今更、日常に戻れる気がしない

葉室ゆうか

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今更、普通の女の子って草生える⑨

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妹が、消えていこうと、していた。


「なら、何で…おま…お前が。お前だけが、そんな」


両親の優先順位なら自分達だって低い。そんな、親の愛を両の手で掬い上げる様に大事にしなくてもいい。
そんな大人びた表情カオをして微笑むのなら、恨んでもしがみ付いて欲しいのに。


『はは、分かってた。もう、過去の自分には戻れない。実はそれを【覚悟】して、この世界に戻って、きた』



右の腕を左で包む様に睦月は小さく、小さく丸まった。


『数え切れないくらい、殺した。人の形をした者も、抵抗なく殺せるまで戦った。その力を持ったままの自分が、恐ろしい存在のままの自分が、平気で、本来なら属するこの、世界に、平気で……平気で生きていけるのか』



それが【ムリ】だった事くらい、この姿を見ていれば俺にだって分かる。
ははは、と力無く笑う睦月が途轍もなく悲しかった。



「なら、せめて覚えておけ。俺は、俺だけは、お前が何をどうしようと受け入れる。今も過去もこれからも。……お前は、俺の、妹だから」


不甲斐ない兄で済まない。こんな事態にまでならないと、手を差し伸べる事すら出来なかった。






『…ありがとう、【お兄】』




行くのか、もう誰の手にも届かない場所に。
一人で行ける程、一人で決められる程、俺の妹が俺を追い越して、軽やかに旅立って行く。



遺されたのは、僅かな【光】の残滓だけだった。






































屋台の串で尻を刺される日が来ようとは夢にも思わなかった。

「…地味に痛いんだが」
「分かっててやってんだよ、団長さん。気ィ抜け過ぎなんじゃねえの?そんなんじゃダンジョンの魔物の暴走スタンピートでガブリエル~」

少年は呆れ顔で第二騎士団長のそれを右手を開いて魔物の口に見立てて挟んだ。

「ヤメテクレ。幾ら女っ気が無いとは言え、俺に衆道の嗜みは無いんだ」
「おう…そうなのかー。団長さんイイ男だから、罷り間違って抱かれてもイイと思ったのにな」
「…………」
「冗談だよ、バカ」

最近城下に行くとよく絡んでくるこの少年に何故か和まされている。
何処と無く『彼女』に似た雰囲気に心が緩み切っている自分が居て。
本当に、少年趣味はない……筈なんだが。

、お前さえ良ければ従騎士を目指す話を考えて貰いたいんだが」

気が付けば、事務員やら邸の使用人にやらと何かと『彼』を勧誘をしている自分が居た。
その心の動きを不思議に思いながらも新たな誘い文句を投げ掛けると、


「─────まあ、気が向いたらな」


と、毎回同じ断り文句で受け流される。もう乾いた笑いしか出てこない。


そして彼は右手を上げて決まってこう言うのだ。


「もうな~んにも縛られないでイイんだぜ?顔を上げていこうよ、なあ
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