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「じゃあ萌。見積もりできたらメールで送るから見てね」
「はーい! 待ってまーす!」
軽く返事をする萌とは玄関先で別れ、私は戸田さんと駅に向かって歩いていた。
「色々と勉強になりました。ありがとうございます」
並んで歩きながら、私は戸田さんにお礼を言った。
さっき、萌に説明するより長い時間、戸田さんはアスリート向けのメニューを提案してくれた。もちろん今までも、栄養面やバランスには気を配っていたけど、どうしても好み優先な部分もあった。
けれど戸田さんに『萌の好きなものばかりだと偏りそうだし、心を鬼にして食べさせて』なんて微笑まれると、『はい』としか返せなかった。
「さすがに今日だけじゃ足りない部分もあるし、またいつでも相談して」
相変わらず戸田さんは爽やかな笑顔を見せ私に言う。それを見て、やっぱりずっとモヤモヤしていたことを聞いてみようと決心して顔を上げた。
「あのっ、戸田さん。変なこと……聞いていいですか?」
「変な……こと? なんだい?」
戸田さんは飄々とした様子で笑みを浮かべている。戸田さんと知り合ってもう3年以上経つが、やっぱりつかみどころがなくて、いまいち何を考えているのかわからない。でも悪い人ではないし、現役時代からいつも親身になってくれた人だ。
「その……。戸田さんの片想いの相手って、もしかして……萌なんですか?」
私は恐る恐るその横顔に尋ねる。戸田さんはそれを聞いてピタリと歩みを止めると振り返って笑い声を漏らした。
「ああ。やっと気づいた?」
確率は五分五分。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。それに、例えそうだとしても、こんなにあっさり認めるなんて思っていなかった。
「──って言うことがあったのよ」
その週末金曜日。
この前の戸田さんの話を早くしたくてウズウズしていた私は、早めにうちに来た一矢とご飯を食べながら、早速その話をしたのだ。
案の定、一矢は茶碗とお箸を持ったままポカンと私を見ていた。
「戸田さんとそんな話はしてないよね?」
最近すっかり飲み友達、しかも匡樹さんとも、になったらしい一矢は、時々戸田さんに会っているのは聞いていた。けど、一矢からそんな話は聞いたことがなかった。それに、戸田さんからそんな話をするようにも思えなかった。
「するわけねぇだろ……。あの人、ひたすら俺のこと揶揄うだけで、自分のことはのらりくらり躱すし」
「なんか目に浮かぶ……」
私は乾いた笑いとともに返し、それからまた話を続けた。
「でもね。この話、これで終わりじゃないの」
私はあの日、戸田さんに尋ねたのだ。
『萌は……知ってるんですか?』
戸田さんはまた歩き出し、私はその少し後ろを着いて歩いた。そして返ってきた返事に驚いた。
『知らないけど……。萌からはずいぶん前に告白されてる。僕のこと、好きなんだって』
まるで他人事のように笑いながら戸田さんは言った。
『じゃあなんで……』
付き合わないんですか? と聞きかけて、私はその言葉を飲み込んだ。
そんなこと、気軽に言うことじゃないか……
現役選手。それもキャプテンと、チームに所属するトレーナー。それをよく思わない人だっているかも知れない。でも、戸田さんの答えは予想と全く違っていた。
『僕ってさ、思いの外独占欲強いし、嫉妬深いんだよね。一矢君にもかなり嫉妬してたよ? だから付き合うのには向かないかなって』
「はーい! 待ってまーす!」
軽く返事をする萌とは玄関先で別れ、私は戸田さんと駅に向かって歩いていた。
「色々と勉強になりました。ありがとうございます」
並んで歩きながら、私は戸田さんにお礼を言った。
さっき、萌に説明するより長い時間、戸田さんはアスリート向けのメニューを提案してくれた。もちろん今までも、栄養面やバランスには気を配っていたけど、どうしても好み優先な部分もあった。
けれど戸田さんに『萌の好きなものばかりだと偏りそうだし、心を鬼にして食べさせて』なんて微笑まれると、『はい』としか返せなかった。
「さすがに今日だけじゃ足りない部分もあるし、またいつでも相談して」
相変わらず戸田さんは爽やかな笑顔を見せ私に言う。それを見て、やっぱりずっとモヤモヤしていたことを聞いてみようと決心して顔を上げた。
「あのっ、戸田さん。変なこと……聞いていいですか?」
「変な……こと? なんだい?」
戸田さんは飄々とした様子で笑みを浮かべている。戸田さんと知り合ってもう3年以上経つが、やっぱりつかみどころがなくて、いまいち何を考えているのかわからない。でも悪い人ではないし、現役時代からいつも親身になってくれた人だ。
「その……。戸田さんの片想いの相手って、もしかして……萌なんですか?」
私は恐る恐るその横顔に尋ねる。戸田さんはそれを聞いてピタリと歩みを止めると振り返って笑い声を漏らした。
「ああ。やっと気づいた?」
確率は五分五分。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。それに、例えそうだとしても、こんなにあっさり認めるなんて思っていなかった。
「──って言うことがあったのよ」
その週末金曜日。
この前の戸田さんの話を早くしたくてウズウズしていた私は、早めにうちに来た一矢とご飯を食べながら、早速その話をしたのだ。
案の定、一矢は茶碗とお箸を持ったままポカンと私を見ていた。
「戸田さんとそんな話はしてないよね?」
最近すっかり飲み友達、しかも匡樹さんとも、になったらしい一矢は、時々戸田さんに会っているのは聞いていた。けど、一矢からそんな話は聞いたことがなかった。それに、戸田さんからそんな話をするようにも思えなかった。
「するわけねぇだろ……。あの人、ひたすら俺のこと揶揄うだけで、自分のことはのらりくらり躱すし」
「なんか目に浮かぶ……」
私は乾いた笑いとともに返し、それからまた話を続けた。
「でもね。この話、これで終わりじゃないの」
私はあの日、戸田さんに尋ねたのだ。
『萌は……知ってるんですか?』
戸田さんはまた歩き出し、私はその少し後ろを着いて歩いた。そして返ってきた返事に驚いた。
『知らないけど……。萌からはずいぶん前に告白されてる。僕のこと、好きなんだって』
まるで他人事のように笑いながら戸田さんは言った。
『じゃあなんで……』
付き合わないんですか? と聞きかけて、私はその言葉を飲み込んだ。
そんなこと、気軽に言うことじゃないか……
現役選手。それもキャプテンと、チームに所属するトレーナー。それをよく思わない人だっているかも知れない。でも、戸田さんの答えは予想と全く違っていた。
『僕ってさ、思いの外独占欲強いし、嫉妬深いんだよね。一矢君にもかなり嫉妬してたよ? だから付き合うのには向かないかなって』
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