いたことがある。もちろんそれも、アイドルを前にした高校生のノリだけど。
結局、このあとどうしたらいいか問題は解決しないまま、一矢と合流した。でも、一矢も同じようなことを思ったらしく、萌と戸田さんを誘ってくれた。
確かに、ここで別れるより一緒に行ったほうが萌から何も言われないで済むし、説明しなくても私たちの仲がそんなのじゃないこともわかるだろう。
私が一矢のことをどう思っているかなんて、誰にも知られたくないから。
「戸田さんも。さっきもう少し筋力アップしようって言ってましたよね? 付き合ってください!」
戸田さんは呆れたように息を吐くと「萌は言い出したら聞かないもんね」とゆっくり歩き出した。
本当に戸田さんの言う通りで、それが萌の良い面でもあり悪い面でもある。長い付き合いで、そんなことは百も承知だ。それに萌は今、この状況を楽しんでいる。私の服装について何のツッコミもないのは、絶対に何か察しているからだと思う。
「えーと、萌? 私、結構急いでるんだよね。走ろうかなぁ……」
白々しく隣を歩く萌に言うと、萌は勢いよく私に向いた。
「ダメですよ! デートに汗だくで行ってどうするんですか!」
「あの、デートじゃない……から」
早足で歩きながらも、萌の勢いに押されて引き気味になる。
「じゃあ、合コン? 私も参加していいですか?」
食い気味の萌に「それも違う……」と仰反るように答える。
「でも、男の人と会うのは間違いないですよね?」
期待に満ちた顔を向けられ、顔が引き攣りそうになる。萌相手だと、つい感情を露わにしてしまいそうだ。
「そ、創かも知れないじゃない」
従兄弟の名前を出すと、萌は「あぁ。あのイケメン眼鏡の格好いいスポーツカーに乗った従兄弟さん」と思い出したように答えた。
「ないない。だって前、従兄弟さんが迎えに来たとき、澪さんすっぴんにジャージでしたよ?」
そういえばそんなこともあった。川村の家で夕食でもってなって、創が迎えに来たことが。確かにあのときは、時間もなくて酷い格好だったとは思う。
「まぁ、だいたい予想はできてますけどね? あとは答え合わせするだけです!」
ちょうど信号に引っかかり立ち止まると、萌は元気よく言った。助けを求めるように振り返ると、戸田さんは穏やかに笑みを浮かべた。
「ノリにノってる萌を止められるブロッカーがいたら、見てみたいよね?」
止める気は……全くないみたいだった。
よくよく考えると、このまま待ち合わせ場所に着いたら相手が一矢だとバレてしまう。別にデートじゃないし、もちろん付き合ってるわけじゃないけど、いざ合流したところで、この2人に『はい、さようなら』なんて言えるわけはない。特に萌からは、あとで何を言われるか。
どうしたらいいの⁈
頭の中をグルグルさせながら歩いていると、待ち合わせ場所が見えてきた。
さすがにもう、いるよね? と思うけど、そちらを向くことができない。萌にはどこで待ち合わせしてるかは言ってないから、ここでなんとか別れられないかなぁ、なんて思う。けれど私の願いも虚しく、萌は隣で「あっ」と小さく呟いたかと思うと、大声で手を振り始めた。
「一矢さ~ん!」
「えっ、萌⁈」
私のことなどお構いなしに、萌は走って行ってしまう。唖然としている私の横に戸田さんが来ると、その様子を面白そうに眺めていた。
「目立つよねぇ、朝木君。あれだけ男前なら相当モテるだろうね。気づいてないのかな? 周りの女の子たちが見てることに」
笑い声を漏らす戸田さんに、私は本日何度目かの溜め息を吐いた。
確かに一矢がモテるのは知っている。うちのチームにもファンがいるから。けれどそれは、女子高のノリに近い。試合で見かける他校の選手を見て、『◯◯君、格好いい!』と言っているのと変わらない。
それを言うなら、戸田さんだって人気がある。チーム内で、一矢派か戸田さん派か、なんてメンバーたちが面白おかしく話をしているのは聞いたことがある。もちろんそれも、アイドルを前にした高校生のノリだけど。
結局、このあとどうしたらいいか問題は解決しないまま、一矢と合流した。でも、一矢も同じようなことを思ったらしく、萌と戸田さんを誘ってくれた。
確かに、ここで別れるより一緒に行ったほうが萌から何も言われないで済むし、説明しなくても私たちの仲がそんなのじゃないこともわかるだろう。
私が一矢のことをどう思っているかなんて、誰にも知られたくないから。
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