1 / 6
1.プロローグ
しおりを挟む
異世界に行ったら勇者になって、世界を救い、姫と結婚をする。
一般的な異世界物語はこんな感じだ。
「これなら俺も出来るんじゃないか、否、いける気しかしない」
この考えが初めの間違えだった。
察しの通り、俺は冴えない引きこもりであり、ファンタジー脳である。
目的のためなら大嫌いな光を浴びることさえ、いとわない。
善は急げということなので、いかにも事故の多そうな路地でスタンバイして、子供が轢かれそうになるのを待った。
要するに、「良いことをしたら異世界に行けるんじゃね?」という頭の湧いた考えだったわけだ。
数十分後、神の悪戯のように転がったボールを追いかけて、子供がその道に飛び込んできたと同時に、トラックがこちらに向かって走ってきた。
子供を押し返して、俺は見事轢かれたわけだ。
意識が遠ざかり、徐々に光を失っていくのがわかった。
しばらくするとよくわからない空間で目を覚ました。
まあ、こういう空間に基本的に居るのは、あの人だろ。
「そうじゃよ、おぬしの考えてることもわかる、いかにも神々しい神様じゃよ」
おっと、銀髪ロリ幼女という予想の斜め上をいったことは黙っておこう。
「聞こえてるんじゃって! 嫌でも耳に入るんじゃよ」
「まあここまで来たら転生はよ」
神様は溜め息をついて、じっとこちらを見た。
「おぬしのぅ、死ぬまでの回想雑すぎじゃろうが! 家族への後悔の気持ちとか語らんかい!」
神様は予想以上にメタいことを言ってきた。
大体いろんな意味で思いつきでこうなっているわけだし、後悔なんてないわけだし。
「はよ、無双勇者はよ」
とりあえず、明るい未来の為に神様を急かして、転生させてもらうことを急ぐことにした。
「その自分は転生されて当然という発想が凄いわ…そもそも未来って、一応死んどるんじゃぞ」
「主人公補正って知ってます?」
今にも神様が殴りかかってきそうなので、とりあえず謝っておいた。
そのあともくだらないやり取りは続いた。
「もういいわ! 転生先はふぁんたじーとやらで、勇者になりたいんじゃな」
神様は案外物分かりのいい部分もあったようで、体感二時間くらいで承諾してくれた。
「これを飲め」
差し出されたのは、おちょこに注がれた日本酒のようなものだった。
「これは清酒 黄泉還り というもので、この世界からワシの念じた世界まで行けるというものだ」
成る程、蘇りと黄泉(この世界)から還ることを合わせてるってことか。
おいおい、寒いオヤジギャクじゃあないですか。
「おいおい、聞こえてるって言ってんじゃろうが」
神様を無視して、酒を一気飲みした。
次の瞬間、俺の体は光に包まれ、だんだんと透けてきた。
「急に飲むでない! 全く説明もあまり出来んかった」
神様は怒り気味であったが、少し寂しそうでもあった。
「ところでおぬし、名前を最後に聞いておきたいんじゃが」
神様でも俺について知らないこともあるのだな。
神様はなんでも知っているものだと、思い込んでいた。
「誠だ、来栖 誠。それ以上でも以下でもない」
神様はクスクスと笑って、俺の頭を撫でた。
精一杯背伸びをしていて、辛そうなのは分かったが、あまりの安心感に身を任せてしまった。
「最後にじゃ…おぬしの家族はちゃんと悲しんでおる。死を軽くみすぎるな、誠は何も失わなくとも、周りの人間はおぬしを失うのだからな」
あまりにも臭いセリフを盛大に笑ってやろうとしたが、そのとき出たのは涙だった。
自分への後悔、家族への罪悪感、全てが一気にのしかかった。
そして気づいた、死にたいわけじゃなかったんだと。
ただ、優しさが欲しかっただけなんだと。
「もう…遅いよな」
「そうじゃな、次の世界ではせいぜい間違えるなよ」
神様は優しく俺を抱きしめた。
もう体は半透明で、いまにも消えてしまいそうだった。
この後悔を胸に俺は、次の世界を生きていくことを決めた。
「ありがとう、神様」
一般的な異世界物語はこんな感じだ。
「これなら俺も出来るんじゃないか、否、いける気しかしない」
この考えが初めの間違えだった。
察しの通り、俺は冴えない引きこもりであり、ファンタジー脳である。
目的のためなら大嫌いな光を浴びることさえ、いとわない。
善は急げということなので、いかにも事故の多そうな路地でスタンバイして、子供が轢かれそうになるのを待った。
要するに、「良いことをしたら異世界に行けるんじゃね?」という頭の湧いた考えだったわけだ。
数十分後、神の悪戯のように転がったボールを追いかけて、子供がその道に飛び込んできたと同時に、トラックがこちらに向かって走ってきた。
子供を押し返して、俺は見事轢かれたわけだ。
意識が遠ざかり、徐々に光を失っていくのがわかった。
しばらくするとよくわからない空間で目を覚ました。
まあ、こういう空間に基本的に居るのは、あの人だろ。
「そうじゃよ、おぬしの考えてることもわかる、いかにも神々しい神様じゃよ」
おっと、銀髪ロリ幼女という予想の斜め上をいったことは黙っておこう。
「聞こえてるんじゃって! 嫌でも耳に入るんじゃよ」
「まあここまで来たら転生はよ」
神様は溜め息をついて、じっとこちらを見た。
「おぬしのぅ、死ぬまでの回想雑すぎじゃろうが! 家族への後悔の気持ちとか語らんかい!」
神様は予想以上にメタいことを言ってきた。
大体いろんな意味で思いつきでこうなっているわけだし、後悔なんてないわけだし。
「はよ、無双勇者はよ」
とりあえず、明るい未来の為に神様を急かして、転生させてもらうことを急ぐことにした。
「その自分は転生されて当然という発想が凄いわ…そもそも未来って、一応死んどるんじゃぞ」
「主人公補正って知ってます?」
今にも神様が殴りかかってきそうなので、とりあえず謝っておいた。
そのあともくだらないやり取りは続いた。
「もういいわ! 転生先はふぁんたじーとやらで、勇者になりたいんじゃな」
神様は案外物分かりのいい部分もあったようで、体感二時間くらいで承諾してくれた。
「これを飲め」
差し出されたのは、おちょこに注がれた日本酒のようなものだった。
「これは清酒 黄泉還り というもので、この世界からワシの念じた世界まで行けるというものだ」
成る程、蘇りと黄泉(この世界)から還ることを合わせてるってことか。
おいおい、寒いオヤジギャクじゃあないですか。
「おいおい、聞こえてるって言ってんじゃろうが」
神様を無視して、酒を一気飲みした。
次の瞬間、俺の体は光に包まれ、だんだんと透けてきた。
「急に飲むでない! 全く説明もあまり出来んかった」
神様は怒り気味であったが、少し寂しそうでもあった。
「ところでおぬし、名前を最後に聞いておきたいんじゃが」
神様でも俺について知らないこともあるのだな。
神様はなんでも知っているものだと、思い込んでいた。
「誠だ、来栖 誠。それ以上でも以下でもない」
神様はクスクスと笑って、俺の頭を撫でた。
精一杯背伸びをしていて、辛そうなのは分かったが、あまりの安心感に身を任せてしまった。
「最後にじゃ…おぬしの家族はちゃんと悲しんでおる。死を軽くみすぎるな、誠は何も失わなくとも、周りの人間はおぬしを失うのだからな」
あまりにも臭いセリフを盛大に笑ってやろうとしたが、そのとき出たのは涙だった。
自分への後悔、家族への罪悪感、全てが一気にのしかかった。
そして気づいた、死にたいわけじゃなかったんだと。
ただ、優しさが欲しかっただけなんだと。
「もう…遅いよな」
「そうじゃな、次の世界ではせいぜい間違えるなよ」
神様は優しく俺を抱きしめた。
もう体は半透明で、いまにも消えてしまいそうだった。
この後悔を胸に俺は、次の世界を生きていくことを決めた。
「ありがとう、神様」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる