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3.はい、王様登場ですって

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 神様との交信に成功して、早一年。
 どうしてここまでカットするかって、都合上なのだから仕方あるまい。

「リーン! 私は仕事に行ってくるわ」

「行ってらっしゃい! 迷惑かけてごめんね」

「それを言うのは無しでしょ」

 はい誠君はこの世界では、リーンちゃんですよっと。

 今話したのは新しい母、ルナだ。
 こんな呪われた子供でも、優しく接してくれるとてもいい人だと思う。

 どうしてそう他人行儀なのかって? それはまだ整理がついてないからさ。
 こうして17年こちらにいるわけだが、どうしても母を母と思えない自分がいる。

「なんじゃおぬし、可愛いとこもあるではないか」

「うるさいな」

 神様はこちらの居場所をつかんだことをいいことに、向こうから無理やり神託を繋ぐことがある。
 全くもって迷惑な話だ。

「迷惑かけて…ごめんね…」

「よしっ、表に出ろクソアマ」

「おぬしが死ぬぞ」

 いつもこんなくだらない話をしているが、呪い(デバフ)の解除方法について話す場合もある。

「リーン大変!」

 母が大慌てで家に戻ってきた。
 また、仕事用具でも忘れたのだろうか。

「おっ、王様が外に!」

 この世界の王様は基本的に性格が悪いようで、あまりいい噂を聞かない。
 よって、王都には行くまいと考えていたが、まさか向こうから来るとは。

 1人考えにふけっていると、玄関からドタドタと乱暴な足音が聞こえてきた。

「お前か! 呪いの巫女とやらは」

 やはり性格が悪いようで、常人ならトラウマなセリフをズバズバと。
 だが、一応一国の王様だ。
 礼節とやらをしっかりせねばな。

「はい 私がリーン クルセル 呪いの巫女にございます」

 後ろからものすごい殺気を感じたが、それは無視して話を続けた。

「王が辺境の村の小娘に何かご用でしょうか?」

 少しやり返してやったつもりだったが、結局自虐にしか感じない。

「そう警戒するな。この剣だ、これに魔法を付与したのはお前と聞いた」

 見せられた剣は騎士の父へのお守り代わり渡した短剣だった。

 騎士とはいえ、王様と会えるほどの舞台に父が所属しているとは思わず、思いっきりチート魔法を付与しまくったのはまずかったか。

「そっ、そうですが」

「なれば、すぐに王宮に来い! 仕事がある」

 やはり暴君は自己中心的である。
 少し怒りたいところだが、身分が違いすぎる。

「そこの木偶! こやつは今神託の声を聞いておるのだ。無礼じゃ! わしをあまり怒らせるな」

 殺意をむき出しにした神様が王様を叱った。
 王様も俺が使っていた神託を見て、その言葉が誰のものであるか気づいたようだ
 王様も逆上してキレるのかと思えば、「それは申し訳ない」と深々と謝った。

 王様のキャラがあまり定まらない。
 いい奴なのか、悪い奴なのか、ソースはよ。

「おぬしはこの王について行くべきじゃ」

 神様が神々しい光を見せ、私に言った。
 私も敬虔な信者を演じた。

「おおっ! 主よ! 主の命令とあればこの呪いに耐えてでも、王都へ行きましょう」

 おっと、これは呪いを久々に受けてしまう感じですか。

「そうか!ならば直ぐ馬車へ、説明は道中にしよう」

 王様が、喜びながら言った。
(案ずるな、これが最もいい未来だ)

 こっ…こいつ、頭に直接。
 神様が頭に直接話しかけてきた。
 俺自身も神は信じているため、従うことにした。

 母は王の命令ということで、何も言わずに私のことを見送ってくれた。

「母さん、必ず帰ってくるよ」

 そう別れを告げ、馬車に乗った。
 馬車の中には金髪巨乳女騎士と長身眼鏡貴族的な二人がいた。

 「よしっ、1年前のフラグは回収した」
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