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1.お見合い話は突然に
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「あ、あの。倉木さん? おっしゃりたいことがあるなら……」
そこでタイミング悪く次の料理が運ばれてくる。タイミングは悪いが、料理はなにも悪くない。
サーブされた皿は牛フィレ肉のポワレ。そこにトリュフまで乗っている。
「うわぁぁ……」
皿を覗き込んだ私の口からは、勝手に感嘆の溜め息が漏れる。
皿の横に置かれたワイングラスには、やってきたソムリエが仰々しく赤ワインを注いでいた。やっぱり倉木さんのは私のグラスの半分ほどの量だ。そういえば最初のころ倉木さんはスタッフに耳打ちしていた。量の調整をお願いしたのかも知れない。
最後にそのワインの名前を告げられ、私は「えっ!」と顔を上げる。
「千春さん、ご存じなんですか?」
「だって、5大シャトーですよ⁈」
超有名ワインの名前くらい知っている。そしてとても高級なことも。
「こちらはセカンドラベルです。とても芳醇な香りと軽い飲み口をお楽しみいただけると思います」
ダンディなソムリエはにっこりと微笑んだ。セカンドラベル……でも、私にはなかなか手の届かないお値段のはずだ。
「千春さん。冷めないうちに召し上がってください」
まだ呆然としていた私に倉木さんは言った。
「あ……。いただきます」
写真を撮ることも忘れその柔らかいお肉を頬張る。幸福感が口の中から染み出してきそうだ。
「ん~~!」
言葉にならない言葉を発してからワインを口に含む。
「最高……」
うっとりしながらそう言うと、ものすごく目尻を下げた倉木さんと目が合った。
穴があったら入りたいってやつだ、これ……
居た堪れなくなりながら、私は口に入ったものを飲み下す。
この恥ずかしい姿の私を見て、倉木さんは今日一番の笑顔を見せた。
「千春さんは、本当に美味しそうに食べますね」
「その……。申し訳ありません。一人はしゃいでしまいまして」
仕事中を思い出し、自分を作りながら姿勢を正す。そんな私に、倉木さんは表情を崩したままだ。
「謝らないで。もっと見せて欲しいです。千春さんの……本当の姿を」
トロンとした目のイケメンにこんなことを言われてドキドキしないわけがない。
「見せてます。すでにいっぱい。それより倉木さんも食べてください」
あたふたしながら言うと、倉木さんはフフッと笑う。
「そうだね。そうしよう」
そう言って、ようやく皿を向いてカトラリーを手にした。
やばい……。相手が断ってこないだろうって言うのは本当だ。でも、これから何回か会ったうえで、私は断れるんだろうか?
小さく溜め息を吐いてまたお肉にナイフを入れる。
イケメンでスパダリ。そしてなんとなくギャップあり。
なんでこんな、私の好みにドストライクな人とお見合いさせるのよ! 恨むわよ? 夏帆!
心の中で悪態をつきながら、私はまた美味しいお肉を頬張った。
そこでタイミング悪く次の料理が運ばれてくる。タイミングは悪いが、料理はなにも悪くない。
サーブされた皿は牛フィレ肉のポワレ。そこにトリュフまで乗っている。
「うわぁぁ……」
皿を覗き込んだ私の口からは、勝手に感嘆の溜め息が漏れる。
皿の横に置かれたワイングラスには、やってきたソムリエが仰々しく赤ワインを注いでいた。やっぱり倉木さんのは私のグラスの半分ほどの量だ。そういえば最初のころ倉木さんはスタッフに耳打ちしていた。量の調整をお願いしたのかも知れない。
最後にそのワインの名前を告げられ、私は「えっ!」と顔を上げる。
「千春さん、ご存じなんですか?」
「だって、5大シャトーですよ⁈」
超有名ワインの名前くらい知っている。そしてとても高級なことも。
「こちらはセカンドラベルです。とても芳醇な香りと軽い飲み口をお楽しみいただけると思います」
ダンディなソムリエはにっこりと微笑んだ。セカンドラベル……でも、私にはなかなか手の届かないお値段のはずだ。
「千春さん。冷めないうちに召し上がってください」
まだ呆然としていた私に倉木さんは言った。
「あ……。いただきます」
写真を撮ることも忘れその柔らかいお肉を頬張る。幸福感が口の中から染み出してきそうだ。
「ん~~!」
言葉にならない言葉を発してからワインを口に含む。
「最高……」
うっとりしながらそう言うと、ものすごく目尻を下げた倉木さんと目が合った。
穴があったら入りたいってやつだ、これ……
居た堪れなくなりながら、私は口に入ったものを飲み下す。
この恥ずかしい姿の私を見て、倉木さんは今日一番の笑顔を見せた。
「千春さんは、本当に美味しそうに食べますね」
「その……。申し訳ありません。一人はしゃいでしまいまして」
仕事中を思い出し、自分を作りながら姿勢を正す。そんな私に、倉木さんは表情を崩したままだ。
「謝らないで。もっと見せて欲しいです。千春さんの……本当の姿を」
トロンとした目のイケメンにこんなことを言われてドキドキしないわけがない。
「見せてます。すでにいっぱい。それより倉木さんも食べてください」
あたふたしながら言うと、倉木さんはフフッと笑う。
「そうだね。そうしよう」
そう言って、ようやく皿を向いてカトラリーを手にした。
やばい……。相手が断ってこないだろうって言うのは本当だ。でも、これから何回か会ったうえで、私は断れるんだろうか?
小さく溜め息を吐いてまたお肉にナイフを入れる。
イケメンでスパダリ。そしてなんとなくギャップあり。
なんでこんな、私の好みにドストライクな人とお見合いさせるのよ! 恨むわよ? 夏帆!
心の中で悪態をつきながら、私はまた美味しいお肉を頬張った。
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