Real Nightmare

赤木 水月

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第47夜

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「白羽……っ」



部屋から出て行く間際に見せた、白羽の表情が頭から離れない……

傷付けるつもりはなかった。
あんな顔をさせるつもりはなかった。

失望させた……
利己的な考えが嘘をつかせたのである

誰よりも守りたい特別な存在を傷付けて、人のココロを分かった気になっていたなんて……

「くそ…っ……」

思い上がりも甚だしい。

「何だ、喧嘩したのかぁ?」

その場にそぐわない間延びした声に、陽斗は顔を上げる

「っ…貴様!リュウト!」

先程、追い出した筈のリュートが図々しくもソファーへと座っていた

「何だよ、怒るなよ」
「こんな事になったのも誰のせいだと思っているっ!」

怒りのあまり陽斗は胸ぐらを掴み上げる。
この男が白羽に余計な事を吹き込まなければ、こんな事態になっていない

白羽にだけは悪魔である事を知られたくなかった

「誰のせいだって?」

剣幕で責め立てて来る、陽斗にリュウトは鼻で笑う

「全部、お前自身のせいだろ?遅かれ早かれ、どのみちバレる嘘だ」
「だが、お前が言う事じゃないっ!俺から言うべき事だろうっ!」
「嘘の上塗りをした奴がか?」
「っ……」

そう。本音は、正体を言うつもりはなかった

だから、嘘の上塗りをした

魂を喰らう悪魔であるとバレたら、傍にいる事は叶わない

繋がりは断ち切られる
親友ではいられなくなる
怖かったのだ……

「もう、いい加減諦めたらどうだ?」
「………黙れ!」
「俺は以前にも言った筈だ。お前が、どう人間のフリをしようとも人間になれない」
「黙れっ!黙れっ!黙れっ!黙れっ!!!」

白羽は陽斗にとって、なくてはならない存在だ
簡単に諦められるくらいなら、リスクを犯してまで命を庇っていない

唯一無二の存在……

「悪魔の力を失い、魂を喰らえず空腹の癖にか?」
「俺はアイツを失うくらいなら、空腹なんて堪えられんだよ!」

悪魔の力を失った陽斗は、人間の魂を喰らう術を無くしていた……

その為、人間の食物を過度に摂っていたのだが……人間の食物では気休めでしかない。

常に空腹が付きまとう
その飢餓感は、生半可ではなかった

「はっ!お前の執着心は異常だな……」

糧である1人の人間に、ここまで妄信的になる陽斗が理解出来ない

何故、学習しないのか。
何故、分からないのか。
悪魔として愚か過ぎる…

「お前に何と言われても、痛くも痒くもない。俺に構うな!」
「……何処に行く?」
「決まっている!白羽を追う」
「……おまえ…っ!」

また、白羽を生かす為に運命をねじ曲げるのか。
己のエゴの為に……

「罪なら何度だって背負ってやる」
「お前の行動が、白羽を更に苦しめる事になってもかっ!」
「っ………」

白羽を更に苦しめる。
その言葉に陽斗の足を止めた

「死すべき人間を助ける事は、周りにも当人にも大きな影響を与える」
「………」
「また白羽の命を救ったとして、自分の変わりに他の人間が死んだとしたらアイツはどう思う?」
「っ……」

確かに白羽は自分の命が助かれば、他人の命はどうでも良いと思う身勝手な人間ではない

胸を痛める事だろう……

「アノ事故の事を白羽に話したら、気に病んでいた。だからお前が、これ以上アイツらの命のやりとりに手を出すべきじゃない!」
「………」

命のやりとりの原因を作ったのは、紛れもなく自分だ

ただ助けたい。救いたい。という純粋な気持ちだった筈なのに……

大事な存在に悲劇を与えてしまった

だから、これ以上……
白羽を苦しめるべきじゃないという、リュウトの言い分は分からなくはない

だが……

「俺は…っ!アイツを1人で死なせたくないんだよっ!」

救う事が。護る事が。
白羽を苦しめるというのならば、せめて共に……

「お、おいっ!クロウ!」

呼び止めるリュウトを振り切り、陽斗はマンションから飛び出した





「お前は……そこまで白羽が大事なんだな……」





1人残されたリュートは、溜め息と共に呟く

悪魔は基本、不死ではあるものの……力を失ってる陽斗は人間と同様である

簡単に傷がつき
簡単に死ぬのだ

ただし人間の魂……白羽の魂を喰らう事が出来れば話は別だが。

「お前は本当に愚かだ。アイツらの殺し合いを、ただ傍観してれば良いものを……」

それが最も、悪魔らしい在り方だ。

人間に肩入れし過ぎると、ロクな事にならないのだから。
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