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共鳴
しおりを挟む「共鳴です。あなたは私と共鳴した。だから、この世界に入った」
「共鳴?」
「はい。何が共鳴したのか分からないけれど、何かしら響くことがあって普段は落ちないほどの小さな穴が大きな穴になってしまって、この世界に落ちたのかもしれません」
この目の前の少女と僕は共鳴した。
では、どうして花が見えるようになったのか。
この世界に入る前から僕は落ちている花を見ていた。
そして、少女は花が見えていなかった。
少女をこの世界に連れてきたのは僕なのか?
「私がここに来たのは、誰のせいでもないですよ。そういう運命だったんでしょう。その点においてあなたの所為だと責めるつもりは一切ありません」
「何を言って」
「何か悩んでいるような顔をなさっていたので。私がここに来たのはあなたのせいではないですよ。それに、逆の事態もあるかもしれないですしね。そんなことを考えるより共鳴点を考えた方が生きる確率が高くなりますよ」
少女は指で地面に何か、マップのようなものを描きながら僕の方を見ずに告げる。
僕の方を見ていないのに、なぜ、僕が考えていることが分かったのだろうか?
「分かりますよ。簡単です。人の考えてることくらい簡単に分かります。そうしないと生き残れなかったんですから」
少女はマップを広げながら誰かに聞かせるような口調ではなく、ただ、呟くように告げる。
「醜いところも含めて世界は綺麗だって言いますけど、それを聞くたびに『クズが。頭、海面の花畑しかないのか?頭から蛆湧くようなこと、何も知らねえ奴がほざくんじゃねえよ』って思いますよ」
所々で少女の口が悪くなるのはどうしてなのかが気になってしまう。
「そして、思うんです。知らずに育った幸せな人なのかなって。そうやって人の不幸の重さを測るのは嫌いですし、したくないですけど、やっぱり思ってしまうんですよね。烏滸がましいことですけど」
少女は明るい声の「反省しなきゃ、ですね~」の一言を最後に残して、何も告げなくなった。
「空気を読む」
そう言えば、僕も空気をよく読んで、先回り先回りで行動をしていた。
ただ、それは阿保みたいに疲れることで、あんまりやりたくないと何度も思ったっけ。
それに、断ることも苦手で、何でも受け入れてきたっけ。
今は、空気を読んでない。
何でだ?
僕は目の前の少女の横顔をしっかりと見つめながらぼんやりと思考を飛ばす。
この世界に来てから空気を読んでない。
いや、読めてない。
少女の望むことが読めてない。
少女は読めているのに、僕はなぜ読めてない?
「空気が読めてない、ですよね。あなたは私が望むことが分からない」
「ああ、そうだけど」
なぜ、この少女は僕が言いたいことが分かる?
なぜ、僕が考えていることが分かる?
「空気を読み過ぎて、お兄さん、疲れてるのでは?」
「疲れている?」
僕よりも、少女の方が疲れている気がする。
口調も時間が経つごとに幼くなっているか、統一できていない。
「考えすぎて、疲れが溜まって、自分の世界が見えなくなって、花が見えるようになったのでは?」
少女はそれを告げて満足そうに笑った。
「謎はこれで解明ですかね?」
この言葉を共にして。
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