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ノルドグレーン分断
戦端 3
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はたしてニーダールが目にしたものは、ミットファレットから撤退してゆく途上にあるグスタフソン連隊だった。彼は大いに狼狽した。目標を達せられなかった場合、ヴァルデマル派にニーダールの席はない。あぶれ者として惨めに過ごす余生を想像し、彼は身震いした。そして――すでに戦略的には敗北していることを知りつつも――ヴァルデマルに対する自己弁護の種をつくるため、なかば捨て鉢になってグスタフソン連隊の後尾に食らいついたのだった。
唐突に出された攻撃命令に、ニーダール麾下の兵士たちは混乱していた。
「なんで敵がこんなとこにいるんだよ!」
「ありゃどう見たってカッセル軍じゃねえだろ。あの旗はどっかで見たことあるぞ」
「や、奴らはカッセルの偽装兵なのだ! 騎士道に悖る卑劣漢どもだ!」
小隊の隊長はそう言って兵士たちを煽り立てようとするが、その不自然な説明で納得する者はいなかった。兵士たちは、どう見てもカッセル軍ではない部隊との戦闘に戸惑っている。
ニーダールは狼狽える兵士を鼓舞するように、自ら先陣を切って騎馬を走らせた。柄に鉄球の付いた武器を掲げ、年老いたとは思えない声量の雄叫びを上げる。
「ゆくぞ!」
「……ニ、ニーダール様に続け!」
戦いに際して配下ばかり陣頭に立たせず、まず己自身が先陣を切ったことは、ニーダールの数少ない美点だったろう。
他方、ニーダールの突撃を迎え撃つグスタフソン連隊は、状況こそ飲み込めていないが応戦態勢は整っている。即座に盾を構えた兵士が前面に立ち、騎馬の突進を受け止める戦術を取った。だがニーダールは右手に持った巨大な鈍器を振るい、グスタフソン連隊の兵士を盾ごと叩き飛ばした。ニーダール軍から喚声が上がる。
「フォーゲルクロウ」
グスタフソンが馬を走らせ、エディットのもとに駆けつけた。グスタフソンは隊列の先頭付近を、エディットは中ほどを進んでいた。隊列の最後尾が騒がしい。それにはエディットのほうが先に気づいていた。
「何があったの?」
「わからん。吉事でないことは確かだ。念のため陣形を再編しておく」
「……カッセル軍に追いつかれた?」
「ミットファレットの無血開城をあちらが見抜いていたなら、不可能ではないだろうが……それにしたところで、カッセル軍に我らを即時追撃するに足る理由はあるか? 敵陣への深追いなど、誰でも警戒するものだろう」
「考えにくいわね」
「どうも嫌な予感がするな……俺は戦闘の指揮に回る。用心しておけ」
幾人かの勇敢な、あるいは無謀な兵士は、ニーダールに続いてグスタフソン連隊に攻めかかった。だがその数は少なく、軍勢としての勢いには繋がらなかった。ニーダール軍は移動中に――ほとんど指揮官の思いつきで――奇襲に移ったため、もともと隊列は伸び切り、戦闘用の陣形は組めていなかった。戦列は乱れ、命令に従い前進しようとする隊と、困惑して態度を保留する隊がもつれ合って身動きが取れなくなる場所も散見される。総数六千ほどの軍勢が、その二十分の一も戦力として機能していなかった。
それとは対称的に、グスタフソン連隊の殿軍は即応態勢を整えており、ニーダールの孤軍奮闘にも陣形を崩すことなく応戦できていた。そのニーダールが攻め疲れて一時後退した頃、グスタフソン連隊の反撃が始まった。
唐突に出された攻撃命令に、ニーダール麾下の兵士たちは混乱していた。
「なんで敵がこんなとこにいるんだよ!」
「ありゃどう見たってカッセル軍じゃねえだろ。あの旗はどっかで見たことあるぞ」
「や、奴らはカッセルの偽装兵なのだ! 騎士道に悖る卑劣漢どもだ!」
小隊の隊長はそう言って兵士たちを煽り立てようとするが、その不自然な説明で納得する者はいなかった。兵士たちは、どう見てもカッセル軍ではない部隊との戦闘に戸惑っている。
ニーダールは狼狽える兵士を鼓舞するように、自ら先陣を切って騎馬を走らせた。柄に鉄球の付いた武器を掲げ、年老いたとは思えない声量の雄叫びを上げる。
「ゆくぞ!」
「……ニ、ニーダール様に続け!」
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他方、ニーダールの突撃を迎え撃つグスタフソン連隊は、状況こそ飲み込めていないが応戦態勢は整っている。即座に盾を構えた兵士が前面に立ち、騎馬の突進を受け止める戦術を取った。だがニーダールは右手に持った巨大な鈍器を振るい、グスタフソン連隊の兵士を盾ごと叩き飛ばした。ニーダール軍から喚声が上がる。
「フォーゲルクロウ」
グスタフソンが馬を走らせ、エディットのもとに駆けつけた。グスタフソンは隊列の先頭付近を、エディットは中ほどを進んでいた。隊列の最後尾が騒がしい。それにはエディットのほうが先に気づいていた。
「何があったの?」
「わからん。吉事でないことは確かだ。念のため陣形を再編しておく」
「……カッセル軍に追いつかれた?」
「ミットファレットの無血開城をあちらが見抜いていたなら、不可能ではないだろうが……それにしたところで、カッセル軍に我らを即時追撃するに足る理由はあるか? 敵陣への深追いなど、誰でも警戒するものだろう」
「考えにくいわね」
「どうも嫌な予感がするな……俺は戦闘の指揮に回る。用心しておけ」
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それとは対称的に、グスタフソン連隊の殿軍は即応態勢を整えており、ニーダールの孤軍奮闘にも陣形を崩すことなく応戦できていた。そのニーダールが攻め疲れて一時後退した頃、グスタフソン連隊の反撃が始まった。
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