もぐりのサキュバス

せいいち

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回想:腹ペコサキュバス合コンに行く

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※先輩の昔の話。モブ男×先輩


 俺が恋人に求める条件はいくつかあった。そのうちの一つは性欲が露骨でないことだ。
「浅香さん、合コン参加せん?」
「行く」
 つまり合コンに参加するような性欲丸出し男は最初からアウトってわけ。
 真実の愛が欲しいなら今夜以降の性交相手を探すための合コンには参加する意味がないが、食事をするなら相手は何でもいい。そういうわけだから俺は今俺を誘った奴主催の合コンに参加している。俺は特に誰と仲良くしているわけではないから奴は数合わせで俺を呼んだのだ。相手の選択肢はもとより少ないだろう。最後の頼みかもしれない。断るのは可哀想だし。腹が減っていた。
 乾杯の前に人間の品定めをする。性欲塗れの男三人、向こうは男なんて選び放題と言わんばかりの女四人。上手の男女二人が主催で、男のほうはワンチャン狙ってる。あっちの女子たち、こっちの事情に付き合わされて可哀想になってくるな。今回は当たりだ。男がフラれる可能性は高い。
 とりあえずビールなんて最近の学生は馬鹿らしいことは言わない。何を飲んだって美味しくないがカルーアミルクにした。これならまだましだ。動物の体液を使ったカクテルだから、精液に成分が一番似ている。
 しばらくは茶番だ。お喋りを聞きつつカルーアミルクをちびちび飲み、最も下手に座っている俺が時折追加の注文を取り、たまに時間を潰す。
 飯の話を抜きにして興味深い人間が一人だけいた。話もせずにスマホを見たり飯をひたすら食ってる、あからさまに付き合わされましたという表情をしてる女。俺を見て「男でこんな美人がいるなら参加して得したぜ、飯もタダだし」と思ってる。俺はああいう人が好みだ。あんたが男だったら良かったんだけどな。でも俺は生涯の伴侶なら男がいい。俺は生来サキュバスだから、男と生きる喜びを共にしたい。
 合コンは特に盛り上がること無く、恙なく終わった。上手の男二人は会計を終えた後もしばらく主催の女に話しかけていた。そもそも飯にしか興味がない女は主催の女に金を渡して会計を終える前にさっさと一人で帰っていった。残った女二人は主催と一緒に帰るつもりらしい、それを待っている。下手の男、俺の隣に座っていた男は話に加わろうとしているが無視されている。最も都合がいいパターンだ。
 一人の男の肩を組み引っ張っていく。腹を満たすだけなら相手が誰だっていい。
「なー。二人で飲み直さない?」
 男は誘いに乗った。あともうちょっとで俺も腹を満たせる。無理にでも気分を上げるしかなかった。
 男二人の二次会は酒とつまみを買い男の部屋でする。飲み屋でわざわざ高い酒を飲む気になれない、という話だった。
「なんで今回参加したの? あの二人が首謀者だろ? あんま仲良くないみたいだし。もしかして数合わせ?」
「そうだよ。そっちは?」
「俺も。たまたま居酒屋で飯を食う気分だったからさ。たまには女の子の顔もジロジロ見たかったしね」
「あんま食ってなかったじゃん」
「よく見てるんだぁ。すごいな」
 そういう会話をしながら男のアパートになだれ込んだ。酒が入っていて理性のハードルが低い。二次会は缶チューハイと瓶の酒のちゃんぽんの予定である。
 サイドテーブルに買ったばかりの酒とつまみを並べ、好き勝手に開けていく。さっさと酔い潰していただかないといけない。
「あの中でさぁ、ぶっちゃけ誰狙ってたの?」
「……スズキアヤって、明るめの茶髪の」
「あー、左から二番目の子だっけ? 主催の隣の」
「そう」
「ふーん」
「別に、誰も。人と話したり、飯食いに来ただけだしね」
「端っこの……名前忘れたけど、けっこう見てたと思ったんだけど」
「ああ、あの子? 勝手に飯食ってさっさと帰って、たまに人と喋って。ああいう生き方してる子が結局一番いいなって思ってさ。付き合いたいかじゃなくて、人間としてああいう生き方が羨ましいなってだけ」
 酒も進んで俺も饒舌になる。人に飲ませるばかりじゃなくて自分も飲んでるから、理性無くおしゃべりが際限なく続く。さっさと酔わせて飯にするんなら、気分良く相手に喋らせた方がいいんだけど。
「結局さぁ、人間とのつながりが欲しくて来たんだろ? 女目当てだけじゃなくてさ、あのお友達ともお友達らしくしたかったから来たんだ」
「お説教かよ」
「いや、自戒」
 これ以上自分の口が余計なことを言わないために酒をさらに一口呷る。チューハイはバチバチしていてまずい。そろそろ俺の理性も限界だ。腹減ってるし。魅了と催淫の魔法を意識的にかける。
 男はむっつり黙ったままだった。こちらがお喋りするしかないらしい。困ったね。
「……あれさ、ちゃんと食べれた? 飯」
「割り勘した分は食えなかったな」
「そりゃぁ、女子は参加料一定でそれ以外こっち持ちだもん。よく食う奴もいたし」
「確かに」
 けらけら笑い始める。もうちょっとで理想的な酩酊に陥る。催眠が効きやすく、記憶の辻褄が合いやすい。ここでは暫く暮らすつもりだから、あまり不審な動きはしたくない。既に不審だって? うるせえな。
 もうしばらくお喋りをする。主に得られなかった女の話だ。性欲剥き出しだった男が性欲を持て余した男になるように。男が現実と酷似した夢を見られるように。
「あ、勃起してる」
「……あ?」
 俺が指摘したとき既に、男は催眠と催淫にかかりきっていた。あとは食うだけの状態だった。
「抜いてあげよっか?」
 男には俺が理想の女に見えていた。
 玄関先では俺の分身があれこれ言いつつスペアキーで戸締まりをしている。アリバイ作りだ。男は俺――が変身した女に夢中で気付いていない。
 男は自らズボンを脱ぎ、俺に覆いかぶさった。
 一発あっという間に出して、続いてもう一回射精するために腰を振っている。あまり美味しくはないし、酔っ払った乱暴なセックスだ。それでも腹が減っているからこいつとヤるしかほかに道がない。選択肢はあまりないから、食うだけなら贅沢は言ってられない。
「よぉしよし、いっぱい出たな♡ ほーら、もうちょっと頑張ろうぜ♡」
 もう少し魅了催淫を追加で入れてやる。どうせなら欲求不満気味だった彼からいっぱい搾り取ってやりたい。五発ほど連続で搾り取ったところで、心臓の鼓動がいよいよヤバくなってきた。そろそろ死ぬな。酔っぱらっていてこれなら上々だ。やめにするか。
 死ぬ程は吸わないことにしている。後処理が面倒くさいからだ。少なくとも明日の朝までは生きているだろう。その後は知らない。男を回復体位に寝かせ、ある程度身体を綺麗にしてやる。服を着せたりゴミの片付けをしたり、死んだとしても「ああ酔っぱらって酒飲み過ぎてそのままゲロ詰まらせて死んだんだな」と思われる程度の片付けだ。
 そして、最後に。サキュバスには現実的な肉体が存在しない。家に帰るのは分身の俺がやった。ここにいる俺がまたいちいち繰り返さなくていい。不自然だ。
 家に帰るのは一瞬だった。腹八分目の身体を自室のアパートのベッドに落とす。俺も酔いが回ってきた。酒を飲み過ぎたな。ちょっと眠ることにした。
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