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昨日遊びにきた水族館の隣にあるホテル。その1階のラウンジで、私は一人溜め息を吐いていた。
やっぱり……、伯父様は違うって言ってたけど、これってお見合いなんじゃないの?
今更、ここまで来てそんなことを思い窓の外の景色を眺めた。
川村の家で渡されたのは、どう見てもお見合い写真と身上書だった。私は慌てて『お見合いなら会いません』と口にしていた。その理由を問われたら、はっきりと言えないのに。
でも伯父は『お見合い、と言うわけじゃないんだが、先方がどうしても澪に会ってみたいと言ってきてね。私の顔を立てると思って一度会ってみてくれないか?』と、私に頼んできたのだ。
日頃からお世話になっていた伯父の頼みを無碍に断ることもできず、私は仕方なく了承した。
相手は国内有数のスポーツ用品メーカーの関係者。スポーツ選手なら知らない人はいないだろうし、私もたくさん商品は持っている。それに、ソレイユでもお世話になっていた。
もしかしたら、本当に会って話をしてみたいだけ?
そんなことをあれこれ考えていると、スタッフに連れられスーツ姿の男性がやってきた。
「お待たせして、申し訳ありません」
そう言って笑みを浮かべるその人の顔を見て、私はあれ……? と思う。
『どこかでお会いしたことありましたか?』と聞きそうになり口を噤んだあと、一呼吸置いて口を開いた。
「……いえ。初めまして。枚田です」
とよそゆきの顔をして。
すぐにスタッフがオーダーを聞きにきて、私は紅茶を頼む。
「何かお召し上がりになりますか?」
目の前の人に丁寧に尋ねられ、私はかぶりを振って「先程昼食を取ったばかりなので……」と断りをいれた。
飲み物だけのオーダーを確認し、恭しく頭を下げたスタッフが席を離れると、その人は私に向いた。
「改めまして。戸田匡樹です。本日はお会いできて光栄です」
作り物のような笑顔で私に言うその人を見て、ようやく気づいた。
戸田さんに……似てる
そっくりとは言えないが、なんとなく醸し出す雰囲気は似ている。それに名前も似ている。もしかして、ご兄弟? とも思ったが、貰った身上書の家族には父母しか記載されていなかった。
私が心許なげに笑みを浮かべていると、戸田さんは表情を緩めた。
「肩の力を抜いてください。僕は枚田選手のファンの一人なんです。今回は地位を利用してしまい、申しわけありません。一度お話ししてみたかったものですから」
「そう……ですか。ありがとうございます」
これは本当の話だろうかと戸惑っている私に、戸田さんは続けた。
「実は今までも何度か試合は拝見していたんですよ? たとえば……」
そう言って語り出した内容は、過去の試合の話。自分でも印象に残っていたリーグでの話は、見る人が多いだろうオリンピックとは違い、本当に見ていないとわからない内容だった。
「──そうなんです。あのとき萌が……。あ、えっと」
口籠った私に、戸田さんは笑顔を浮かべて「松下選手、ですよね?」と助け船を出す。
「はい。あのとき萌が凄く冴えてて、少し難しいセットでも決めてくれると信じてて……」
気がつけば、私はうまく乗せられていたようだ。最初は話を聞くだけだったのに、いつの間にか今度は自分ばかり話していた。それにハッとして、私は顔を上げた。
「すみません、熱くなっちゃって」
居た堪れなくなり謝ると、戸田さんはニッコリ笑う。
「いえ。むしろ貴重なお話しが聞けて嬉しいですよ?」
「それならいいのですが……」
こんなにバレーの話をするのは久しぶりだ。私だって、嫌になって辞めたわけじゃない。長年私の一部だったバレーの話をするのは楽しかった。
「そういえば、ソレイユではうちの商品も結構使っていただいてましたが、どうでしたか? 使い心地は」
人当たりの良い笑顔で尋ねられ、少し考えてからまた話を始める。
やっぱり……本当に話をしてみたかっただけ?
最初こそ構えていた私は、いつの間にか昔から知っている人だったみたいにうち解けて、話しに花を咲かせていた。
「あぁ。もう、こんな時間か」
話が途切れたところで戸田さんは腕時計を確認する。
「まだまだお話は尽きませんね。どうです? よかったら、ドライブでもしながらもう少しお話ししませんか?」
戸田さんはそう言って微笑んだ。
やっぱり……、伯父様は違うって言ってたけど、これってお見合いなんじゃないの?
今更、ここまで来てそんなことを思い窓の外の景色を眺めた。
川村の家で渡されたのは、どう見てもお見合い写真と身上書だった。私は慌てて『お見合いなら会いません』と口にしていた。その理由を問われたら、はっきりと言えないのに。
でも伯父は『お見合い、と言うわけじゃないんだが、先方がどうしても澪に会ってみたいと言ってきてね。私の顔を立てると思って一度会ってみてくれないか?』と、私に頼んできたのだ。
日頃からお世話になっていた伯父の頼みを無碍に断ることもできず、私は仕方なく了承した。
相手は国内有数のスポーツ用品メーカーの関係者。スポーツ選手なら知らない人はいないだろうし、私もたくさん商品は持っている。それに、ソレイユでもお世話になっていた。
もしかしたら、本当に会って話をしてみたいだけ?
そんなことをあれこれ考えていると、スタッフに連れられスーツ姿の男性がやってきた。
「お待たせして、申し訳ありません」
そう言って笑みを浮かべるその人の顔を見て、私はあれ……? と思う。
『どこかでお会いしたことありましたか?』と聞きそうになり口を噤んだあと、一呼吸置いて口を開いた。
「……いえ。初めまして。枚田です」
とよそゆきの顔をして。
すぐにスタッフがオーダーを聞きにきて、私は紅茶を頼む。
「何かお召し上がりになりますか?」
目の前の人に丁寧に尋ねられ、私はかぶりを振って「先程昼食を取ったばかりなので……」と断りをいれた。
飲み物だけのオーダーを確認し、恭しく頭を下げたスタッフが席を離れると、その人は私に向いた。
「改めまして。戸田匡樹です。本日はお会いできて光栄です」
作り物のような笑顔で私に言うその人を見て、ようやく気づいた。
戸田さんに……似てる
そっくりとは言えないが、なんとなく醸し出す雰囲気は似ている。それに名前も似ている。もしかして、ご兄弟? とも思ったが、貰った身上書の家族には父母しか記載されていなかった。
私が心許なげに笑みを浮かべていると、戸田さんは表情を緩めた。
「肩の力を抜いてください。僕は枚田選手のファンの一人なんです。今回は地位を利用してしまい、申しわけありません。一度お話ししてみたかったものですから」
「そう……ですか。ありがとうございます」
これは本当の話だろうかと戸惑っている私に、戸田さんは続けた。
「実は今までも何度か試合は拝見していたんですよ? たとえば……」
そう言って語り出した内容は、過去の試合の話。自分でも印象に残っていたリーグでの話は、見る人が多いだろうオリンピックとは違い、本当に見ていないとわからない内容だった。
「──そうなんです。あのとき萌が……。あ、えっと」
口籠った私に、戸田さんは笑顔を浮かべて「松下選手、ですよね?」と助け船を出す。
「はい。あのとき萌が凄く冴えてて、少し難しいセットでも決めてくれると信じてて……」
気がつけば、私はうまく乗せられていたようだ。最初は話を聞くだけだったのに、いつの間にか今度は自分ばかり話していた。それにハッとして、私は顔を上げた。
「すみません、熱くなっちゃって」
居た堪れなくなり謝ると、戸田さんはニッコリ笑う。
「いえ。むしろ貴重なお話しが聞けて嬉しいですよ?」
「それならいいのですが……」
こんなにバレーの話をするのは久しぶりだ。私だって、嫌になって辞めたわけじゃない。長年私の一部だったバレーの話をするのは楽しかった。
「そういえば、ソレイユではうちの商品も結構使っていただいてましたが、どうでしたか? 使い心地は」
人当たりの良い笑顔で尋ねられ、少し考えてからまた話を始める。
やっぱり……本当に話をしてみたかっただけ?
最初こそ構えていた私は、いつの間にか昔から知っている人だったみたいにうち解けて、話しに花を咲かせていた。
「あぁ。もう、こんな時間か」
話が途切れたところで戸田さんは腕時計を確認する。
「まだまだお話は尽きませんね。どうです? よかったら、ドライブでもしながらもう少しお話ししませんか?」
戸田さんはそう言って微笑んだ。
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