【完結】5年続いた男女の友情、辞めてもいいですか?

たちばな立花

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63.狩猟大会

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 そして、首を傾げる。

「いいえ。絶対にあの男の計画は阻止しましょう」
「ああ。もちろんだ」

 アウルは一度頷くと部屋を出ていった。
 残された部屋でマデリンは拳を握った。

(もう、何一つ奪わせないわ)

 それが、トルバ家の――父の意思とは違っても。
 しばらくして、扉が5回叩かれた。

 ***

 髪を高いところでまとめ、帽子の中に入れた。狩猟のときはいつも高いところで一括りにしていたから、慣れている。
 しかし、なぜかいつもよりも心許ない。
 従者用の服は少し肌触りが悪い。
 しかし、動きやすかった。

「本当に行かれるのですね?」

 侍女は潤んだ瞳でマデリンを見上げた。
 マデリンは侍女の頭を撫でる。
 彼女がこれほど心配そうな顔をするのも無理はない。
 今日は狩猟大会だ。
 両親と兄は先ほど出かけていった。
 仮面舞踏会の参加は彼らにはバレずに済んだ。父は最近おとなしくしているマデリンに満足し、「おまえは女らしくおとなしくしていればいい」と言い残し、出かけた。
 後ろ姿に舌を出したことは秘密だ。

「ええ、行ってくるわね。何度も迷惑をかけてごめんなさい」
「いいのです。でも、無理はなさらないでください」
「大丈夫よ。もし、バレたら、みんなで口を揃えて言うのよ?『気づいたらいなかった』って」
「はい」

 マデリンの勝手に使用人たちが叱責されるのは問題だ。
 だから、バレた時は知らぬ存ぜぬを貫いてほしい。
 しばらくして、屋敷の裏門に一台の質素な馬車が到着した。

「行かないと」
「お嬢様、どうかお気をつけて」
「心配性ね。大丈夫よ」

 マデリンは侍女にヒラヒラと手を振ると、馬車へと乗り込んだ。
 馬車にはルート家の使用人が乗っていて、頭を下げる。

「お久しぶりでございます」
「今日は迷惑をかけるわね」
「いえ、主人のために参加していただけると聞いております」
「アウルがそんなことを?」

 マデリンの顔を立ててくれているのだろうか。彼らしいと言えば彼らしい。

「このまま大会の会場に向かい、アウル様と合流予定です。ルート家のテントに入るまでは、私の後ろをついて来てください」
「わかったわ」
「言葉遣いと声の高さにもお気をつけください。どこで誰が聞いているかわかりません」

 使用人の真面目な声色にマデリンは神妙に頷く。そして、低い声で言った。

「わかりました」

 使用人は満足そうに頷くと、淡々とした口調で今日のことを説明していった。

「会場についてからは、絶対に帽子を脱いではなりません」
「はい」
「会話は極力ひかえてください」
「はい」
「会場ではアウル様の身の回りの世話をお願いします。雑用はわれわれが行いますので」
「わかりました」
「どうか、お気をつけて」

使用人は深く頭を下げた。
 馬車が到着し、マデリンは従者として、荷物を持って貴族のあいだを縫っていく。誰もマデリンに興味を示さなかった。
 いつもなら挨拶を交わす令嬢も、視線すら合わせない。まるで空気のようだ。
 それがなんだか新鮮で、マデリンの頬はわずかに緩んだ。
 ルート家のテントに入ると、先に到着していたアウルが使用人たちに指示を出し、荷物を配置していたところだ。

「来たか。思ったよりも早かったな」
「忘れていた荷物をお持ちしました」

 先導していた使用人が足元に荷物を置き、頭を下げる。マデリンも倣って頭を下げた。
 アウルは目を細めて笑うだけだ。

「私たちは馬の準備をしてまいります」
「頼む」

 使用人の言葉にアウルは頷いた。すると、中を準備していた使用人もぞろぞろと彼の後をついていく。
 マデリンが慌てて後ろについていこうとしたとき、先頭に立っていた使用人が立ち止まって振り返った。

「君はアウル様の準備を手伝いなさい」
「は、はい」

 気づけばテントの中にはマデリンとアウルだけだ。
 アウルは猟銃を手に取ると、マデリンに手渡す。

「今日の狩猟は気楽にやろう」
「上位を狙わないのですか?」

 マデリンの問いにアウルは笑った。
 マデリンの慣れない言葉遣いに笑ったのか、それとも頑張って出している低い声に笑ったのか。
 はたまた、マデリンの問いに笑ったのかはわからない。
 アウルは猟銃を確かめながら、なんともないような雰囲気で言う。

「大会はこれが最後ではないからな。今日は腕慣らしといこう」

(アウルが本気を出せば、上位も狙えるのに)

 しかし、今日はどんなことが起こるのかわからない。
 獲物を追っている場合ではないのだろう。

「今日はふだん参加しない貴族たちも参加するだろう」

 マデリンはアウルの言葉に頷いた。
 父もそのうちの一人だからだ。いつもは最初だけ。そしてすぐに休憩所に戻ってきて、似たような貴族たちと会話に耽っている。
 そういう貴族たちが王太子へのアピールで狩場に入るのだ。
 アウルがマデリンの手を取った。
 突然のことにマデリンは目を丸くする。
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