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1 ぬくもり妖怪鍼術院
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ただ寝ただけなのに、朝起きたら何だか体が、すご~く軽くなった事はありませんか?
それは、【妖怪二寸坊師】の仕業かもしれませんよ?
◇◇◇
《ポッポ!ポッポ!ポッポ!》
「二寸さん。終業の時間になりました。診察室の掃除をしましょう」
「『は~い、院長』」
「へっ?皆さんを呼んでませんが⋯」
「へっ⋯じゃありませんよ。院長、全員が二寸ですよ⋯」
「ボケてるな」
「ふふふ⋯」
「院長、呼ぶ時は名前で呼ぶのじゃ⋯」
「あっ⋯すみません⋯では、皆さんお掃除をお願いしますね」
◇◇◇
ここは【ぬくもり妖怪鍼術院】。妖怪二寸坊師が鍼治療をする治療院です。
院長さんは、温田湊(おんだみなと)さん。二十八才の人間の男性⋯若者です。とってものんびりした人で、怒ったところを見たことがありません。
副院長さんはいますが、他の医院と兼任していて、ほとんど来ることがないので、私は会ったことがありません。えっと⋯名前は⋯忘れました。ゴメンなさい。
私は、姫花(ひめはな)。通称【ヒメ】。この鍼治療院で見習いとして働いている妖怪二寸坊師です。
私の他に先輩妖怪さんが六人働いています。もちろん皆さんも、同じ妖怪二寸坊師です。
名前は、春風さん、秋風さん、夏風さん、牡丹さん、桔梗さん、木蓮ちゃんです。
いつも、のんびり院長さんや仲間の二寸坊師達と、笑い合って楽しく働いています。
◇◇◇
「ヒメ様、診察室の掃除は何処まで終わりましたか?」
「あとは二室だけです。私が掃除をしますので皆さんは、鍼の手入れをしてください」
「では、二寸⋯ヒメちゃんは、僕と一緒に掃除をしましょう。床掃除は僕がするので、診察台をお願いします」
「はい院長さん。窓と椅子も私が掃除しますね」
お仕事のあとは、各診察室の清掃です。お客様に安心、快適、清潔に治療を受けていただくためです。
「ヒメ様、院長あとはよろしく!」
「おいおい⋯夏風⋯お前は鍼の手入れがないから、掃除を手伝いなさい!」
「え~春風⋯でも掃除は⋯」
「やめておきなさい!夏風が掃除したら、あちこち破壊しまくるんだから⋯」
「ほんに夏風は役立たずじゃのう~ほれほれ~はよう帰ってたもう⋯」
「牡丹さんも桔梗さんも酷いぞ!俺はそんなに酷くない!」
「『「はぁ⋯自覚なしか⋯」』」
夏風さん⋯掃除のお手伝いは不要ですので⋯早めの退散をお願いします。
先週は⋯掃除中に椅子を倒して破壊。三日前は窓拭きで、力を込め過ぎて破壊。そのほか、ぬくもり妖怪鍼治療院以外の二寸坊師村内でも⋯色々やらかしてます。
妖怪二寸坊師内では《二寸破壊坊師》の称号を頂きましたよね?
「夏風さんにはタオルたたみをお願いします」
「おう!院長!わかった!行ってくるぜ!」
そんな⋯やらかし妖怪の夏風さんに、院長さんは仕事を頼みました。タオルを畳むだけなので、簡単なお仕事です。破壊行為は⋯大丈夫そうですね⋯。
院長さんは夏風さんだけでなく、誰が失敗しても怒りません。『次は、気をつけましょう』と言ってすぐに許します。
本当に穏和な性格ですね。しかし、院長たる者、時にはビシッと指摘しなくてはいけませんよ!メリハリは大切ですよ!
◇◇◇
「うぉ~~!助けてくれ~!」
数分後⋯鍼の手入れや掃除をしていると⋯夏風さんのヘルプミーコールが院内に響きました。
「「「な!何事だーー!」」」
「えっ?何かあった?」
「嫌な予感がするのじゃ⋯」
皆んなが慌てて夏風さんのもとに駆けつけると⋯そこには⋯
タオルが絡まり⋯ぐるぐる巻きの状態で転がっている夏風さんがいました。
なぜ?ただタオルをたたんでいただけでは?それなのに⋯ぐるぐる巻きって⋯どうやって?
院長さんは心配そうに、私達二寸坊師達は呆れています。
「夏風さん⋯これは?この状況は?」
「おぅ⋯院長⋯タオルをたたもうと広げたらよう⋯自分の上に掛かってきて⋯抜け出そうと暴れたら絡まってしまった!いや~参った参った!がはは!」
「「「夏風⋯」」」
「「「夏風さん⋯」」」
夏風さん⋯呆れて何も言えませんよ⋯。院長さんを見ると⋯さすがに少しため息をこぼしていました。
院長さんがぐるぐる巻きのタオルから夏風さんを救出。どこもケガをしなかったようで、元気に体を動かしてます。
「ほっほっ!ほっほっ!」
「ケガはなかったようですね⋯はぁ⋯よかった」
「それじゃあ続けてタオルをたたむぞ!」
「いえ⋯タオルは僕がたたみますので、今日はもう帰っていいですよ」
「そうか?んじゃ~おっ先に~!また明日な~!」
夏風さんは元気に帰っていきました。
◇◇◇
「ヒメ様⋯夏風さんは本当に役立たずですね⋯豪快すぎ」
「木蓮ちゃん⋯そうですね⋯」
見習いの私が言うのもなんですが⋯豪快すぎというより⋯問題児ですよ⋯。取り柄は、底抜けに明るい。ポジティブの塊って⋯ところでしょうか?
「夏風⋯居るところ⋯騒動ありだな⋯」
秋風さんが⋯ボソリとつぶやきました。まさにその通りですね⋯。
◇◇◇
ぬくもり妖怪鍼術院は、今日も元気に開院しております。
皆さんも鍼治療に興味があれば、ぜひお問い合わせください。
それは、【妖怪二寸坊師】の仕業かもしれませんよ?
◇◇◇
《ポッポ!ポッポ!ポッポ!》
「二寸さん。終業の時間になりました。診察室の掃除をしましょう」
「『は~い、院長』」
「へっ?皆さんを呼んでませんが⋯」
「へっ⋯じゃありませんよ。院長、全員が二寸ですよ⋯」
「ボケてるな」
「ふふふ⋯」
「院長、呼ぶ時は名前で呼ぶのじゃ⋯」
「あっ⋯すみません⋯では、皆さんお掃除をお願いしますね」
◇◇◇
ここは【ぬくもり妖怪鍼術院】。妖怪二寸坊師が鍼治療をする治療院です。
院長さんは、温田湊(おんだみなと)さん。二十八才の人間の男性⋯若者です。とってものんびりした人で、怒ったところを見たことがありません。
副院長さんはいますが、他の医院と兼任していて、ほとんど来ることがないので、私は会ったことがありません。えっと⋯名前は⋯忘れました。ゴメンなさい。
私は、姫花(ひめはな)。通称【ヒメ】。この鍼治療院で見習いとして働いている妖怪二寸坊師です。
私の他に先輩妖怪さんが六人働いています。もちろん皆さんも、同じ妖怪二寸坊師です。
名前は、春風さん、秋風さん、夏風さん、牡丹さん、桔梗さん、木蓮ちゃんです。
いつも、のんびり院長さんや仲間の二寸坊師達と、笑い合って楽しく働いています。
◇◇◇
「ヒメ様、診察室の掃除は何処まで終わりましたか?」
「あとは二室だけです。私が掃除をしますので皆さんは、鍼の手入れをしてください」
「では、二寸⋯ヒメちゃんは、僕と一緒に掃除をしましょう。床掃除は僕がするので、診察台をお願いします」
「はい院長さん。窓と椅子も私が掃除しますね」
お仕事のあとは、各診察室の清掃です。お客様に安心、快適、清潔に治療を受けていただくためです。
「ヒメ様、院長あとはよろしく!」
「おいおい⋯夏風⋯お前は鍼の手入れがないから、掃除を手伝いなさい!」
「え~春風⋯でも掃除は⋯」
「やめておきなさい!夏風が掃除したら、あちこち破壊しまくるんだから⋯」
「ほんに夏風は役立たずじゃのう~ほれほれ~はよう帰ってたもう⋯」
「牡丹さんも桔梗さんも酷いぞ!俺はそんなに酷くない!」
「『「はぁ⋯自覚なしか⋯」』」
夏風さん⋯掃除のお手伝いは不要ですので⋯早めの退散をお願いします。
先週は⋯掃除中に椅子を倒して破壊。三日前は窓拭きで、力を込め過ぎて破壊。そのほか、ぬくもり妖怪鍼治療院以外の二寸坊師村内でも⋯色々やらかしてます。
妖怪二寸坊師内では《二寸破壊坊師》の称号を頂きましたよね?
「夏風さんにはタオルたたみをお願いします」
「おう!院長!わかった!行ってくるぜ!」
そんな⋯やらかし妖怪の夏風さんに、院長さんは仕事を頼みました。タオルを畳むだけなので、簡単なお仕事です。破壊行為は⋯大丈夫そうですね⋯。
院長さんは夏風さんだけでなく、誰が失敗しても怒りません。『次は、気をつけましょう』と言ってすぐに許します。
本当に穏和な性格ですね。しかし、院長たる者、時にはビシッと指摘しなくてはいけませんよ!メリハリは大切ですよ!
◇◇◇
「うぉ~~!助けてくれ~!」
数分後⋯鍼の手入れや掃除をしていると⋯夏風さんのヘルプミーコールが院内に響きました。
「「「な!何事だーー!」」」
「えっ?何かあった?」
「嫌な予感がするのじゃ⋯」
皆んなが慌てて夏風さんのもとに駆けつけると⋯そこには⋯
タオルが絡まり⋯ぐるぐる巻きの状態で転がっている夏風さんがいました。
なぜ?ただタオルをたたんでいただけでは?それなのに⋯ぐるぐる巻きって⋯どうやって?
院長さんは心配そうに、私達二寸坊師達は呆れています。
「夏風さん⋯これは?この状況は?」
「おぅ⋯院長⋯タオルをたたもうと広げたらよう⋯自分の上に掛かってきて⋯抜け出そうと暴れたら絡まってしまった!いや~参った参った!がはは!」
「「「夏風⋯」」」
「「「夏風さん⋯」」」
夏風さん⋯呆れて何も言えませんよ⋯。院長さんを見ると⋯さすがに少しため息をこぼしていました。
院長さんがぐるぐる巻きのタオルから夏風さんを救出。どこもケガをしなかったようで、元気に体を動かしてます。
「ほっほっ!ほっほっ!」
「ケガはなかったようですね⋯はぁ⋯よかった」
「それじゃあ続けてタオルをたたむぞ!」
「いえ⋯タオルは僕がたたみますので、今日はもう帰っていいですよ」
「そうか?んじゃ~おっ先に~!また明日な~!」
夏風さんは元気に帰っていきました。
◇◇◇
「ヒメ様⋯夏風さんは本当に役立たずですね⋯豪快すぎ」
「木蓮ちゃん⋯そうですね⋯」
見習いの私が言うのもなんですが⋯豪快すぎというより⋯問題児ですよ⋯。取り柄は、底抜けに明るい。ポジティブの塊って⋯ところでしょうか?
「夏風⋯居るところ⋯騒動ありだな⋯」
秋風さんが⋯ボソリとつぶやきました。まさにその通りですね⋯。
◇◇◇
ぬくもり妖怪鍼術院は、今日も元気に開院しております。
皆さんも鍼治療に興味があれば、ぜひお問い合わせください。
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