恋をするのに理由はいらない

玖羽 望月

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3*

「はい。ばんざ~い!」

 目の前でニッコリ笑う一矢はそんなことを言いだす。

「へっ? な、何?」
「いいから!」

 ムードなんてまるでなく、一矢は悪戯を仕掛けるみたいな顔で私のブラの下に手をかける。

「ちょっ、とっ……」
「じゃあ自分で脱ぐか?」

 たくしあげようと滑り込んだ指が、直に胸に触れる。それは、くすぐったい以外の感覚を呼んでいるようだ。

「や、ぁ、待っ……」

 布の間を指は進み、私の胸の膨らみを包み込む。

「ひゃ、やっ……」

 変な声を上げてしまった私の耳元で、一矢は楽しげに囁く。

「もう観念しろって」

 どんどんと上にずらされていくのを肌で感じ、私はおずおずと腕を上げる。一矢は私の頰にチュッとキスをすると、ゆっくりとブラを取り払っていく。対面で座らされているから、脱いだところですぐに見えはしないが、それでもやっぱり恥ずかしい。

 パサリと脱いだものが落ちる気配がすると、無意識に胸にやっていた腕が掴まれた。

「もっと、触っていい?」

 頭の上から優しく尋ねられ、俯いたまま頷く。両方の腕を退かされ、そこに一矢の大きな手が滑るのが見える。艶かしい手つきで私の胸にゆっくり触れているのを目の当たりにして、背中がゾクリとする。

「こっち、向いて……」

 私を見つめるその顔は、いつにも増してセクシーだ。見るだけで、私の中で何かが溶け出すようだった。


 体が、溶けてなくなってしまいそうだ。熱を発するたび、とろりと何かが溢れ出る。それを指が掬うと、自分の口からは声にならない声が漏れる。

「んっ……っ、あ、あぁっ……」

 何も身に纏っていない体を揺らして、私は逞しい腕に縋り付く。初めて自分以外に触れられた場所からピチャピチャと音が聞こえ、自分から滴る蜜を感じた。

「気持ち……いいか?」

 私の中に沈めた指をゆっくり動かしながら一矢は尋ねる。余裕なんかないけれど、それでも薄ら目を開け一矢を見てコクコクと頷いた。

「……よかった」

 嬉しそうに微笑み、一矢は私の顔に唇を落とす。

 もしかしたら、初めての相手に一矢も不安だったのかも知れない。けれどそれは杞憂に終わり、私は一矢の生みだす快楽に溺れていた。

「あっ! またっ……!」

 何度も訪れる小さなうねり。それに身を任せていると、そのうねりはだんだんと大きくなる。中だけじゃなく、外も擦られ、そのうねりは目の前で弾けた。

「あ、やあぁっっ、んんっ!」

 勝手に跳ねる体が落ち着くと、一矢は満足そうに、もう何度聞かされたかわからない「可愛い……」を私に寄越す。私はそれを胸を大きく上下させて恨めしげに見るだけだった。
 
「……もう……おかしく……なりそう、だよ……」

 息も絶え絶えに言うと、一矢は体勢を変え、私に覆いかぶさった。

「俺も、そうさせてくれる?」

 足の間を割り、そこに入ると一矢は私を見下ろしている。燃えるような熱い瞳。その視線に、私の肌はチリチリと焼けつきそうだ。
 ゆっくりと頷くと、一矢は体を倒し私の顔に近づいた。

挿入いれる……ぞ?」

 すでに、初めて間近で見せられた避妊具はつけられている。蜜口に、指じゃない熱いものが押し当てられると、私は身を固くした。

「そんなに緊張してたら挿入らねぇって。深呼吸しろ」

 全く余裕のない私に笑いながら一矢は言う。

「深呼吸って……」

 そんなこと言われても、この体勢はかなりキツい。

「ほら。息吸って」

 そう急かされ、私はゆっくり息を吸う。一矢は私の手に指を絡めて握りしめると「……吐いて……」と囁いた。

「ん……」

 吐くのに合わせて、私の中に押し入ってくる凄い質量。緩やかだけど、その大きさに思わず息を止めてしまう。

「止めるなって。もっと、吐いて」

 苦しげに顔を歪めて言う一矢の手をより強く握り、私は口を開けて息を吐いた。

「あ! やっ、こんな、の……」

 無理、と言いたいのに声にならない。熱い楔が打ち込まれいるみたいだ。

「いっ、たっ!」

 無意識にそう声を漏らすと、一矢はピタリと止まり私の顔を心配そうに覗き込む。

「足? 大丈夫か?」

 確かに足を持ち上げられてはいるが、痛いのはそこじゃない。
 私は思わず「ち、違うって!」と首を振った。

 一矢は一瞬驚いたように目を開いて、しばらくすると察したのか「あぁ、そっちか」と呟く。

「痛いなら……やめる?」

 言葉とは裏腹に、ものすごくシュンとした顔の一矢に、私は慌てて言う。

「だっ、大丈夫! 一瞬痛かっただけだから。今はもう痛くないし!」

 なんでこんな体勢で一生懸命言い訳してるんだろう、とお互い思ったのか、顔を見合わせて2人で笑ってしまう。そのときだった。

「えっ、ちょっと、んんーっ!」

 私が笑い声を漏らした瞬間、ここぞとばかりに一矢は奥まで押し入った。

「全部、挿入ったぞ? 痛くないか?」

 笑ったおかげで気持ちも体も緩んだのか、思ったほどは痛くない。けれど、お腹の中の圧迫感は凄い。ジンジンとした感覚が脳に伝わり、それが体中に駆け巡っている。

「う……ん……」
「それならいいが……」

 絞り出すように言う一矢のほうが苦しそうに顔を歪めている。私は空いていた片方の手で、そっとその顔を撫でた。
 
「どう……したの?」
「あのさ、澪。……初めてを俺にくれてありがとな」

 泣きだしそうな顔で一矢は私に言う。

「私こそ……。もらってくれて、ありがとう。色々と、面倒くさくてごめん……」

 一矢は表情を緩め、唇に軽く口付けする。

「それも込みで、全部可愛いからな? ……澪。愛してる」

 心も体も繋がって、ただ溢れるのは涙と……。

「私も……好き。大好き。私を好きになってくれて、ありがとう」

 一矢の首に縋りつき、私は最後に一言付け加える。

「愛してる、一矢……」

 と囁くように。

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