今更、日常に戻れる気がしない

葉室ゆうか

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そして、日常に戻れなくなった少女は…

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ドレドレみそみそヤ○ト味噌~♪と何処の国のなんだか調子っぱずれな歌を口遊みながら、『ジャニアリィ』は慣れた感じで冒険者ギルドの扉を開けた。

「あれぇ、ジャニさんじゃありませんかあ~」

ギルド職員の制服を着た若い受付嬢が仕事中にも拘らず、最近評価がうなぎ登りの『少年』に弾んだ声を掛けた。

「アーニャ、仕事しろよ。そこの兄さんが困ってんだろ」
「え…だって~、声を掛けなきゃジャニさん別の子の受付卓に行っちゃうじゃないですか~」
「当たり前だろ。大体、あんた人気有り過ぎ。その列並んでたら俺が仕事にありつけるのが夜中になっちまうわ。俺は野郎に人気無くても目の前の俺だけを相手してくれるカワイイ達がいいの」

事もなげに言ってのける『彼』の男前発言にアーニャ含めた受付嬢全員の目がハート型になってピンクに輝いている。
本人は男達の恨みがましい視線をものともせずに、さっさと大依頼板からソロで回れそうな物を数枚取って受付済ませて出て行ってしまう。

「ははは、『男』って楽しいなー!」

まあ『師匠』程振り切れて無いがな。しょうがない。だって、『ジャニさん』の男じゃないんだも。











「T・S・転・生、キタコレ───────‼︎」








【西田睦月】改め、【ジャニアリィ・ブレイヴ】はカラカラと高笑いすると両の腕を思いっきり振り上げた。
その胸部に本来なら有る筈の膨らみは、既に無い。
ついでに下の方にも工事した訳でも無いのにせいてんかんしゅじゅつ第三のアシが生えている。

「いやあ、慣れるまでバランス取れねえでやんの…。パンツの右に納めるか左に納めるかいまだに決まんねえ時あるし」

地球丸ごと浄化しても未だ余りある己の強大な【力】に気がついた時、睦月が思ったのは先ず『如何にしてあの男ディグノを欺くか?』という事のみだった。
幾ら何でもあの女好きに男はイケねぇだろ、と咄嗟に思い付き、勇者級ならではのスキル【新陳代謝過剰解放キープロンダリング】に遺伝子に干渉できる【外装突貫変身メモタルフォーゼ】を重ねて、己の身を一から造り変えた。
オマケで身体を左右対象・黄金率で仕上げ、どうにかソツのない美形に成り済ましている。

コレを一瞬で熟し、別人として己に付けられたディグノのマーカーを辿り『界』を渡った。

「…流石にあたしがここに戻るとは思いもしないでしょうよ、師匠ディグも」

あのバルサロッサさえ気付かなかった。姿
五年で慣れた城下町を、今は元・孤児の『C級冒険者』として堂々と闊歩する。
定宿もある。仕事もある。もう少し金が貯まったら、旅をしながら終の住処を探しに行こうか、と考えて…


「おー、ジャニー。依頼受けたんか?今から行くのか?いつ頃帰るんだ?手伝おうか?」
「…俺はそのどれから答えりゃあいいんだよ?あ?《火蜥蜴グレン》さんよ。因みに手伝いは要らん。タダより高いモンは無いからな…」
「いい加減、俺と逢背パーティ組もうぜぇ?そうすればそっちも高レベルの依頼も受けれるし、不測の事態には俺がキッチリ介助も片手間に熟してやるから駆け出しのお前さんにこんなイイ話も無いだろーよ。なあ、この俺が久々に誰かと組みたいなんて思うなんて衝撃的な出来事なんだぜぇ~」

いきなり現れたディグノの知り合いは戯れるように睦月に付き纏い、無理矢理に肩を組んでくる。睦月はアッパーカットの要領でグレンのアゴを軽く連続で下から小突いた。

「うるせぇ、A級のお遊びに付き合ってるヒマはねぇんだよ!俺みてぇな孤児はその日その日を食ってくのに必死なんだ。大体、何が楽しくて格下の小僧でしかない俺にそう構ってくるんだ?ほんとアンタ会う度会う度しつこいんだよ。俺は単独ソロしかやんねぇのッ!良い加減分かって‼︎そしてそろそろ上級に逆らう下っ端の気持ちを慮って!小生意気な態度が実は小心な俺の精一杯遠回しなお断り的な譲れない形式ポーズだって分かっててニヤニヤすんなあ─────っ!」
 「あはははは( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽカーワーイーイー‼︎いっそ諦めろォ俺は一度こうと決めたら牙狼ファング並に食らい付いて離さん!」
「ヤメロ、何を口説いてんだ炎熱の二つ名持ちが!むしろ勢いはそのまま女に向けて光の速さで嫁を貰え‼︎そもそも俺は遥かなる高みなんぞ目指してないんだよ!何度言ったら理解すんだ、この脳筋がッ‼︎はーなーせーぇっ!」

そんなハートフルなやり取りをハスキーな掠れ声がいきなり遮った。





「そうよう────────その子は『五年も前』から私のお手付きなんだから」






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