王騎士スバル

西東 吾妻

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プロローグ

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肉体とは、魂の牢獄である。
肉体という鉄籠に、入口はあっても出口はない。
魂はあくまでも肉体に拘束され、肉体ある限り、魂はその奴隷に甘んじる。

魂は肉体に隷属することを発見した哲学者、グラジオラスの言葉である。
非業の死を遂げた妻との再会を切望したこの哲学者は、その執念により、神歴3年にこの公理を見出した。

肉体の摩滅とは、魂の福音である。
空腹とは、肉体ではなく魂の欲求である。
魂は肉体を介することでのみ、この根源的な願望を満たしうる。

世界で初めて死者を蘇らせた魔術師、ムスカリが遺した最期の言葉である。
神歴100年に最愛の友人を死霊術で蘇らせたこの魔術師は、2年間の空腹に苛まれたその友人に食い殺された。

食とは、理性の気付け薬である。
料理とは、死者への贈呈品である。
不死者は美食を通して、術者に愛を見出す。

夫に2度目の生を授けた宮廷料理人、サフランの言葉である。
美食を極めたこの料理人は、涙ぐむ夫に看取られつつ、神歴193年にその幸せな生涯を終えた。

我に永遠の命ない限り、不死者の軍団は不滅足りえない。
我に無窮の魔力ない限り、不死者の軍団の建造は夢物語である。
神をも唸らす美食の探求こそ、我の夢を正夢とする。

不死者の軍団を夢見て世界を旅し、神と成る料理を作り上げた咎人、ガーベラの言葉である。
不老不死の肉体、無尽蔵の魔力を手に入れたこの咎人は、時の王に疎まれ、神歴323年に溶岩の底に沈められた。

ガーベラの料理は、希望である。
不死者の軍団とは、国家の救世主である。
血染めの蛮族たちは、不屈の兵士達によってのみ防ぎうる。

異民族の侵略に抗う国王、アリウムの言葉である。
神歴1400年に玉座に座ったこの王は、国家を守るため、ガーベラが作り上げた、神と成る料理の探索を王騎士に命じた。

王の命を受け、世界を旅したその騎士の名はスバルという。
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