恋をするのに理由はいらない

玖羽 望月

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「あっ、あの。萌……その……」

 なんとなく聞きづらいのか、澪は全く本題に入れない。あたふたしていたかと思うと、急に思い出したように自分のバッグを探り招待状を取り出した。

「これ! 結婚式の招待状! 無理に、とは言えないけど、2人には是非来てもらいたくて」

 そう言いながら差し出した招待状を、2人はそれぞれ笑顔で受け取った。

「行きますよぉ! 絶対! ねっ? 直樹くん!」
「そうだね。萌ちゃん」

 様子を伺いつつビールを口に含んだ瞬間に2人がそんなことを言いだすもんだから、俺は思い切り咽せてしまった。

「直樹君に萌ちゃんだと⁈」

 なんなんだ、その呼び方は! と2人を見ると、萌はキョトンとしていて、戸田さんはニヤニヤしていた。

「一矢君が萌って呼ぶから、僕は萌ちゃんって呼ぼうかなって」
「いや、その前に言うことあるでしょ……」

 俺が呆れ果てている横で、澪もうんうんと大きく頷いていた。

「あれ? 直樹くんから聞いてない?」
「聞いてねえから驚いてんだろ!」

 思わず突っ込むと、萌は頭を掻きモジモジしながら照れ始めた。

「実は……。ようやく直樹くんが陥落しまして。晴れて付き合い始めました!」
「まぁ……。激しい攻撃に絆されて、押し倒されたってだけだけどね」

 ニコニコしたまま萌に言う戸田さんに、この人、何言ってんだ? と唖然としていると、澪が先に我に返っていた。

「お……めでとう、萌。片思い、実ったんだね」
「ありがとうございます! 苦節数年。努力の甲斐がありました!」

 前向きすぎて眩しいくらいの明るい表情で萌は返す。それを眺める戸田さんは、見たことないくらい甘い顔をしていた。

「よかったですね。戸田さん。これでもかって鼻を伸ばせる相手ができて」

 今まで散々揶揄われたお返しとばかりにそう言うと、戸田さんはこっちを向いて満面の笑みを浮かべた。

「だろう? いいんだよ? 一矢君もデレた顔見せてくれて」

 全く堪えることなく返され、結局俺が顰めっ面を返して終わった。
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