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2.俺の異世界は四畳半

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 異世界に来て、16年が経ちましたよっと。
 結論から言うと、異世界でも引きこもってます。
 理由、理由なんてそりゃ、外に出るとデバフ食らうからですよ。

 異世界生活5年目にその事実に気づいた。
 転生ということなので、5歳の俺は楽しく遊ぼうと外に出た。
 悲劇はそこで起きた。

 ステータス異常発生
 *毒
 *鈍化
 *混乱
 *暗闇
 *体力低下

 4歳までは痛覚とやらがなかったのか、体力1のまま楽しそうに遊んでいたようだ。

 この日から俺は引きこもりライフを送っているわけだ。
 こんなのライフがいくらあっても足りねえぜ。
 神様のダジャレが少しうつったのは放っておこう。

 新しい母と父は、俺を憐れんで沢山のおもちゃを買ってきてくれた。
 人形、裁縫セット、お料理おもちゃセット、可愛い服、よし、そろそろ気づいたでしょう。
 もう一つの悲劇、転生したら女になったんだが、それは。

 現在はあのインチキ神様に文句を言うための、神託を作っているところだ。
 残りは、神々の宝珠を真ん中の窪みに入れて、完成。
 【誰でも作れる神託キッド】の製作が完了した。

 魔力を込め、神様との連絡を試みる。

「もしもーし神様ですか」

 しばらくたっても返事はなく、諦めかけていたその時。

「お、…ぬし ……よ…で……たのう」

 回線がうまく繋がっていないようだ。
 付属のアンテナみたいなものを指してみることにした。

「おお! おぬしか? 聞こえておるか、10年ぶりくらいか」

 まさか、こんな簡単に神様と連絡が取れるとは思わなかったが、何はともあれ、文句を言ってやる。

「おぬしの標準値にも満たない前世のすてーたすのせいじゃろうが」
 
 心を読まれて、先に答えられてしまった。
 だが、もう一つ文句がある。

「ふぁんたじーの世界の勇者は女じゃいかんのか?」

 文句を言う前に、正論で全て論破されてしまう。

「ぐぅ…マジレス乙!」

「低脳乙」

 すぐに返事が返ってきた。
 あの野郎、現代社会に慣れてきてやがる。
 まさか、俺と対等に話をするとわ。

「まあ良いではないか。おぬしは神託の声を聞き、魔力を込めたもの全てが神具となる能力を持っておる」

 確かに、遊んでいた人形は自我を持ち喋り、洋服には意味のわからない魔法が付与され、裁縫セットに限っては、石を切ったり、縫ったりすることさえ可能だった。

「やっぱりあれは」

「うむ、勇者補正じゃな」

 これで外にさえ出れれば、俺は無双勇者確定だったというわけか。
 確かにファンタジー世界で無双勇者にはなれたが、家から出れないというのはなんとも。

「それよりおぬし、過去の回想短かくないかのう? 周りに呪われた聖女ってよばれたり、魔女扱いされたりしたことは話さんのか」

 デジャヴって怖いですよね。
 メタい発言をしているあなたに言いたい、それはあなたより偉い神様がまだネタを考えていないんだと。
 番外編みたいので尺を稼ごうとしているのだと。

「唯一神のわしより偉いものなどいるか」

 神様は軽快に笑った。
 とりあえずこれからの方針は神様に助けてもらって、デバフを解除する。

「次回 超絶イケメン彼氏登場!」

「どちらかというと百合展開のが可能性あるじゃろうが」

 マジで神様、地球の排気ガスにやられて過ぎてますよ。
 16年前の純粋な神様はどこへ行ったのやら。 
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