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never ending
1
「でね。これをミキサーにかけちゃうの。簡単でしょ?」
キッチンに立った私は、さっき用意した材料を小型のミキサーに放り込みながら説明した。
「ですね! これなら私にもできそう!」
私の隣で一生懸命メモを取っていた与織子ちゃんは、頷きながら声を上げていた。
結婚するまで創のご飯を作っていた私は、さすがに2人が結婚してからはお役御免と思っていた。でも仕事の忙しさでクタクタで、家事に手が回らなかった与織子ちゃんのために、2人が結婚後もしばらくご飯を作っていた。
それも落ち着いたころ、いよいよ与織子ちゃんにバトンタッチしたわけだけど、『一生澪さんのご飯食べたかったです』としょげる彼女を『いくらでも教えるから』となんとか宥めたのだった。
「どうだ?」
キッチンに様子を見に来たのは創だ。その腕には3歳の女児が収まっていた。
「あ、創ちゃん。大丈夫そうだよ? 任せて!」
「そうか。頼もしいな」
私から見れば、可愛い奥様に鼻の下を伸ばしてデレデレの創は、与織子ちゃんに微笑んだ。
「ところで、なんで優は創に抱っこされてるの?」
私が洗った手を拭きながら振り返り尋ねると、優は創の首に余計にしがみついた。
「優は創ちゃんが大好きだからいいの!」
いったい誰に似たのやら……
私はニコニコとしている自分の娘を見て溜め息を吐いた。
どちらかと言えば顔は一矢似の娘はいつのまにか創大好きっ子に育ち、一矢はいつもそれを複雑な表情で見ているのだ。
向こう側からタタタっと軽い足音が聞こえると、こちらは創の足元に駆け寄った。
「創一! 優を離せ! 優は僕のだぞ!」
勢いよく握り拳で足を叩く3歳男児の姿に、創はほとほと困り果てているようだ。
「凌! 人を叩くのはよくないわよ?」
渋々手を下ろすと、凌は「だって……」なんて口にする。
顔は私に似ているけど、わんぱくぶりは一矢の幼い頃にソックリだと義理の両親にお墨付きをもらった息子は、あからさまにシュンとしていた。
「だってじゃありません! 優もいい加減に降りなさい。もうすぐご飯の用意始めるわよ?」
私の号令に、2人は声を合わせて「はぁい」と返事をする。
こう言うとき、双子は息がぴったりだ。
にわかに騒がしくなったキッチンに、最後の1人、いや2人が現れる。
「創一。お前、自分の子ほったらかしにすんな。起きたぞ?」
一矢の腕に抱えられているのは、創と与織子ちゃんの息子、未来君。生後5ヶ月の可愛い盛りの甥っ子は、全く危なげなく一矢の腕に収まっていた。
「一矢がいるから大丈夫だと」
「そうそう! いっちゃん、子育て歴長いから!」
創と与織子ちゃんは口々にそう言った。
「当たり前だろ。与織子と逸希と理久のオムツ換えも、風呂に入れるのだってしてたしな」
与織子ちゃんの言う通り、一矢は本当に子育て慣れしていた。
思いがけず生まれた双子の育児にあたふたしていたのは私で、一矢はいつも余裕で助けてくれていた。だからこそ乗り切れたんだと思う。
「みんな、お皿とご飯運んで? 優と凌は自分のを運んでね」
双子たちにそれぞれ専用の割れない食器を渡すと、嬉しそうに走って行く。
「創も、未来君は一矢に任せて手伝って」
用意していた取り皿やお箸、おかずの一部をトレーに乗せると、有無を言わさず創に渡す。
「私もこれ運びます」
まだ残ったおかずを与織子ちゃんが持つと2人はキッチンをあとにした。
「俺もなんか運ぼうか?」
未来君を抱っこしたまま一矢は私の元にやってくる。まだ眠そうな顔で抱かれた甥っ子は、私たちの顔を見上げていた。
「可愛いな。やっぱり」
伯父というより、もう孫を見るおじいちゃんみたいな顔で一矢は言う。
「一矢って、本当に子どもが好きだよね」
「まぁな」
意外ではなかったけど、一矢は想像以上に子どもたちを可愛がってくれるいいお父さんだと思う。
「これなら、もう一人増えても安心だな」
未来君の顔を覗き込み笑いながらそう口にすると、一矢は一瞬間を置いてから顔を上げた。
「……って、マジ?」
「うん。マジ」
私の答えにみるみる顔を緩めると、照れたように顔を逸らした。
「やべ……。むちゃくちゃ嬉しいんだけど……」
本当に可愛いんだから……
バレーしか知らなかった私に、たくさんの違う世界を、新しい世界を見せてくれた人。
私は何度でもこの人に恋をするだろう。
だって、恋をするのに理由はいらないのだから。
Fin
キッチンに立った私は、さっき用意した材料を小型のミキサーに放り込みながら説明した。
「ですね! これなら私にもできそう!」
私の隣で一生懸命メモを取っていた与織子ちゃんは、頷きながら声を上げていた。
結婚するまで創のご飯を作っていた私は、さすがに2人が結婚してからはお役御免と思っていた。でも仕事の忙しさでクタクタで、家事に手が回らなかった与織子ちゃんのために、2人が結婚後もしばらくご飯を作っていた。
それも落ち着いたころ、いよいよ与織子ちゃんにバトンタッチしたわけだけど、『一生澪さんのご飯食べたかったです』としょげる彼女を『いくらでも教えるから』となんとか宥めたのだった。
「どうだ?」
キッチンに様子を見に来たのは創だ。その腕には3歳の女児が収まっていた。
「あ、創ちゃん。大丈夫そうだよ? 任せて!」
「そうか。頼もしいな」
私から見れば、可愛い奥様に鼻の下を伸ばしてデレデレの創は、与織子ちゃんに微笑んだ。
「ところで、なんで優は創に抱っこされてるの?」
私が洗った手を拭きながら振り返り尋ねると、優は創の首に余計にしがみついた。
「優は創ちゃんが大好きだからいいの!」
いったい誰に似たのやら……
私はニコニコとしている自分の娘を見て溜め息を吐いた。
どちらかと言えば顔は一矢似の娘はいつのまにか創大好きっ子に育ち、一矢はいつもそれを複雑な表情で見ているのだ。
向こう側からタタタっと軽い足音が聞こえると、こちらは創の足元に駆け寄った。
「創一! 優を離せ! 優は僕のだぞ!」
勢いよく握り拳で足を叩く3歳男児の姿に、創はほとほと困り果てているようだ。
「凌! 人を叩くのはよくないわよ?」
渋々手を下ろすと、凌は「だって……」なんて口にする。
顔は私に似ているけど、わんぱくぶりは一矢の幼い頃にソックリだと義理の両親にお墨付きをもらった息子は、あからさまにシュンとしていた。
「だってじゃありません! 優もいい加減に降りなさい。もうすぐご飯の用意始めるわよ?」
私の号令に、2人は声を合わせて「はぁい」と返事をする。
こう言うとき、双子は息がぴったりだ。
にわかに騒がしくなったキッチンに、最後の1人、いや2人が現れる。
「創一。お前、自分の子ほったらかしにすんな。起きたぞ?」
一矢の腕に抱えられているのは、創と与織子ちゃんの息子、未来君。生後5ヶ月の可愛い盛りの甥っ子は、全く危なげなく一矢の腕に収まっていた。
「一矢がいるから大丈夫だと」
「そうそう! いっちゃん、子育て歴長いから!」
創と与織子ちゃんは口々にそう言った。
「当たり前だろ。与織子と逸希と理久のオムツ換えも、風呂に入れるのだってしてたしな」
与織子ちゃんの言う通り、一矢は本当に子育て慣れしていた。
思いがけず生まれた双子の育児にあたふたしていたのは私で、一矢はいつも余裕で助けてくれていた。だからこそ乗り切れたんだと思う。
「みんな、お皿とご飯運んで? 優と凌は自分のを運んでね」
双子たちにそれぞれ専用の割れない食器を渡すと、嬉しそうに走って行く。
「創も、未来君は一矢に任せて手伝って」
用意していた取り皿やお箸、おかずの一部をトレーに乗せると、有無を言わさず創に渡す。
「私もこれ運びます」
まだ残ったおかずを与織子ちゃんが持つと2人はキッチンをあとにした。
「俺もなんか運ぼうか?」
未来君を抱っこしたまま一矢は私の元にやってくる。まだ眠そうな顔で抱かれた甥っ子は、私たちの顔を見上げていた。
「可愛いな。やっぱり」
伯父というより、もう孫を見るおじいちゃんみたいな顔で一矢は言う。
「一矢って、本当に子どもが好きだよね」
「まぁな」
意外ではなかったけど、一矢は想像以上に子どもたちを可愛がってくれるいいお父さんだと思う。
「これなら、もう一人増えても安心だな」
未来君の顔を覗き込み笑いながらそう口にすると、一矢は一瞬間を置いてから顔を上げた。
「……って、マジ?」
「うん。マジ」
私の答えにみるみる顔を緩めると、照れたように顔を逸らした。
「やべ……。むちゃくちゃ嬉しいんだけど……」
本当に可愛いんだから……
バレーしか知らなかった私に、たくさんの違う世界を、新しい世界を見せてくれた人。
私は何度でもこの人に恋をするだろう。
だって、恋をするのに理由はいらないのだから。
Fin
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