事故破産

双葉紫明

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第7話

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 牛乳配達中村の車屋さんと少し事故の話をした。
 相手が100kmだしてようが200km出してようが、過去の判例は出てった方が悪くなってる。
 保険会社同じなら交渉の必要がないから判例に倣ってハンコ押すだけだよ、災難だったけど。
 非情な宣告。
「そりゃあ、ゴネても無駄だな」
 ゴネるわけでもない。
 急に出たわけでは、ない。
 飲み込んで、そうかー。
 暗い気持ちになる。
 しかしもともとスピードを出さない僕は、事故後もたくさんの強引な追い越しに遭う。
 それで検証すると、追い越しをしていたと仮定すれば事故状況とぴったり合う気がする。
 そうでもなけりゃあんなぶつかり方はありえないし、実際相手は言ってるんだから。
 しかしドラレコもなく僕も見てはいないから、相手が引っ込めた以上はあくまで憶測の域を出ない。
 ブログに少し事故の事を書くと、車をくださるという有り難い申し出や、様々なご提案をいただいた。
 ダメもとでも結果はどうあれしっかり主張せねば。
 保険会社に事故状況の図面を返送し、さらなる検証を繰り返す。
 やはり注意深く左折し、ウインカーを切り替え、右折を開始、右に切ったハンドルを左に戻された形で下り坂を数メートル転がって止まったのが国道反対側の路肩。
 相手の主張通りなら、僕は相当なスピードで斜め横断気味に直近左右折をしようとした事になるが、それは事実とまったく異なる。
 少なくとも100m以内に後続車が居ない事を確認して国道で一度車を縦に向け、対向車が来ないのを確認したところまでしっかり記憶に残っている。
 さらには「ここ右折するのにどうしても対向車線の右折レーンをまたいじゃうけど、それってどうなのかな?右折禁止ではないし」などとぼんやり思いながらなるべく下の方で右折を開始した事も思い出した。
 これは相手の追い越しを僕が急に出てきたから僕を追い越しそうとしていた、と解釈することすらお人好しと言える状況だと思う。
 証言を変えてる自体、そこに致命的な過失が潜んでるんじゃないか?
 友達からも間にもう一台居たんじゃないか?とラインを貰った。
 居て、事故を見てその場に残ってくれてたら、今の状況は無かっただろう。
 しかし証明しようがない。
 名乗り出てくれないかな。
 そんなやりとりをした後、事故があった隣村の商業施設のレジで、あれ、大丈夫だったんですか?
 と声を掛けられた。
 なんだかんだ言ってると、もうひとり来て、どうしたんですか?みたいになった。
「わたしの聞いた話だと、遅い車が居て追い越したら牛乳屋さんとぶつかったって」
 え?そんな話になってるんですか?
「わたしは聞いただけだから」
 誰に聞いたか聞くべきだったが、次の客が来て話が終わってしまった。
 しかし僕しか聞いてない筈の「追い越し」が噂話で出ている。
 これは客観的証言への糸口じゃなかろうか?
 しかし、僕は現場に駆けつけた駐在には「相手は追い越ししてて、ブレーキ間に合わなかった、って言ってましたよ」とは伝えた。
 田舎の駐在さんはだいたい聞かれたら喋ってしまう。
 そこが発信源でなければ、いや、現場に集まった人の何人かにはそう言ったかもしれないから、そこからかもしれない。
 しかしもしそうでなくて、追い越された車が地の人だったり目撃者が居たとしたら、それで過失がどうなるであれ大きく真実に近づいたうえでの示談交渉が出来るんじゃないか?
 そんな微かな希望が芽生えた。
 まずもう一度話を聞いて発信源を辿ってみよう。
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