妖怪鍼術院へようこそ！〜見習いツボ押し姫は仕事に恋にがんばります〜

2 妖怪二寸坊師

　こんにちは。姫花です。皆様、元気にお過ごしでしょうか？

　山奥にある二寸坊師村の雪も溶け、フキノトウが芽を出し、春がやって来ました。

　どこの山奥にあるのかな？っとな！
　二寸坊師村の場所は秘密です。ドローンを飛ばしても見つけられませんよ！いわゆる隠れ里で、結界にも守られてますからね！えっへん！

　えっ？そもそも⋯妖怪二寸坊師？なにそれ？どんな妖怪？とお思いの方もいらっしゃるでしょうね。

　妖怪二寸坊師を知らない人のために、姫花が説明しますね。

◇◇◇

　名前の通り、大きさは二寸⋯約六～七センチと小さい妖怪。黒髪に琥珀色の瞳。見た目は、人間と変わらないです。

　鍼治療を施す事を至福とし、真夜中⋯夜に人々が寝静まり⋯深い眠り入った時⋯私達は行動を開始します。

♪血の巡りの悪い人はいね～か～？と夜な夜なヒッソリと治療を必要とする人を探すのです。

《ただ寝ただけなのに、朝起きたら何だか体が、すご～く軽くなった事はありませんか？
それは、【妖怪二寸坊師にすんぼうし】の仕業かもしれませんよ？》

　夜中にあちこち出歩いては、鍼治療、妖怪仲間達から依頼があれば鍼治療を施す。そうやって昔から変わらず過ごしてきました。

　妖怪ライバル？いますよ！誰か分かりますか？

　ヒントは、同じく真夜中に行動します。

　それでは！シンキングのタイム！スタート！

《ズカジャカジョン！ズカジャカジョン！ズカズカジャカジョンのぽくぽく⋯チン！》


　⋯⋯⋯⋯⋯時間です。

　正解は【妖怪まくら返し】でした！

　まくら返しも人間が寝静まった夜に行動します。私達二寸坊師と行動範囲が被るので、よく遭遇するそうな？

　当たりましたか？当たった方には姫花より盛大なる拍手を送りましょう！

　えっ？ヒントがおかしい？『妖怪は基本夜に行動する者が多いから、当てるのが難しかった』⋯ですか？確かにうっかり姫花でした！

　おっと！少し話がそれてしまいましたが⋯説明を続けますよ。

◇◇◇

　妖怪には、全妖怪世界共通とそれぞれの妖怪族の中で、掟があります。

　妖怪二寸坊師にも掟があります。

其の一、ツボ押し技で故意に殺生してはならない。

其の二、基本、ツボ押しは夜に行動すべし。また、人間に姿を見られてはならない。

其の参、自分専用の鍼の手入れを怠ってはならない。

其の四、蜜蜂達とは仲良くすること。乱暴に振る舞ってはならない。

其の五、罪を犯した者は、鍼地獄の刑に処す。

　しかし⋯中世⋯近代⋯と時代の発展に比例し⋯少しずつ掟に逆らう者が増えてきました。

　妖怪界も人間界と同じです。時代が変わってくれば、規律もその時代に合わなくなってきたのです。

　私達、妖怪二寸坊師がこの世に知られたのは、三年前。

　うっかり者の妖怪二寸坊師が、昼間にふらふらと歩いていた時、道端でぎっくり腰を発症した老人を助けました。

　その老人は、元政治家だったそうです。人命救助？をした功労で表彰され、テレビに映ったことで、人間界に広まってしまいました。

　ちなみにテレビに映ったのは、私の祖父の弟⋯松次郎まつじろうおじさんです。

夜中つけっぱなしのテレビに⋯

【妖怪二寸坊師の松次郎さんです！】と紹介され、テレビに向かい「イエーイ！ピース!ピース！松次郎だよ～」とピースサインをした姿が映った映像を見て、仲間の妖怪は驚きすぎて⋯腰を抜かしたそうです。

　それから私達の事が全国に広まるまで、たった三日⋯。テレビ、インターネット⋯文明とは恐ろしい⋯。

　その後、私達の鍼治療が評判になり、人間界で働き出す者が続出。

　しかし、妖怪の施術を嫌悪する人間もいますので、妖怪二寸坊師がいる事が一目でわかるように妖怪二寸坊師を雇っている治療院には、必ず【妖怪鍼術院】を名乗る義務が定められています。

　それと同時に人間の中に妖怪二寸坊師を誘拐する者が現れました。数人の妖怪二寸坊師が誘拐されましたが、無事救助されました。

　現在は防犯強化の為、店の周りには【妖怪保護結界】が張られており、私達に危害を加えようとすると結界に弾かれます。悪者は、敷地内には入れません。セキュリティも万全です！安心です！
　安全安心は仕事をする上で、欠かせませんからね！

　妖怪鍼術院は⋯日本のどこかにあります。場所は⋯〇✕△□⋯です。皆さん！『どこにあるのかな～？』⋯と、あっちら⋯こっちら探してみてはいかがですか？

　あなたのすぐそばにあるかもしれませんよ？

◇◇◇

　あっそうそう！私達は二寸しかありませんが妖怪ですので、人間よりは強いですよ！捻り潰そうとしても出来ませんからね！

　しかし⋯ムキムキマッチョの力自慢のゴリゴリゴリラマンは⋯もしかすれば潰せるのでしょうか？

　チャレンジしたい方は、ぬくもり妖怪鍼術院までお手紙ください。

　投函先は⋯『妖怪ポスト』にお願いします！

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

姫花★妖怪豆知識

◇枕まくら返し（別名　枕小僧まくらこぞう）

　いたずら好きの妖怪。眠っている人の枕をひっくり返したり、向きを変えたり、移動させたりします。昔は夢を見ている間に枕を返し、人の命を奪うこともありましたが、現代では、人口減少のため、枕を返したり枕の移動だけを地味に楽しんでいるようです。

《ま～くら！まくら！枕返すか⋯変えようか？～♪》
　今夜は⋯アナタの寝室へ訪れるかもしれませんよ？

（姫花脳内では⋯『まくら小僧なだけに⋯まくらをあっちら⋯こっちら場所を変えて移動しているとな！⋯あっ！枕を石に⋯変えてますね⋯。こ！これは！部屋の模様替えを楽しんでいるのでしょうか？』⋯皆さんはどう思いますか？）

※姫花妖怪豆知識は、姫花の見解です。実際の伝承とは異なる場合があります。ご了承くださいますようお願い申し上げます。ぺこりんこ！