げてもの

双葉紫明

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八岐の大蛇

第10話

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 川を猛スピードで転がり落ちる巨岩。
 しかし平滑な道路と違い、あちこちの岩にバウンドし、土を削り、木を薙ぎ倒すうち、徐々にその速度を落とした。
 そして川のうねり、幅の狭い場所で岩と岩の間に挟まって止まった。
 これでなんとかそれ以上の被害の拡大は免れた、そう思えた。
 しかし悪い事に、それから台風が来た。
 あちこちの沢から注ぐ土砂や倒木を含む雨水、それがあっと言う間に川を増水させ、激しい濁流を作った。
 まるで一匹の大蛇の様に猛る川、さらに悪い事に、亀甲石が薙ぎ倒した木々まで下流に烈しく押し流し、あの場所でつかえた。
 それはダムとなり、大蛇がとぐろを巻くみたいにまあるく大量の水と土砂を溜め、周囲の町を水浸しにしてからあえなく決壊した。
 その濁流は下流の街の川に注ぐ水路をことごとく逆流し、大規模な水害を引き起こしていった。
 やめてくれ、そっちにはわかれた妻と子どもたちが居るんだ。代わりに僕が死ぬから。お願いだ。
 祈り虚しく下流の街程被害は大きくなるばかりだった。

 それは山から襲う津波の様な、いや、頭を八つに分けてそれぞれ猛り狂う八岐の大蛇さながら、逃げるまもなく人々の暮らしを奪い去って、馬鹿みたいに静かな広大な水たまりを作って鎮まった。
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