ぼくは、すてられた。

杉本けんいちろう

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ぼくは、すてられた。

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今日も、いつものように、お散歩の時間。でも、不思議なのは、コウタくん、一人じゃない。お父さんも一緒だ。大きな箱を抱えて…。

あれ?いつもの、お散歩コースじゃないよ。ここは、どこ?どこへ行くの?分かった!新しいコースを見つけるんだね!だから、お父さんも一緒なんだ!あはは!元気出てきた!よし!走っちゃうぞ!それ!

『ま、待って!待ってよ!コタロー!』

え?いつもなら一緒に走ってくれるのに…。なんで?なんで今日は、止めるの?

『コタロー、おいで!』

どうして?お散歩でしょ?ぼくは、まだ走れるよ?どうして?どうして抱っこするの?

『ん?お父さん!ほら!アレ!アレ見てよ!』

『あんな所に…。』

『あそこなら、コタローも寂しくないんじゃないかな。』

『そうだな。よし!あそこにしよう!』

え?なに?どうしたの?箱?

『バイバイ、コタロー!元気でね!』

なんで?なんで?なんで?

『コウタ、そろそろ行くよ。』

『うん…。』

待ってよ!コウタくん!どこへ行くの?こんな大きな箱に入れられたら、ぼく出れないよ!

コウタくん!お父さん!コウタくん!

なんで?なんで?なんで?

『…大丈夫?』

え?きみは、だれ?

『きみも、どうやら捨てられたみたいだね。』

捨てられた…?

『そうさ。ぼくと一緒。捨てられたんだよ。』

なんで?なんで、ぼくが捨てられたの?ぼく、なんか悪いことしたの?

『それは、知らないよ。ぼくだって、なんで捨てられたのか分からないんだ。きみが、捨てられた理由なんて知るわけがないさ。』

そんな…。

『まぁ、あきらめて、そこを通りかかる人に全力で媚びることだね。』

きみは、いつからここにいるの?

『二日前だよ。』

二日前から?

『そうさ。この二日間、通りかかる人、みんなに媚び売ってるんだ。でも最初だけ抱いてくれるけど、結局は、置いてくんだ。みんな、ゴメンねって謝りながらね。』

そんな…。

『人って冷たいだろ?チヤホヤしてくれるのは子供の時だけなんだ。ちょっと成長したら、すぐにサヨナラさ。』

じゃあ、ぼくも、大きくなって来たから邪魔になったってことなのかな…。ひどいよ。

『多分、そんなとこだろうなぁ。あー、もう日が暮れてきたな。ここは、夜、冷えるんだ。毛布は、あるかい?』

うん。毛布とごはんは、少し置いといてくれたみたい。

『そうか。なら、大丈夫だ。』

ねぇ、そっち行ってもいい?

『それが出来たら、とっくにどっか行ってるよ!こんな大きな箱、出てこれるわけないだろ?』

やっぱり?そうだよね…。

『誰か拾ってくれる人が現れるまで、ぼくらは、ずーっとこのままさ。』

やだよ!そんなの!

『って言っても、もう、ぼくらには、どうすることも出来ないのさ。』

あれ?なんか降って来た。雪だ!雪だよ!

『最悪だな。今夜は、寒いぞ!しっかり、毛布に包まっときなよ。』

あーあ、ぼく、雪好きだったのにな。こんな悲しくて寂しい雪は、初めてだよ…。

その夜、雪は、いつもより静かに、そして、遅くまで降り積もりました。

『…タロー!コタロー!コタロー!大丈夫?』

『良かった!生きてるな!』

『コタロー!ゴメンね!ゴメンね!寒かったよね!もう、二度とこんなことしないから!』

なんか、コウタくんの声がするな…。やっぱり!コウタくんだ!お父さんも!

…でも、なんで?ぼくは、こっちだよ?

『ワン!ワン!』

『良かった!ホントにゴメンね!早く帰ろう!帰ったら、すぐにお風呂に入れてあげるからね!コタロー!』

『ワン!ワン!』

『さ、早く車に乗って!』

…ちょ、ちょっと待ってよ!ぼくは、ここだよ!どういうこと?隣の箱にいた、あのコは、ぼくだったの?じゃ、じゃあ、ぼくは、一体、誰なの?誰なの!?

コタローは、気付いたら眠っていました。夕べの大雪が嘘のように、この日は、青空が広がります。人も行き交いはじめました。コタローは、昨日の会話を思い出しました。

そうだ!早く誰かに拾ってもらわないと!いつまでも、こんなとこにいたくないよ!

『あら!かわいい!見て!』

『ホントだ!かわいい!でも、可哀想に。捨てられたのね。』

『飼ってあげたいけど、ウチは、ペット禁止だから。』

『ウチも。』

『ゴメンねぇ!』

…ホントだ。言ってた通りだ。結局、置いてくんだ。あ!また来た!

『見て!見て!お母さん!かわいい!』

『ダーメ!ウチは、お父さんが犬嫌いだから無理よ。』

『えー!何で?こんなにかわいいのに?何が嫌いなの?』

『それは、知らないけど、たぶん、吠えるからでしょ。』

『吠えるから…?』

『そう!吠えるとうるさいでしょ?さ、早く行くわよ!この子は、どうせ他の人が拾ってくれるから大丈夫よ!』

『ホントに?ゴメンね!バイバイ!』

なんとなく分かってきたな。ぼくは、誰からも愛されて、誰からも助けてもらえるんだと思ってた。全然、そんなことなかったんだ。

ぼくを、愛してくれる人は、ほんの限られた人だけだったんだな。あったかいと冷たいって、すごい差なんだな。初めて知ったよ。

ぼくは、あったかいしか知らなかった…。

それから、また、夜が明けました。コタローは、孤独に押し潰されそうです。すると、そこへ見覚えのある親子が近寄って来ました。

『ん?お父さん!ほら!アレ!アレ見てよ!』

『あんな所に…。』

『あそこなら、コタローも寂しくないんじゃないかな。』

『そうだな。よし!あそこにしよう!』

『え?なに?どうしたの?箱?』

『バイバイ、コタロー!元気でね!』

『なんで?なんで?なんで?』

『コウタ、そろそろ行くよ。』

『うん…。』

『待ってよ!コウタくん!どこへ行くの?こんな大きな箱に入れられたら、ぼく出れないよ!コウタくん!お父さん!コウタくん!なんで?なんで?なんで?』

…大丈夫?

『え?きみは、だれ?』

きみも、どうやら捨てられたみたいだね。

『捨てられた…?』

そうさ。ぼくと一緒。捨てられたんだよ。

『なんで?なんで、ぼくが捨てられたの?ぼく、なんか悪いことしたの?』

それは、知らないよ。ぼくだって、なんで捨てられたのか分からないんだ。きみが、捨てられた理由なんて知るわけがないさ。

『そんな…。』

まぁ、あきらめて、そこを通りかかる人に全力で媚びることだね。

『きみは、いつからここにいるの?』

二日前だよ。

『二日前から?』

そうさ。この二日間、通りかかる人、みんなに媚び売ってるんだ。でも最初だけ抱いてくれるけど、結局は、置いてくんだ。みんな、ゴメンねって謝りながらね。

『そんな…。』

人って冷たいだろ?チヤホヤしてくれるのは子供の時だけなんだ。ちょっと成長したら、すぐにサヨナラさ。

『じゃあ、ぼくも、大きくなって来たから邪魔になったってことなのかな…。ひどいよ。』

多分、そんなとこだろうなぁ。あー、もう日が暮れてきたな。ここは、夜、冷えるんだ。毛布は、あるかい?

『うん。毛布とごはんは、少し置いといてくれたみたい。』

そうか。なら、大丈夫だ。

『ねぇ、そっち行ってもいい?』

それが出来たら、とっくにどっか行ってるよ!こんな大きな箱、出てこれるわけないだろ?

『やっぱり?そうだよね…。』

誰か拾ってくれる人が現れるまで、ぼくらは、ずーっとこのままさ。

『やだよ!そんなの!』

って言っても、もう、ぼくらには、どうすることも出来ないのさ。

『あれ?なんか降って来た。雪だ!雪だよ!』

最悪だな。今夜は、寒いぞ!しっかり、毛布に包まっときなよ。

『あーあ、ぼく、雪好きだったのにな。こんな悲しくて寂しい雪は、初めてだよ…。』

その夜、雪は、いつもより静かに、そして、遅くまで降り積もりました。

『…タロー!コタロー!コタロー!大丈夫?』

『良かった!生きてるな!』

『コタロー!ゴメンね!ゴメンね!寒かったよね!もう、二度とこんなことしないから!』

やっぱり、来てくれた!

『良かった!ホントにゴメンね!早く帰ろう!帰ったら、すぐにお風呂に入れてあげるからね!コタロー!』

やっぱり、この前のあのコは、ぼくだったんだね!

『さ、早く車に乗って!』

ねぇ!あのコも!あのコも一緒に!

『コタロー、どうしたの?向こうに何かいるの?…何もいないよ?』

え…?

『さ、早く帰ろう!』

コタローは、お父さんの車に乗って、ウチへと帰りました。そして、初めて知りました。コウタくんが抱きしめてくれることが、こんなにも、優しくて、あったかいものだったんだと…。

                                             ー完ー
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