処刑されることが仮確定している悪役令嬢に転生してしまったので、フラグ回避のため名探偵を演じます

英 志雨▶︎『マダム・ミニョン』8/12

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第一章 神さま、あなたを絶対に許しません!

もしかして、ユーフェミア・グランツハイムなの?

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 ずるり、どごっ。

「大丈夫ですか、ユーフェミアお嬢さま!」

 瑞々しい音の後に響いた轟音。そして、耳元で叫ぶ青年の声。

 目の前には眩しいばかりの晴天と、天使のように美しい顔を青ざめさせている男の子。

 恐らく、

 わたしを押し倒す格好のまま、石像のように固まってしまっている。

 仰向けの状態で目だけをギロリと押し下げれば、泥の中で浮き島のように顔を覗かせている岩が見える。

 むくり、と男の子を押しのけるように身を起こせば、後頭部からぴゅーっと血が噴き出した。

 お付きのギルバートが慌てた様子で真っ白なハンカチをあてがうが、それはみるみるうちに赤く染まっていく。

 反比例するように、ギルバートと目の前の男の子の顔が青ざめていく。

 でも、わたしにとって今そんなのどうでもいい。

「ねえ、今なんて言ったの?」

「だ、大丈夫ですかと」

「違う、その後」

 青ざめた顔をしたギルバートが、「今聞くようなことか」というような視線でわたしを見ているが、お構いなしにもう一度聞く。

「その後」

「……ユーフェミアお嬢さま、と」

「わたしの名前は、ユーフェミア? もしかして、ユーフェミア・グランツハイムなの?」

「そうですが……」

「グランツハイム公爵家の?」

「その通りですが……」

「ああ、死――」

「ちょ、お嬢さま!?」

 こうして前世の記憶を脳裏に叩き込まれたわたしの思考回路はショートして、気を失ったのだった。
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