11 / 11
10
しおりを挟む早朝から護衛の人達が起き出して出発の準備をしている音に目が覚めた。
この世界へ来たころから気になってたんだけど、なんで僕は食事は必要ないのに睡眠は必要なんだろう?
考えても仕方がないのでまだ寝ているシルビアを起こさないようにテントから出る。
「シロ、もう起きたのかい?」
シルビアのお父さんはポワールさんという名前らしい。護衛の人がそう呼んでいるから間違いないだろう。
ポワールさんもとてもいい人みたいで、僕を優しく撫でてくれた。
「それにしてもまだ子犬なのによく森で生き延びれたね、シロは運がいいのかもしれない。」
そういうとポワールさんは僕を撫でるのをやめて、護衛の人達と一緒に出発の支度にとりかかる。
僕はすることもないので、みんなから少し離れたところで無属性魔法を試してみることにした。
18人全員が持っていたのかはわからないけど、結構倒したから一気にレベルが2になっている。
でも所詮2だからとんでもないことにはならないだろう。
INTとMPが結構上がって来たので、魔力を込めすぎないようにして手頃な場所に生えている気に向かって魔法を放つ。
すると魔力の塊が僕から出て木にドンッと音を立てて打つかって消える。
「なるほど、純粋な魔力を扱う魔法ってそのまんまだな。」
もう一度、さっきよりも同じ量の魔力を圧縮して、矢のようにして打つイメージを持って放つと、魔力の塊が矢の形になって飛んで、木に少しだけ突き刺さってしばらくすると消える。
「あんまり派手じゃないけど、レベルが上がって行ったらいろいろできることも増えるかな?」
とりあえず当面はもっとレベルの高い魔法を戦闘では使うことにしよう。
今まで倒して来た魔物から無属性魔法を得ることはできなかったから、そう簡単にはレベルも上がらないだろうしね。
「シロー!どこにいるのー?」
シルビアの呼ぶ声が聞こえて来たので戻ると、起き出して来たようで僕を探していた。
足元まで駆けていくとシルビアが嬉しそうに僕を抱え上げる。
「どこに行ってたの?あんまり離れたら危ないよ?」
「ワンッ!」
「さぁ一緒に朝ごはんを食べようね。」
焚き火の側へ行くと、ポワールさんがシルビアに朝食のパンとソーセージを渡す。
昨日の夜と同じようにシルビアは僕に器に入ったミルクをくれる。
「ほらシロ、朝ごはんだよ。」
「シロ、お前は肉はもう食べるのかい?」
ポワールさんは僕に干し肉を千切ってくれた。
「ワンワンッ!」
「すごい、シロはお肉ももう食べれたのね。」
本当は何も食べなくてもいいんだけど、気分転換にはなるし、味はわからないけど干し肉を食べる。
食べるとは言っても飲み込んだ後に消化吸収してるだけなんだけど。
「旦那様、そろそろ森を抜けて、今日の昼過ぎには街へ戻れるはずです。」
「そうか、今回の旅はいろいろあったし、早く戻ってゆっくり休みたいな。食事が終わり次第出発しよう。」
「わかりました。」
今日には街に着くのか!ずっと森での生活だったから、なんだか楽しみだなぁ。
それからしばらくして準備が整うと、馬車で街へ向かって出発した。
街道にはあまり魔物は出ないのか、それからは森を抜けるまで一度も魔物に遭遇することなく順調に移動は進んだ。
「シロ、お家に帰ったらいっぱい遊ぼうね!街にはいろんな面白いものがあるんだよ!」
「ワンッ!」
「そういえばシロは私たちが話しかけるときにいつも吠えて返事をするなぁ、相当賢いみたいだ。」
たわいもない会話をしながら(僕は吠えてるだけだけど)そのまま進み続けると、馬の行者さんが声をかけてきた。
「旦那様、街が見えて来ましたよ。」
窓から外を覗くと、外壁に囲まれた大きな街が見えた。
アハヴァー様が弱い僕を送ってくれた森だけに、近くに大きな街なんてないと思ってたからけっこう以外だな。
といっても森自体が相当大きかったからそんなに近くにあるわけでもなかったか。
しばらくすると外壁の門にたどり着いて、そこに立っていた衛兵に止められる。
「身分証明証を。」
行者の人が何かカードのような物を見せると、衛兵の人はそれを確認してから返す。
「ポワールさんでしたか。久しぶりの家族の旅はどうでしたか?」
「行きは良かったんだけどね、帰りに盗賊に襲われて大変だったよ。」
「本当ですか!?無事で何よりです。どうぞお通りください。」
短い会話をポワールさんが交わすと、馬車は街へと入って行った。
街にはたくさんの人がいて、みんな思い思いの場所へと歩いている。
いろんなお店が立ち並んでいる場所を通り過ぎると、今度は住宅街へと入って行く。
しばらくすると、他の家よりは大きくて、もう少し離れたところに立ち並んでいる大きな屋敷よりは少し小さい屋敷の前で馬車は止まった。
「シロ着いたよ、ここがあなたの新しいお家だよ!」
シルビアはそういうと、僕をまた抱きかかえて門をくぐって屋敷の中へ入って行った。
屋敷の入り口には執事らしき人とメイドさん2人が待ってくれていて、僕たちを中へ入れてくれる。
執事さんとポワールさんの話を聞いてみると、ポワールさんは商人をしているみたいだ。
「お父さん、シロは私の部屋で寝てもいい?」
「あぁいいよ、シロも毛は綺麗だけど森にいたし、一緒にお風呂に入っておいで。」
「わかった!シロ、今から綺麗にしてあげるからね。」
そういうとシルビアは僕をお風呂に連れて行ってくれて、体をしっかり洗ってくれた。
本当は体に汚れがついても吸収して綺麗にできるし、汚れてなかったんだけど、お風呂はすごく温かくて、シルビアが体を洗ってくれると気持ちがよかった。
ずっと1人でいたから、こうやって誰かと一緒に時間を過ごせるのはすごく嬉しい。
お風呂から上がると夕食を大きな部屋で食べたけど、シルビアのお母さんはいなかった。
部屋を見回すと絵画が立て掛けれらていて、そこにはポワールさん、シルビアと一緒に1人の綺麗な女の人が描かれていた。
恐らくシルビアのお母さんはもう生きていないんだろう。
こんなに小さいのに、寂しい思いをしてきたんじゃないかな。
シルビアがそんな思いをしないで済むように、僕が側にいてあげたいなと強く思った。
ずっとこの街にいられるかはわからないけど、ここにいるまでは僕が彼女の支えになろうと決意した。
食事が終わった後は僕はシルビアの部屋でしばらく一緒に遊んだ。
上手く人のいる街へ入ることができて済む場所も見つかった。
これからアハーヴァ様から与えられた使命をどう果たすことができるか、眠くなるまでシルビアに抱きしめられながら僕は考え続けた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)
葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。
だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。
突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。
これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いです!!!!!!!
定期的にでもいいので更新してくれるとありがたいです!!!!