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第六話 請求
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「なんの用事でいらしたのかと聞いているんです!」
冗談はいらない、と念を込めて問いただす。
「こいつを渡しに来たのだ」
カティサークさんが寄越した紙は、洋服店シュマールで誂えた服の請求書だった。
そういえば代金を払っていないし、請求書を受け取った記憶もない。
だからと言って、一週間もかけてわざわざ請求書を持参するだろうか。
しかも、よりにもよってこの男が。
不安を覚えながら請求書を一瞥する。
「嘘でしょ!?」
思わず大声が出た。
目が飛び出るような金額が記されていた。
「嘘な訳あるか。フルオーダーで生地も最高級だ。その程度の値段は当然する」
「あなた言いましたよね! 庶民的な吊るしの服と、値段は大して違わないと!」
「そうだったかな?」
「言いました! 確実に!」
「あるいはそうかも知れんが記憶にない。糖分が足りていなかったのだろう。マダム、チェリーパイのお代わりを頂こう」
ジャムをたっぷり塗ったスコーンを鱈腹平らげていた男が何を言っているのだろう。
イラ立つ私そっちのけで、母さんはいそいそとチェリーパイを切り分ける。
それを飄々と食べる男の姿に目眩がする。
「で、代金は用意出来るのかな?」
「……出来ません」
「どうするつもりだ?」
「オーダーメイドですから、今からキャンセルは出来ないでしょう。なら、借金をしてでも払うしかありません」
「アテはあるのか?」
「……いいえ」
にやり、と笑う男の表情でようやく全てを察する。
白蟻カティサーク。
甘い砂糖を決して逃さない狡猾な金貸し。
彼の狙いは初めからこれだったのだ。
支払い能力を超えた高額な商品を売りつけて、法外な金利で金を貸し付ける。
古典的なやり口に私はまんまと引っかかったのだ。
「利子をお聞かせ願えますか」
努めて冷徹に問うと、カティサークは心底嬉しそうに笑う。
「素晴らしい察しの速さだ! これほど完璧に美貌と頭脳を兼ね備えた女、王国広しと言えど二人といまい!」
「利子をお聞かせ願えますか!」
今度は怒りを込めて、もう一度。
するとカティサークは急に真面目な顔で言う。
「無利子だ。条件付きでな」
やっぱり、そういうことだ。
この男の言う条件、そんなの分かりきっている。
つまりそれは、
「ウチで働け、カトレア・アップルフィールド。お前は余人を持って代えがたい」
そういうことだ。
そしてどうやら、私に選択権はない。
だから返事は自ずと決まる。
「あなたの執念には恐れ入りました。いいでしょう、あなたの元で働きます」
「良かろう。これからよろしく頼む。ところでカトレアよ、一つ重要な事項を確認したいのだが」
「なんですか?」
「君はこのチェリーパイのレシピを知っているか? これは王国に二つとない絶品だぞ」
私の上司となった白蟻は、パイを貪りながらそう言った。
冗談はいらない、と念を込めて問いただす。
「こいつを渡しに来たのだ」
カティサークさんが寄越した紙は、洋服店シュマールで誂えた服の請求書だった。
そういえば代金を払っていないし、請求書を受け取った記憶もない。
だからと言って、一週間もかけてわざわざ請求書を持参するだろうか。
しかも、よりにもよってこの男が。
不安を覚えながら請求書を一瞥する。
「嘘でしょ!?」
思わず大声が出た。
目が飛び出るような金額が記されていた。
「嘘な訳あるか。フルオーダーで生地も最高級だ。その程度の値段は当然する」
「あなた言いましたよね! 庶民的な吊るしの服と、値段は大して違わないと!」
「そうだったかな?」
「言いました! 確実に!」
「あるいはそうかも知れんが記憶にない。糖分が足りていなかったのだろう。マダム、チェリーパイのお代わりを頂こう」
ジャムをたっぷり塗ったスコーンを鱈腹平らげていた男が何を言っているのだろう。
イラ立つ私そっちのけで、母さんはいそいそとチェリーパイを切り分ける。
それを飄々と食べる男の姿に目眩がする。
「で、代金は用意出来るのかな?」
「……出来ません」
「どうするつもりだ?」
「オーダーメイドですから、今からキャンセルは出来ないでしょう。なら、借金をしてでも払うしかありません」
「アテはあるのか?」
「……いいえ」
にやり、と笑う男の表情でようやく全てを察する。
白蟻カティサーク。
甘い砂糖を決して逃さない狡猾な金貸し。
彼の狙いは初めからこれだったのだ。
支払い能力を超えた高額な商品を売りつけて、法外な金利で金を貸し付ける。
古典的なやり口に私はまんまと引っかかったのだ。
「利子をお聞かせ願えますか」
努めて冷徹に問うと、カティサークは心底嬉しそうに笑う。
「素晴らしい察しの速さだ! これほど完璧に美貌と頭脳を兼ね備えた女、王国広しと言えど二人といまい!」
「利子をお聞かせ願えますか!」
今度は怒りを込めて、もう一度。
するとカティサークは急に真面目な顔で言う。
「無利子だ。条件付きでな」
やっぱり、そういうことだ。
この男の言う条件、そんなの分かりきっている。
つまりそれは、
「ウチで働け、カトレア・アップルフィールド。お前は余人を持って代えがたい」
そういうことだ。
そしてどうやら、私に選択権はない。
だから返事は自ずと決まる。
「あなたの執念には恐れ入りました。いいでしょう、あなたの元で働きます」
「良かろう。これからよろしく頼む。ところでカトレアよ、一つ重要な事項を確認したいのだが」
「なんですか?」
「君はこのチェリーパイのレシピを知っているか? これは王国に二つとない絶品だぞ」
私の上司となった白蟻は、パイを貪りながらそう言った。
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