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閉じていく時間
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魔法の国の復活に失敗してから、何日か経ってしまった。
まりあちゃんはあの日以来、どこかへ消えてしまった。
レタスは、ずっと寝ている。
学校はいつも通りだった。
西谷「うちのインフも寝たままよ。全然動かないわ」
夢ノ川「そっか。。」
クラスの人、町の人たちは、誰も魔法の王国の事を覚えていないみたい。
あんなに大変な事が起きたのに。
まりあちゃんの魔法のせいだろう。
あらかじめ失敗した時用に用意していたのだ。
西谷「わたくし、魔法が使えなくなっちゃったわ。
あなたは?」
夢ノ川「使えない。。」
西谷「そう。。」
二人の会話は途切れ途切れだ。
西谷「まるで何もなかったみたいね。」
夢ノ川「うん」
学校は今までと何も変わらない。
変わった事と言えば、しおりが、かおりの世界からいなくなり、
胸の痛みが加わった。
西谷「もしかして、これで終わりなのかしらね。。」
西谷「このまま、ただのカワイイ
小学三年生に戻ってしまうとしたら。。」
夢ノ川「かわいい?」
西谷「私 、ちょっとだけ後悔しているのは、
魔法でもっとご町内のトラブルを解決しておけばよかったかな、なんて。」
夢ノ川は微笑む。
夢ノ川「そうね。」
西谷「わたくしの個性と言うか、
ちょっと自分の欲望ばかり叶えすぎてしまったわ」
西谷「人の役に立つ魔法とか、使いたかったわ。。」
西谷「魔法の王国、復活させたかったわね」
夢ノ川「うん。。」
西谷「どうなっちゃうのかしら。。」
誰にもわからない。
沈黙が続いた。
二人は別れ、それぞれ家路についた。
西谷「インフ。。?」
家に帰ると、のあが手作りした
インフィニティの小さな木製のベッドから、
妖精の姿が消えてしまっていた。
冷たい汗が流れた。
全てが元に戻り始めていた。
夢ノ川「あーあ。。」
ため息をついちゃいけないってわかっているけれど。
ついつい出てしまう。
しおりちゃんと帰りたいな。。
色々お話したいよ。。
夢ノ川「ただいま。。」
弱々しい小さな声。
母「おかえりなさい、かおり」
レタスは気を失ったままだ。
夢ノ川「どうしちゃったんだろう。。レタス」
なんでこんな事に。。
獣医さんに注射を打ってもらったが、このまま起きなかったら。。
回想。
お父さん「かおり、その猫は。。」
かおり「何言ってるの、お父さん!
うちのレタスだよ!」
お母さんもお父さんも、レタスの事を忘れていた。
しおりちゃんとも。。
ずっと会っていない。
話したいことが沢山あるのに。
しおりちゃん、凄く怒ってた。
あんなに、泣いて。
私が傷つけてしまった。
しおりちゃんが怪我をしたりしないように、
魔法の国の復活の事を黙っていたら。
言えばよかった。
言った上で、しおりちゃんもよく納得した上でやればよかった。
よりによって、私は黙っていた。
一番楽で、一番よくない事をしてしまった。
選んだのは、私だ。
もう、許してくれないのかな。。
わたし、一体どうしたら。。
「にゃ。。」
猫の声!
夢ノ川「レタス、レタス!」
私はレタスを抱き抱えた。
レタスが数日ぶりに目を覚ました!
「にゃお?」
しかし口をきいてくれない。
猫のふりをしているの?
言葉がわからないの?
魔法は、どこへ行ってしまったの。。
夢ノ川「しょうがないな、レタスは。
お腹減ったでしょ。。」
かおりは台所にレタスの好物のレタスを取りに立ち上がった。
まりあはかおり達の前から姿を消していた。
大き目の土管の中で、雨風と人目を凌いで、
最低限の隠れ蓑魔法だけを使って、膝を抱えていた。
何日も経ってしまった。
世界にかけた魔法がどんどん失われているのが
マリアにはわかった。
このままでは全てが消えてしまう。
レタスの最後の言葉、
「なにもするな」を守っていた。
あの二人が鍵だったのだ。
やはり夢ノ川と愛甲石田の喧嘩を
無理やりにでも止めさせなければ。
しかし、どうやって?
そもそも自分のせいで二人は仲たがいを起こしてしまった。人間の心は動かないだろう。
わからない。
わからないが、マリアは止まっている訳には行かなかった。
かおりは怒っているに違いない。
何度もためらった。
躊躇いながら、少しづつかおりの家に近づいていった。
遠くから、様子を見るだけ。。
めまいが酷い。
魔力が、ほとんど残ってないんだ。
自分が、消えてしまいそうだ。
歩くだけで、こんなに魔力を使ってしまうとは。
とうとう、
まりあはかおりの家を訪れた。
レタスの言いつけに反するが。。
かおりが怒りだしたら、理屈で押し切ろう。
私の考えはまちがっていない。
かおりも考えればわかるはずだ。
私はかおりの家のチャイムを鳴らした。
夢ノ川「まりあちゃん!大丈夫だった?」
外れると思っていた。
私の予想は外れた
会うなり、夢ノ川は湊未来を気遣う言葉をかけた。
心配された。
私はなんて幼稚なんだろう。
人の心ってわからない。。
本当にバカだ。。
正直、怒られると思っていた。
怒鳴られたり、拒否されたり。
全く、夢ノ川はお人好しで、優しい。
夢ノ川「まりあちゃんも消えちゃったかと思った!
よかったー。」
湊未来「。。わたしのせいで。その、あいこう。。」
夢ノ川「まりあちゃんのせいじゃないよ。」
そんな。
私が悪いのに。
駄目だ。これ以上言えない。。
言うべきではない。
まりあの足元に、猫がきた。
にゃー。
湊未来「猫?」
夢ノ川「うん。今日起きたの。」
優しく抱きかかえるかおり。
夢ノ川「でも、レタスお喋りしてくれないの。
猫のふりしてるんだよー。」
にゃー。
違う。
まりあにはすぐわかった。
全く魔力を感じない。今は本当にただの猫だ。
レタスの魂はどこに行ってしまったのか。
夢ノ川「まりあちゃんのところのキタローは?」
湊未来「動かない。」
そして、魔力を失いつつある。
消える、のだろうか。
わからない。
全てが元に戻るとしたら、充分あり得る事だ。
それはまりあ自身も。。
夢ノ川「そっかー。
のあちゃんのとこのインフちゃんも眠ってるって。
魔法も使えなくなっちゃった。。
とりあえず、こんな状態じゃ魔法の国は復活できないよね。。
ごめんね。」
まりあ自身が消える前に、言ってしまおうか。。
魔法が、希望が消える前に。
湊未来「あの。。!」
にゃー。
いや!駄目だ!
湊未来「なんでもない。。また来る。」
二人を信じよう。
それがレタスの遺志だ。
めまいが酷い。
息を整える。
大丈夫だ、まだ消えない。
まだしばらく、存在できるだろう。
その間に、きっと二人は仲直りできるはず。
私たちが全て消えてしまう前に。。
------
更に何日か経った。
学校は何も変わらない。
変わらなくていいのだろうか。
夢ノ川「あーあ。。」
学校帰り。
またいつものように小さなことで悩む日々。
夢ノ川「なんでわたしはいつもこうなんだろうなあ。。」
電柱の陰に。
誰かが隠れていた。
ショートカットのサイドテールの女の子。
しおりだった。
夢ノ川「。。しおり。。ちゃん。。」
待ってたんだ。
どうしよう。
ドキドキする。
何を喋ればいいの?
愛甲石田「レタス、起きた?」
用件を切り出すしおり。
明らかにぎこちない。
かおりが迷っていると、
しおりの表情が曇った。
やっぱり来るんじゃなかった。
もう終わりなら。
言ってしまおう。
しおりは用意していた言葉を吐き出した。
愛甲石田「私、ずっと嫌だった。
なんで私は魔法使えないんだろうって」
夢ノ川「しおりちゃん。。」
愛甲石田「でも嬉しかったんだ。
かおりちゃんがふたりでひとりだって言ってくれて。
だから全然気にならなかった。魔法が使えないこと。
。。でも、西谷さんが現れた。」
愛甲石田「魔法が使える、カッコイイお友達。
昔見たプリキュアの、本物みたいな娘。
今度こそ、敵わないと、私は思った。
私の居場所は無くなるんだって。
魔法が使えない私なんて。。」
愛甲石田「でも、かおりは相変わらず、
私と仲良くしてくれた。嬉しかった。。
西谷さんも、実は見た目によらず、優しい人だった。
あまり人には見せないけれど。」
愛甲石田「でもついに。
今度と言う今度は。
とうとう本当の事を言われちゃった。
ずっと誤魔化してきたけど。
はっきり言われちゃった。
私は関係ない人なんだって。」
愛甲石田「関係ない人なんだよ、私は!」
そうじゃない!
しおりの嘆きをきいて、
かおりは胸が堪らなく痛い。
言葉が心の中で溢れてくるが、何を話してよいかわからない。
ようやくひとこと、かおりは叫んだ。
夢ノ川「関係なくない!」
夢ノ川「関係なくなんか、ないよ!
わたしは。。!」
言葉が止まった。
ふたりはじっと、お互いの目を見つめあった。
なんで私たちはわかり合えないの?!
こんなにしおりちゃんの事が好きなのに!
始めは睨むように。
しかしすぐに優しい眼差しに。
ふたりはひとつ。
ああ、そうか。
わかった気がする。
詩緒梨 の気持ちが。
ふたりで一人。
なんだ最初からわかっていた事。
ふたりで一人の唯一の存在。
しおりも、何も言わずに立っている。
わかる。
言葉が止まったのに、
気持ちが、手に取るように。
喋らなくていい。
悲しみも、喜びも。
沈黙は続いた。何の嫌な感じもない。心地よい。
気持ちが通じ合うって、こう言う事なんだ。
足を進め、しおりに近づくかおり。
しおりも歩を進めた。
ゆっくりと、引かれ合うように、近づいた。
どちらともなく、お互いの肢体に手を伸ばし触れた。
抱擁し合うふたり。
ふたりでひとつ。
ふたりはひとつ。
夢ノ川「あのね、しおりちゃん」
愛甲石田「かおり。。」
夢ノ川「魔法の国には、世界中の妖精さんがいたんだって。。
それが国が壊れてしまってバラバラに世界中に散ってしまったんだって。
レタスが言ってた。」
愛甲石田「うん」
夢ノ川「私、魔法の国を復活させたいの!
妖精さん達が集まって、幸せに暮らす為に!」
愛甲石田「そう。」
夢ノ川「今までは人に言われた通りにしてきた。
でも私はレタスの為に、妖精さんたちの為に、
魔法の国を復活させたいの!」
愛甲石田「うん。」
夢ノ川「一緒にやってくれる?」
愛甲石田「当たり前だよ!」
夢ノ川「ごめんね、しおりちゃん」
愛甲石田「ごめんなさい、かおり」
✨️🍵🍮✨️
その時、足元で猫が鳴いた。
「にゃー」
いや、猫の声ではない。
低くて、可愛くない、男性声優のような声。
「あのなあ、かおり。。」
「最近食わしてもらってた奴なあ。。」
「キャベツだぜ。。」
ふたりは抱擁しあったまま、しばらく笑っていた。
まりあちゃんはあの日以来、どこかへ消えてしまった。
レタスは、ずっと寝ている。
学校はいつも通りだった。
西谷「うちのインフも寝たままよ。全然動かないわ」
夢ノ川「そっか。。」
クラスの人、町の人たちは、誰も魔法の王国の事を覚えていないみたい。
あんなに大変な事が起きたのに。
まりあちゃんの魔法のせいだろう。
あらかじめ失敗した時用に用意していたのだ。
西谷「わたくし、魔法が使えなくなっちゃったわ。
あなたは?」
夢ノ川「使えない。。」
西谷「そう。。」
二人の会話は途切れ途切れだ。
西谷「まるで何もなかったみたいね。」
夢ノ川「うん」
学校は今までと何も変わらない。
変わった事と言えば、しおりが、かおりの世界からいなくなり、
胸の痛みが加わった。
西谷「もしかして、これで終わりなのかしらね。。」
西谷「このまま、ただのカワイイ
小学三年生に戻ってしまうとしたら。。」
夢ノ川「かわいい?」
西谷「私 、ちょっとだけ後悔しているのは、
魔法でもっとご町内のトラブルを解決しておけばよかったかな、なんて。」
夢ノ川は微笑む。
夢ノ川「そうね。」
西谷「わたくしの個性と言うか、
ちょっと自分の欲望ばかり叶えすぎてしまったわ」
西谷「人の役に立つ魔法とか、使いたかったわ。。」
西谷「魔法の王国、復活させたかったわね」
夢ノ川「うん。。」
西谷「どうなっちゃうのかしら。。」
誰にもわからない。
沈黙が続いた。
二人は別れ、それぞれ家路についた。
西谷「インフ。。?」
家に帰ると、のあが手作りした
インフィニティの小さな木製のベッドから、
妖精の姿が消えてしまっていた。
冷たい汗が流れた。
全てが元に戻り始めていた。
夢ノ川「あーあ。。」
ため息をついちゃいけないってわかっているけれど。
ついつい出てしまう。
しおりちゃんと帰りたいな。。
色々お話したいよ。。
夢ノ川「ただいま。。」
弱々しい小さな声。
母「おかえりなさい、かおり」
レタスは気を失ったままだ。
夢ノ川「どうしちゃったんだろう。。レタス」
なんでこんな事に。。
獣医さんに注射を打ってもらったが、このまま起きなかったら。。
回想。
お父さん「かおり、その猫は。。」
かおり「何言ってるの、お父さん!
うちのレタスだよ!」
お母さんもお父さんも、レタスの事を忘れていた。
しおりちゃんとも。。
ずっと会っていない。
話したいことが沢山あるのに。
しおりちゃん、凄く怒ってた。
あんなに、泣いて。
私が傷つけてしまった。
しおりちゃんが怪我をしたりしないように、
魔法の国の復活の事を黙っていたら。
言えばよかった。
言った上で、しおりちゃんもよく納得した上でやればよかった。
よりによって、私は黙っていた。
一番楽で、一番よくない事をしてしまった。
選んだのは、私だ。
もう、許してくれないのかな。。
わたし、一体どうしたら。。
「にゃ。。」
猫の声!
夢ノ川「レタス、レタス!」
私はレタスを抱き抱えた。
レタスが数日ぶりに目を覚ました!
「にゃお?」
しかし口をきいてくれない。
猫のふりをしているの?
言葉がわからないの?
魔法は、どこへ行ってしまったの。。
夢ノ川「しょうがないな、レタスは。
お腹減ったでしょ。。」
かおりは台所にレタスの好物のレタスを取りに立ち上がった。
まりあはかおり達の前から姿を消していた。
大き目の土管の中で、雨風と人目を凌いで、
最低限の隠れ蓑魔法だけを使って、膝を抱えていた。
何日も経ってしまった。
世界にかけた魔法がどんどん失われているのが
マリアにはわかった。
このままでは全てが消えてしまう。
レタスの最後の言葉、
「なにもするな」を守っていた。
あの二人が鍵だったのだ。
やはり夢ノ川と愛甲石田の喧嘩を
無理やりにでも止めさせなければ。
しかし、どうやって?
そもそも自分のせいで二人は仲たがいを起こしてしまった。人間の心は動かないだろう。
わからない。
わからないが、マリアは止まっている訳には行かなかった。
かおりは怒っているに違いない。
何度もためらった。
躊躇いながら、少しづつかおりの家に近づいていった。
遠くから、様子を見るだけ。。
めまいが酷い。
魔力が、ほとんど残ってないんだ。
自分が、消えてしまいそうだ。
歩くだけで、こんなに魔力を使ってしまうとは。
とうとう、
まりあはかおりの家を訪れた。
レタスの言いつけに反するが。。
かおりが怒りだしたら、理屈で押し切ろう。
私の考えはまちがっていない。
かおりも考えればわかるはずだ。
私はかおりの家のチャイムを鳴らした。
夢ノ川「まりあちゃん!大丈夫だった?」
外れると思っていた。
私の予想は外れた
会うなり、夢ノ川は湊未来を気遣う言葉をかけた。
心配された。
私はなんて幼稚なんだろう。
人の心ってわからない。。
本当にバカだ。。
正直、怒られると思っていた。
怒鳴られたり、拒否されたり。
全く、夢ノ川はお人好しで、優しい。
夢ノ川「まりあちゃんも消えちゃったかと思った!
よかったー。」
湊未来「。。わたしのせいで。その、あいこう。。」
夢ノ川「まりあちゃんのせいじゃないよ。」
そんな。
私が悪いのに。
駄目だ。これ以上言えない。。
言うべきではない。
まりあの足元に、猫がきた。
にゃー。
湊未来「猫?」
夢ノ川「うん。今日起きたの。」
優しく抱きかかえるかおり。
夢ノ川「でも、レタスお喋りしてくれないの。
猫のふりしてるんだよー。」
にゃー。
違う。
まりあにはすぐわかった。
全く魔力を感じない。今は本当にただの猫だ。
レタスの魂はどこに行ってしまったのか。
夢ノ川「まりあちゃんのところのキタローは?」
湊未来「動かない。」
そして、魔力を失いつつある。
消える、のだろうか。
わからない。
全てが元に戻るとしたら、充分あり得る事だ。
それはまりあ自身も。。
夢ノ川「そっかー。
のあちゃんのとこのインフちゃんも眠ってるって。
魔法も使えなくなっちゃった。。
とりあえず、こんな状態じゃ魔法の国は復活できないよね。。
ごめんね。」
まりあ自身が消える前に、言ってしまおうか。。
魔法が、希望が消える前に。
湊未来「あの。。!」
にゃー。
いや!駄目だ!
湊未来「なんでもない。。また来る。」
二人を信じよう。
それがレタスの遺志だ。
めまいが酷い。
息を整える。
大丈夫だ、まだ消えない。
まだしばらく、存在できるだろう。
その間に、きっと二人は仲直りできるはず。
私たちが全て消えてしまう前に。。
------
更に何日か経った。
学校は何も変わらない。
変わらなくていいのだろうか。
夢ノ川「あーあ。。」
学校帰り。
またいつものように小さなことで悩む日々。
夢ノ川「なんでわたしはいつもこうなんだろうなあ。。」
電柱の陰に。
誰かが隠れていた。
ショートカットのサイドテールの女の子。
しおりだった。
夢ノ川「。。しおり。。ちゃん。。」
待ってたんだ。
どうしよう。
ドキドキする。
何を喋ればいいの?
愛甲石田「レタス、起きた?」
用件を切り出すしおり。
明らかにぎこちない。
かおりが迷っていると、
しおりの表情が曇った。
やっぱり来るんじゃなかった。
もう終わりなら。
言ってしまおう。
しおりは用意していた言葉を吐き出した。
愛甲石田「私、ずっと嫌だった。
なんで私は魔法使えないんだろうって」
夢ノ川「しおりちゃん。。」
愛甲石田「でも嬉しかったんだ。
かおりちゃんがふたりでひとりだって言ってくれて。
だから全然気にならなかった。魔法が使えないこと。
。。でも、西谷さんが現れた。」
愛甲石田「魔法が使える、カッコイイお友達。
昔見たプリキュアの、本物みたいな娘。
今度こそ、敵わないと、私は思った。
私の居場所は無くなるんだって。
魔法が使えない私なんて。。」
愛甲石田「でも、かおりは相変わらず、
私と仲良くしてくれた。嬉しかった。。
西谷さんも、実は見た目によらず、優しい人だった。
あまり人には見せないけれど。」
愛甲石田「でもついに。
今度と言う今度は。
とうとう本当の事を言われちゃった。
ずっと誤魔化してきたけど。
はっきり言われちゃった。
私は関係ない人なんだって。」
愛甲石田「関係ない人なんだよ、私は!」
そうじゃない!
しおりの嘆きをきいて、
かおりは胸が堪らなく痛い。
言葉が心の中で溢れてくるが、何を話してよいかわからない。
ようやくひとこと、かおりは叫んだ。
夢ノ川「関係なくない!」
夢ノ川「関係なくなんか、ないよ!
わたしは。。!」
言葉が止まった。
ふたりはじっと、お互いの目を見つめあった。
なんで私たちはわかり合えないの?!
こんなにしおりちゃんの事が好きなのに!
始めは睨むように。
しかしすぐに優しい眼差しに。
ふたりはひとつ。
ああ、そうか。
わかった気がする。
詩緒梨 の気持ちが。
ふたりで一人。
なんだ最初からわかっていた事。
ふたりで一人の唯一の存在。
しおりも、何も言わずに立っている。
わかる。
言葉が止まったのに、
気持ちが、手に取るように。
喋らなくていい。
悲しみも、喜びも。
沈黙は続いた。何の嫌な感じもない。心地よい。
気持ちが通じ合うって、こう言う事なんだ。
足を進め、しおりに近づくかおり。
しおりも歩を進めた。
ゆっくりと、引かれ合うように、近づいた。
どちらともなく、お互いの肢体に手を伸ばし触れた。
抱擁し合うふたり。
ふたりでひとつ。
ふたりはひとつ。
夢ノ川「あのね、しおりちゃん」
愛甲石田「かおり。。」
夢ノ川「魔法の国には、世界中の妖精さんがいたんだって。。
それが国が壊れてしまってバラバラに世界中に散ってしまったんだって。
レタスが言ってた。」
愛甲石田「うん」
夢ノ川「私、魔法の国を復活させたいの!
妖精さん達が集まって、幸せに暮らす為に!」
愛甲石田「そう。」
夢ノ川「今までは人に言われた通りにしてきた。
でも私はレタスの為に、妖精さんたちの為に、
魔法の国を復活させたいの!」
愛甲石田「うん。」
夢ノ川「一緒にやってくれる?」
愛甲石田「当たり前だよ!」
夢ノ川「ごめんね、しおりちゃん」
愛甲石田「ごめんなさい、かおり」
✨️🍵🍮✨️
その時、足元で猫が鳴いた。
「にゃー」
いや、猫の声ではない。
低くて、可愛くない、男性声優のような声。
「あのなあ、かおり。。」
「最近食わしてもらってた奴なあ。。」
「キャベツだぜ。。」
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