1 / 19
ープロローグー
プロローグ
しおりを挟む
『あら、歩実ちゃん!お買い物の帰り?』
『流果さん!こんにちは!はい!あ!三田屋さん行きました?今日、特売ですよ!』
『あら本当!?あとで行かなきゃ!凛ちゃん良かったねぇ!って言うことは、今日は、ハンバーグかな?』
『うん!今日は、ハンバーグなんだ!僕も一緒に作るんだよ!』
『まぁ、凄いわねぇ!美味しいの出来ると良いね!』
『うん!』
『あ!そうそう!凛ちゃん、私立おめでとう!』
『ありがとうございます!』
『小学校受験とは言えど大変だったでしょう。偉いわ、凛ちゃんも歩実ちゃんも。うちの二浪息子にも見習って欲しいわ。』
『そんな…。丈くんだって医学部志望じゃないですか。それこそ大変ですよ。』
『まあね…。でも、ただ頭が堅いのよ。医学部なんていっぱいあるんだから、もっと別の所も受ければ良いのに東大にしか行かないとか言うの。予備校だって、タダじゃないって分かってないのかしらね。まったく!』
『まぁまぁ。あと十年、十五年もしたら何倍にして返してくれますよ。』
『だと良いけどね…。あ!そろそろ行かなきゃ!じゃあね!またね!歩実ちゃん!凛ちゃんもバイバイ!』
『はい、また!』
『バイバーイ!またね!』
結婚して三年。端からしたら、まだまだ新婚冷めやらぬ幸せな家庭に見えるだろう。一人息子の凛太郎は、この春から私立の小学校に上がる。零児さんの協力もあって大変だった"お受験"もなんとか乗り越えた。凛太郎は、今年六歳になる。そう、凛太郎と零児さんには血の繋がりが無い。それでも、零児さんは本当の息子の様に誰よりも愛を注いでくれている。だから、未婚のシングルマザーだった私は、零児さんとの結婚に踏み切れたのだろう。
『お父さん!おかえりー!』
『おぉ!凛太郎!ただいま!』
『お帰りなさい。今日も一日、ご苦労様です。』
『ただいま、歩実。お!今日は、ハンバーグかぁ!』
『このハンバーグ、僕が作ったんだよ!』
『えぇ!本当かぁ!凄いじゃんか!凛太郎!』
『早く食べて!食べて!』
『ちょ、ちょっと待てよ…。』
『零児さん、カバン。』
『あ、ありがとう。よーし…!』
『どう?』
『うん!美味い!』
『ホント!?』
『ああ!めちゃくちゃ美味いよ!凛太郎!さすがは俺の息子だな!』
『良かったぁ!また作ってあげるね!』
零児さんと出会ったのは、実は、いわゆる合コンだ。私の唯一の親友、みなみの強引な誘いで参加した一流商社マンとの四対四の合コン。私は、人見知りで正直、合コンなんて恐怖でしかなかった。ましてや当時は、十九歳のシングルマザー。同い年四人で参加なんかしたら、ただの晒し者にしかならないと思っていた。
『…歩実さぁ、いつまでそんなこと言ってるの!?向こうはエリート商社マンだよ!?こんなチャンス二度とないかもしれないんだよ!?シングルマザーが、どんだけ大変か充分、身に染みたでしょう!?』
『みなみ…。でも…。』
『でもじゃない!じゃあ、凛ちゃんの為だって考えて!』
『凛太郎の?』
『そう!このまま凛ちゃんに、ずーっと極貧生活を味合わせて良いの?苦労させるよ?可哀想じゃん、そんなの!それに絶対、父親は必要だから!だから行くの!決定!』
『ちょ、ちょっと…。』
『ちょっとじゃない!分かった!?母子家庭のみなみちゃんの言う事は絶対です!』
『みなみ…。うん、ありがとう。』
幼馴染みのみなみには、本当に感謝しきれない。自分のことは二の次で、いつも私の心配をしてくれる。零児さんと結婚まで辿りつけたのも、ずっとみなみが上手いことフォローしてくれたからだ。もちろん、零児さんの容姿や誠実さに惹かれたのは事実。あの時の合コンでシングルマザーの私を"差別"しないで真剣に話をしてくれたのは零児さんだけだった。零児さんも当時、エリートととは言え、入社三年目のまだまだ若手。でも私からしたら凄く大人で、優しくて。凛太郎を十七歳で生んでからは、まるで男に触れて来なかった私に教えてくれた、その安心感と温もりは何物にも替えようがなかった。
『歩実。俺達、付き合ってまだ半年だけど、もう充分だと思うんだ。まだ二十五歳で会社の中でも全然ぺーぺーだけど俺、頑張るから。歩実と凛太郎の為に俺、頑張るから。俺に二人を一生守らせて欲しい。結婚しよう。』
『零児さん…。ありがとう。こちらこそ宜しくお願いします。』
『凛太郎は、許してくれるかな。』
『…大丈夫。ほら!こんなに笑ってる。』
凛太郎を生んだ時は、まさかウエディングドレスを着て教会で結婚式を挙げられる時が来るなんて思いもしなかった。私は、式の時も、披露宴の時も泣いてばかりだった。
『もう!歩実!あんた何時まで泣いてるのよ!』
『みなみ…。』
『もっと幸せそうな顔をしなさいよ。これだけの大人数が歩実の結婚をお祝いしてくれてるんだよ。泣いてばっかじゃ逆に失礼よ。』
『うん。そうだよね。…みなみ、本当にありがとね。私は、みなみがいなかったら…。ウゥッ…!』
『あーんもう、また泣くぅ!分かった!分かった!充分、感謝されますよ!あはははは!』
結婚してからは、まさに絵に描いた様に幸せだった。凛太郎が生まれた時は、これから先ずっとギリギリの生活を送り続けるって思ってたのに。こんな広いマンションで優雅な結婚生活を送れるなんて夢のようだし、何より凛太郎を私立の小学校に入れられるなんて、そんな裕福な生活…。
あの時…。
あの時は、こんな未来を想像も出来なかったな…。
『流果さん!こんにちは!はい!あ!三田屋さん行きました?今日、特売ですよ!』
『あら本当!?あとで行かなきゃ!凛ちゃん良かったねぇ!って言うことは、今日は、ハンバーグかな?』
『うん!今日は、ハンバーグなんだ!僕も一緒に作るんだよ!』
『まぁ、凄いわねぇ!美味しいの出来ると良いね!』
『うん!』
『あ!そうそう!凛ちゃん、私立おめでとう!』
『ありがとうございます!』
『小学校受験とは言えど大変だったでしょう。偉いわ、凛ちゃんも歩実ちゃんも。うちの二浪息子にも見習って欲しいわ。』
『そんな…。丈くんだって医学部志望じゃないですか。それこそ大変ですよ。』
『まあね…。でも、ただ頭が堅いのよ。医学部なんていっぱいあるんだから、もっと別の所も受ければ良いのに東大にしか行かないとか言うの。予備校だって、タダじゃないって分かってないのかしらね。まったく!』
『まぁまぁ。あと十年、十五年もしたら何倍にして返してくれますよ。』
『だと良いけどね…。あ!そろそろ行かなきゃ!じゃあね!またね!歩実ちゃん!凛ちゃんもバイバイ!』
『はい、また!』
『バイバーイ!またね!』
結婚して三年。端からしたら、まだまだ新婚冷めやらぬ幸せな家庭に見えるだろう。一人息子の凛太郎は、この春から私立の小学校に上がる。零児さんの協力もあって大変だった"お受験"もなんとか乗り越えた。凛太郎は、今年六歳になる。そう、凛太郎と零児さんには血の繋がりが無い。それでも、零児さんは本当の息子の様に誰よりも愛を注いでくれている。だから、未婚のシングルマザーだった私は、零児さんとの結婚に踏み切れたのだろう。
『お父さん!おかえりー!』
『おぉ!凛太郎!ただいま!』
『お帰りなさい。今日も一日、ご苦労様です。』
『ただいま、歩実。お!今日は、ハンバーグかぁ!』
『このハンバーグ、僕が作ったんだよ!』
『えぇ!本当かぁ!凄いじゃんか!凛太郎!』
『早く食べて!食べて!』
『ちょ、ちょっと待てよ…。』
『零児さん、カバン。』
『あ、ありがとう。よーし…!』
『どう?』
『うん!美味い!』
『ホント!?』
『ああ!めちゃくちゃ美味いよ!凛太郎!さすがは俺の息子だな!』
『良かったぁ!また作ってあげるね!』
零児さんと出会ったのは、実は、いわゆる合コンだ。私の唯一の親友、みなみの強引な誘いで参加した一流商社マンとの四対四の合コン。私は、人見知りで正直、合コンなんて恐怖でしかなかった。ましてや当時は、十九歳のシングルマザー。同い年四人で参加なんかしたら、ただの晒し者にしかならないと思っていた。
『…歩実さぁ、いつまでそんなこと言ってるの!?向こうはエリート商社マンだよ!?こんなチャンス二度とないかもしれないんだよ!?シングルマザーが、どんだけ大変か充分、身に染みたでしょう!?』
『みなみ…。でも…。』
『でもじゃない!じゃあ、凛ちゃんの為だって考えて!』
『凛太郎の?』
『そう!このまま凛ちゃんに、ずーっと極貧生活を味合わせて良いの?苦労させるよ?可哀想じゃん、そんなの!それに絶対、父親は必要だから!だから行くの!決定!』
『ちょ、ちょっと…。』
『ちょっとじゃない!分かった!?母子家庭のみなみちゃんの言う事は絶対です!』
『みなみ…。うん、ありがとう。』
幼馴染みのみなみには、本当に感謝しきれない。自分のことは二の次で、いつも私の心配をしてくれる。零児さんと結婚まで辿りつけたのも、ずっとみなみが上手いことフォローしてくれたからだ。もちろん、零児さんの容姿や誠実さに惹かれたのは事実。あの時の合コンでシングルマザーの私を"差別"しないで真剣に話をしてくれたのは零児さんだけだった。零児さんも当時、エリートととは言え、入社三年目のまだまだ若手。でも私からしたら凄く大人で、優しくて。凛太郎を十七歳で生んでからは、まるで男に触れて来なかった私に教えてくれた、その安心感と温もりは何物にも替えようがなかった。
『歩実。俺達、付き合ってまだ半年だけど、もう充分だと思うんだ。まだ二十五歳で会社の中でも全然ぺーぺーだけど俺、頑張るから。歩実と凛太郎の為に俺、頑張るから。俺に二人を一生守らせて欲しい。結婚しよう。』
『零児さん…。ありがとう。こちらこそ宜しくお願いします。』
『凛太郎は、許してくれるかな。』
『…大丈夫。ほら!こんなに笑ってる。』
凛太郎を生んだ時は、まさかウエディングドレスを着て教会で結婚式を挙げられる時が来るなんて思いもしなかった。私は、式の時も、披露宴の時も泣いてばかりだった。
『もう!歩実!あんた何時まで泣いてるのよ!』
『みなみ…。』
『もっと幸せそうな顔をしなさいよ。これだけの大人数が歩実の結婚をお祝いしてくれてるんだよ。泣いてばっかじゃ逆に失礼よ。』
『うん。そうだよね。…みなみ、本当にありがとね。私は、みなみがいなかったら…。ウゥッ…!』
『あーんもう、また泣くぅ!分かった!分かった!充分、感謝されますよ!あはははは!』
結婚してからは、まさに絵に描いた様に幸せだった。凛太郎が生まれた時は、これから先ずっとギリギリの生活を送り続けるって思ってたのに。こんな広いマンションで優雅な結婚生活を送れるなんて夢のようだし、何より凛太郎を私立の小学校に入れられるなんて、そんな裕福な生活…。
あの時…。
あの時は、こんな未来を想像も出来なかったな…。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
いや、無理。 (完結)
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。
もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、
「わかってくれるだろう?ミーナ」
と手を差し伸べた。
だから私はこう答えた。
「いや、無理」
と。
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる