婚約破棄男の不倫相手が浪費家だったようで泣きつかれています。

羽音やすみ

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第十二話 サンドラの憂鬱Ⅱ

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私が惨めな生活を送っていた頃、社交界はある華々しいニュースに湧いていた。
名家シューペリア家の当主アルファードが、庶民のカトレアと婚約したというニュースだ。

第一王子ラフロイグ様が大いに祝福したとあって、社交界は祝福ムード一色だった。
心底胸糞が悪かった。
私の名誉を傷つけた女が、何をのうのうと幸せになろうとしているのか。

私は辺境伯令嬢の立場を利用して、社交界をとことん調べ上げた。
すると面白い情報がゴロゴロ出てくる。
社交界は決して一枚岩ではない。
庶民出身、しかも赤毛のカトレアを激しく嫌悪する一派が、確かに存在していたのだ。

私は反カトレア派に取り入ることに成功した。
そして彼らに持ちかけた。
カトレアに横領の冤罪を着せ、社交界から永久に追放することを。
彼らは簡単に合意した。
残る問題は、シューペリア家の帳簿だった。

カトレアによって正確に管理されているだろう帳簿は、最高の証拠能力を有する。
私がどんな小細工を弄したとして、帳簿がある限り彼女に冤罪を着せることは難しい。

そこで考えた。
そんなにも優れた帳簿ならば、もしそれを書き換えることが出来たなら。
もし、その帳簿自体がカトレアの横領を示す証拠になったとしたら。

それがいかに難しいかはよく分かっていた。
けれど私はすぐに動き始めた。
膨大な借金と憎しみが背中を押したのだ。

私はある情報を掴んだ。
アルファードとカトレアが不仲である、という情報だった。
まさに渡りに船としか言いようのない情報に飛びついた。

ある日の舞踏会で、私はアルファードに接近した。
婚約者と不仲な、若い男性だ。酒も入っている。
目の前に釣り針を垂らしてやればすぐに食いつく。

それからは簡単だった。
アルファードは私に夢中になった。
明け方、ベッドの上で彼は良くカトレアの愚痴を漏らした。
彼女は完璧すぎる、私の立つ瀬がない、と。

アルファードは日に日に私にのめり込む。
投資に成功し、社交界から尊敬を集めるカトレアが、プライドの高い彼には目障りだったのだ。
私は意を決してアルファードにカトレアの追放を持ちかけた。

彼は矢継ぎ早に質問を繰り出した。
その全てが、自分の保身に関わることだった。
仮に計画が失敗しても、自分には一切の非が生じないよう計らうのなら、手を貸さないこともない、などと抜かしてみせたのだ。

顔面に痰を吐きかけてやりたい気分だったが、カトレアへの復讐のため我慢した。
こうしてアルファードと結託した私は、帳簿を書き換え、偽造請求書を作成することに成功した。

カトレアは賭博狂いの横領犯ということにしてやった。
私が受けた苦しみをそっくりそのまま返してやろうという意趣だ。
我ながら、気が利いている。

計画は全てうまくいった。
カトレアは横領犯として社交界から追放され、私はアルファードの婚約者となった。

私は今や敗者などではない。美酒を嗜む勝者なのだ。
ああ、ワインとはこんなにも美味しかったものだろうか。
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