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どうして
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「さて、あなたはなぜここに来たのでしょう?」
少女は先ほどのシリアスな雰囲気を一掃するかのように明るい声でわざと話を逸らした。
「なぜってどういうこと?」
少女が疑問に思ったことの答え、それは僕が一番知りたいことだった。
「この世界に来るには、何かしらの理由が、原因があります。あなたに何かしらの問題が降りかかっていたということです。何か身に覚えがありますか?」
「いや、何もないと思う」
「でしょうね。急に言われても思い出せるものでもないですし、歩いている途中ででも思い出していただけるとありがたいです」
少女はただそれだけを告げた。
それから僕を見ることなく、前を見続けていた。
「僕に何があったのか……」
この異変に巻き込まれた理由が必ずある。
彼女はそう言った。
「僕は何かを忘れているのか?」
原因が、理由が僕にあるなら何か思い出すことが、何か感じることがあるはずだ。
でも、僕はそれを思い出すことができない。
何を僕は忘れている?
僕は何に対して見て見ぬふりをしている?
「何を、僕は何をした?」
思い出せ。
過去から今まで。
未来を掴むために。
「何かをしたわけではないのかもしれないですね」
「え?」
考え込み始めた僕に向かって少女はぽつりと呟いた。
「何かをしたわけではない。何かしらの行動がこちらに引っ張られる要因となった、が正しいのかもしれません」
「どういうこと?」
僕が理解できなかったからだろうか、少女は分かりやすく、嚙み砕いて教えてくれた。
「例えば、あなたが今日の朝に卵を食べたとしましょう。その卵を産んだ親鶏はこう思うかもしれません。『けっ、私が大切に産んだ卵を食べやがって、この馬の骨共が』と」
「口が悪くないかな、その親鶏」
「大切なものを取られた人は大抵こう思っていると思いますよ」
「そう、なのかな……」
少女はころころと鈴が鳴るように笑っていた。
さっき鶏の声をしたときは恐ろしいほどに憎しみに満ちた低い声だったのに。
「そして、卵を食べた輩が地獄に落ちるように祈ったかもしれません。でも、たった一度の祈りではあなたは地獄に落ちないでしょう。ええ、一日のうちで卵を食べている人なんて多すぎるので、例え元の祈りがどれだけ大きくとも、1人1人にかかる祈りなんて微々たるものになる」
少女は手をわちゃわちゃさせながら、僕に説明してくれる。
多分、手のわちゃわちゃは僕が分かりやすいようにジェスチャーをしてくれているのだと思われる。
全く分かんないけど。
「しかし、その祈りは卵の分だけでなく、お肉の分もあるかもしれません。そして、その祈りが毎日積み重なっていたとしましょう。すると、どうなりますか?」
少女は一本ずつ花を拾っていく。
そして、束ねて僕の方へ差し出した。
「このように、花束……大きくなります。たった一輪しかなかった花束が、豪華な花束になってしまった。多くの種類の花と、同じ花が何本も束ねられて」
そうして、少女は最後の花を花束に突き刺した。
突き刺した途端、少女の手から花は溢れて、地面に落ちていってしまった。
「このように、器から飽和し、落ちていってしまいます。今回は私がわざと手を広げたせいでもありますけどね」
少女はそう言いながら落ちていく花をじっと見つめている。
「器が壊れるか、溢れてしまったとき、世界は崩壊する。あなたもそうだったのかもしれません。何か、毎日何も考えずに行っていた行動が積み重なり、この世界を開く鍵となった」
少女はそうして、落ちた花を躊躇うことなく踏んだ。
「この例だったら、なぜ落ちたのか、分からないでしょう?」
「花を……」
「いいんですよ。この花達は悪い花。潰した方がこの世界の、私のためですもの」
少女は僕の手を取って前へと歩き出す。
今まで花を踏みつぶすような、そんな残酷な行為を一切しなかった少女。
後ろを向いて確認した花は、桃色の花々は、無残に踏みつぶされ、花としての形は一切残っていなかった。
少女は先ほどのシリアスな雰囲気を一掃するかのように明るい声でわざと話を逸らした。
「なぜってどういうこと?」
少女が疑問に思ったことの答え、それは僕が一番知りたいことだった。
「この世界に来るには、何かしらの理由が、原因があります。あなたに何かしらの問題が降りかかっていたということです。何か身に覚えがありますか?」
「いや、何もないと思う」
「でしょうね。急に言われても思い出せるものでもないですし、歩いている途中ででも思い出していただけるとありがたいです」
少女はただそれだけを告げた。
それから僕を見ることなく、前を見続けていた。
「僕に何があったのか……」
この異変に巻き込まれた理由が必ずある。
彼女はそう言った。
「僕は何かを忘れているのか?」
原因が、理由が僕にあるなら何か思い出すことが、何か感じることがあるはずだ。
でも、僕はそれを思い出すことができない。
何を僕は忘れている?
僕は何に対して見て見ぬふりをしている?
「何を、僕は何をした?」
思い出せ。
過去から今まで。
未来を掴むために。
「何かをしたわけではないのかもしれないですね」
「え?」
考え込み始めた僕に向かって少女はぽつりと呟いた。
「何かをしたわけではない。何かしらの行動がこちらに引っ張られる要因となった、が正しいのかもしれません」
「どういうこと?」
僕が理解できなかったからだろうか、少女は分かりやすく、嚙み砕いて教えてくれた。
「例えば、あなたが今日の朝に卵を食べたとしましょう。その卵を産んだ親鶏はこう思うかもしれません。『けっ、私が大切に産んだ卵を食べやがって、この馬の骨共が』と」
「口が悪くないかな、その親鶏」
「大切なものを取られた人は大抵こう思っていると思いますよ」
「そう、なのかな……」
少女はころころと鈴が鳴るように笑っていた。
さっき鶏の声をしたときは恐ろしいほどに憎しみに満ちた低い声だったのに。
「そして、卵を食べた輩が地獄に落ちるように祈ったかもしれません。でも、たった一度の祈りではあなたは地獄に落ちないでしょう。ええ、一日のうちで卵を食べている人なんて多すぎるので、例え元の祈りがどれだけ大きくとも、1人1人にかかる祈りなんて微々たるものになる」
少女は手をわちゃわちゃさせながら、僕に説明してくれる。
多分、手のわちゃわちゃは僕が分かりやすいようにジェスチャーをしてくれているのだと思われる。
全く分かんないけど。
「しかし、その祈りは卵の分だけでなく、お肉の分もあるかもしれません。そして、その祈りが毎日積み重なっていたとしましょう。すると、どうなりますか?」
少女は一本ずつ花を拾っていく。
そして、束ねて僕の方へ差し出した。
「このように、花束……大きくなります。たった一輪しかなかった花束が、豪華な花束になってしまった。多くの種類の花と、同じ花が何本も束ねられて」
そうして、少女は最後の花を花束に突き刺した。
突き刺した途端、少女の手から花は溢れて、地面に落ちていってしまった。
「このように、器から飽和し、落ちていってしまいます。今回は私がわざと手を広げたせいでもありますけどね」
少女はそう言いながら落ちていく花をじっと見つめている。
「器が壊れるか、溢れてしまったとき、世界は崩壊する。あなたもそうだったのかもしれません。何か、毎日何も考えずに行っていた行動が積み重なり、この世界を開く鍵となった」
少女はそうして、落ちた花を躊躇うことなく踏んだ。
「この例だったら、なぜ落ちたのか、分からないでしょう?」
「花を……」
「いいんですよ。この花達は悪い花。潰した方がこの世界の、私のためですもの」
少女は僕の手を取って前へと歩き出す。
今まで花を踏みつぶすような、そんな残酷な行為を一切しなかった少女。
後ろを向いて確認した花は、桃色の花々は、無残に踏みつぶされ、花としての形は一切残っていなかった。
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