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06.運命を探しているの
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「運命を探しているの」
いつか出会えるかもしれないから。
マデリンの満たされない心を満たしてくれるそれに出会うために。
「運命に出会えたらどうするんです?」
「もちろん、買い取る。そして、次は誰にも奪わせない」
マデリンは最後の猟銃を構えて言った。マデリンはもうすぐ二十一歳になる。
もう、何もできないと嘆く年ではなくなった。
「今日も会えなかったみたい」
「そうですか。いつか、出会えますように」
「ありがとう。また、ひと月後」
マデリンは手をひらひらと振って、店を出た。
屋敷に戻ると、鬼の形相をした父がマデリンを待っている。
これも五年続いていることだ。
「おまえ、また猟銃を見に行ったそうだな!」
「はい。でも、狩りには行っていません。いいつけは守っています」
「口答えして……! 足を出しなさい!」
父が怒鳴る。
マデリンは小さく息を吐いて、ドレスのスカートを捲り上げた。
これもいつものこと。
マデリンは静かに瞼を落とす。
すぐに鋭い痛みがマデリンのふくらはぎを襲った。
パシンッ。
いやな音が耳に響く。――父が、マデリンの足に鞭打っている音だ。
猟銃店に行った帰り、彼はこうしてマデリンを鞭打つ。
五年もすると慣れるものだ。
こんなことをしても意味はない。
父は気が済むまでマデリンの足を鞭打つと、言った。
「来週、王族主催の狩猟大会が開催される。おまえは絶対に馬に乗るな」
「わかっています。今まで乗ったことなんてないじゃないですか」
すべてを奪われた日から、マデリンは一度だって馬に乗っていない。
父は何をおそれているというのだろうか。
マデリンが部屋に戻るとすぐに侍女が足の手当をはじめる。
。
「いつも準備がいいわね」
「毎月のことですから。もうすぐ公爵夫人になるというのに、旦那様はなんでこんなことをなさるのでしょうね……」
侍女はマデリンの足を手当てしながらため息をついた。
「鬱憤を晴らすためよ。きっとね」
理由なんてもうどうでもいいのだろう。
マデリンを鞭打つことで、毎月スッキリとした顔をするようなった。それが答えだ。
「本当におかわいそうに……」
「なに? 同情してくれるの?」
「それはもう。唯一の救いは我慢さえすれば公爵夫人になれることですよ」
「そうね」
マデリンは曖昧に笑った。
侍女に同情されるくらい、マデリンの現状は芳しくなかったからだ。
「ルイード様もルイード様です……」
「あの人はそういう人よ。昔からね」
「次は伯爵令嬢だそうですよ。いいのですか?」
「いいも何も、二人でベッドインしているところに殴り込みに行く?」
マデリンは肩を揺らして笑った。
(少しはすっきりするかしら?)
ルイードの浮気は今に始まったことではない。
始まりは婚約したひと月後だった。
当時、可愛いと噂だった子爵令嬢を妊娠させたのだ。結局子どもは流産してしまったのだが。
それ以降、彼は五年間マデリンに見せつけるようにいろんな女に手を出し続けている。
もちろんすべて本気ではない。もって一年。短ければ一度きり。
マデリンはルイードに興味を持ったことはない。彼が何人と浮気をしようがどうでもよかった。
どうせ、そんなことでこの婚約は白紙には戻らないのだ。
ならば怒るだけ無駄というもの。
***
狩猟大会は王都の貴族たちがこぞって参加した。
もちろんルイードもその中の一人だ。しかし、彼は狩りには参加しない。野蛮なことを嫌う彼の目的はただ一つ。
マデリンは噂の伯爵令嬢とともにテントに入っていくルイードの後ろ姿を横目で見て、小さく息を吐いた。
ひとりで佇んでいると、声をかけられたを――アウルだ。
「やあ、マデリン。元気か?」
「ごきげんようアウル」
アウルな笑顔は五年間何一つ変わらない。
「大会には出ないの? 優勝者には大きなエメラルドが与えられるらしいわよ?」
「そんなものには興味がないからな」
「あなたが興味なくても、婚約者さんが興味あるのではなくて?」
「さあ? どうだろうか」
「どうだろうかって……。そういえば、婚約者さんは? 今日は来ていないの?」
「来ているはずだ」
「大会に出ないなら、彼女の側にいてあげたほうがいいんじゃない?」
こんなところでほっつき歩いているくらいなら、側にいたほうがいいと思ったのだ。
婚約者というのはそういうものだろう。
「君の婚約者は?」
マデリンはその問に肩を竦めた。
「人の事情に口を出すのは野暮ね。それでなんの用?」
「用がないと話しかけちゃいけないか?」
「あなた、暇なの?」
「君ほどじゃない」
マデリンとアウルは顔を見合わせて笑った。
五年間、二人はこんなくだらない話しかしていない。けれど、この会話の応酬が楽しいと感じる。
「そうだ。新しい猟銃を手に入れたんだ。見に来ないか?」
「猟銃? 私、もう狩りはしないの」
「狩りはしなくても、持つくらいはいいだろう?」
「そうね」
マデリンは頷き、アウルについて行った。
いつか出会えるかもしれないから。
マデリンの満たされない心を満たしてくれるそれに出会うために。
「運命に出会えたらどうするんです?」
「もちろん、買い取る。そして、次は誰にも奪わせない」
マデリンは最後の猟銃を構えて言った。マデリンはもうすぐ二十一歳になる。
もう、何もできないと嘆く年ではなくなった。
「今日も会えなかったみたい」
「そうですか。いつか、出会えますように」
「ありがとう。また、ひと月後」
マデリンは手をひらひらと振って、店を出た。
屋敷に戻ると、鬼の形相をした父がマデリンを待っている。
これも五年続いていることだ。
「おまえ、また猟銃を見に行ったそうだな!」
「はい。でも、狩りには行っていません。いいつけは守っています」
「口答えして……! 足を出しなさい!」
父が怒鳴る。
マデリンは小さく息を吐いて、ドレスのスカートを捲り上げた。
これもいつものこと。
マデリンは静かに瞼を落とす。
すぐに鋭い痛みがマデリンのふくらはぎを襲った。
パシンッ。
いやな音が耳に響く。――父が、マデリンの足に鞭打っている音だ。
猟銃店に行った帰り、彼はこうしてマデリンを鞭打つ。
五年もすると慣れるものだ。
こんなことをしても意味はない。
父は気が済むまでマデリンの足を鞭打つと、言った。
「来週、王族主催の狩猟大会が開催される。おまえは絶対に馬に乗るな」
「わかっています。今まで乗ったことなんてないじゃないですか」
すべてを奪われた日から、マデリンは一度だって馬に乗っていない。
父は何をおそれているというのだろうか。
マデリンが部屋に戻るとすぐに侍女が足の手当をはじめる。
。
「いつも準備がいいわね」
「毎月のことですから。もうすぐ公爵夫人になるというのに、旦那様はなんでこんなことをなさるのでしょうね……」
侍女はマデリンの足を手当てしながらため息をついた。
「鬱憤を晴らすためよ。きっとね」
理由なんてもうどうでもいいのだろう。
マデリンを鞭打つことで、毎月スッキリとした顔をするようなった。それが答えだ。
「本当におかわいそうに……」
「なに? 同情してくれるの?」
「それはもう。唯一の救いは我慢さえすれば公爵夫人になれることですよ」
「そうね」
マデリンは曖昧に笑った。
侍女に同情されるくらい、マデリンの現状は芳しくなかったからだ。
「ルイード様もルイード様です……」
「あの人はそういう人よ。昔からね」
「次は伯爵令嬢だそうですよ。いいのですか?」
「いいも何も、二人でベッドインしているところに殴り込みに行く?」
マデリンは肩を揺らして笑った。
(少しはすっきりするかしら?)
ルイードの浮気は今に始まったことではない。
始まりは婚約したひと月後だった。
当時、可愛いと噂だった子爵令嬢を妊娠させたのだ。結局子どもは流産してしまったのだが。
それ以降、彼は五年間マデリンに見せつけるようにいろんな女に手を出し続けている。
もちろんすべて本気ではない。もって一年。短ければ一度きり。
マデリンはルイードに興味を持ったことはない。彼が何人と浮気をしようがどうでもよかった。
どうせ、そんなことでこの婚約は白紙には戻らないのだ。
ならば怒るだけ無駄というもの。
***
狩猟大会は王都の貴族たちがこぞって参加した。
もちろんルイードもその中の一人だ。しかし、彼は狩りには参加しない。野蛮なことを嫌う彼の目的はただ一つ。
マデリンは噂の伯爵令嬢とともにテントに入っていくルイードの後ろ姿を横目で見て、小さく息を吐いた。
ひとりで佇んでいると、声をかけられたを――アウルだ。
「やあ、マデリン。元気か?」
「ごきげんようアウル」
アウルな笑顔は五年間何一つ変わらない。
「大会には出ないの? 優勝者には大きなエメラルドが与えられるらしいわよ?」
「そんなものには興味がないからな」
「あなたが興味なくても、婚約者さんが興味あるのではなくて?」
「さあ? どうだろうか」
「どうだろうかって……。そういえば、婚約者さんは? 今日は来ていないの?」
「来ているはずだ」
「大会に出ないなら、彼女の側にいてあげたほうがいいんじゃない?」
こんなところでほっつき歩いているくらいなら、側にいたほうがいいと思ったのだ。
婚約者というのはそういうものだろう。
「君の婚約者は?」
マデリンはその問に肩を竦めた。
「人の事情に口を出すのは野暮ね。それでなんの用?」
「用がないと話しかけちゃいけないか?」
「あなた、暇なの?」
「君ほどじゃない」
マデリンとアウルは顔を見合わせて笑った。
五年間、二人はこんなくだらない話しかしていない。けれど、この会話の応酬が楽しいと感じる。
「そうだ。新しい猟銃を手に入れたんだ。見に来ないか?」
「猟銃? 私、もう狩りはしないの」
「狩りはしなくても、持つくらいはいいだろう?」
「そうね」
マデリンは頷き、アウルについて行った。
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