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番外 恋愛ゲームのヒロインでは最早ないですわね
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◇
私は悪役令嬢というものらしいのです。
数年前、ファイメア・トラシアタ公爵令嬢として生きてきたこの私の前世が、異世界の庶民だったという記憶が蘇りました――
光り輝くような金の巻毛を長く背に流して、蒼の瞳のこのエルテルシア国の第二王子私の婚約者となるルファード・ライフェス・エルテルシア殿下が目前にいらっしゃるというにもかかわらず、体がいうことを聞いてくれませんでした。
そのお姿を目に映した瞬間に湧き出るように前世の記憶が蘇り、私は混乱してもちなおすべく努力はしましたが、どうにも出来ず結局立っていれなくなってしまい、その場に倒れ込みました。
慌てて倒れそうな私に手をさしのべようとしてくださった殿下のお姿が目に映りましたが、もう意識が保てません。
様々な断片的な記憶。ひとりの人の生きてきた証の欠片のようなものが私の中で急に膨らみ、それに翻弄され意識を失ってしまいました。
記憶の中の私は、今とは似ても似つかない姿であるにもかかわらず、それでいてこれは私であると私の中の何かが確信していました。
目まぐるしく場面は変わります。
狭い小さな部屋の中、楽しそうにひとりで本を読んでいましたり、今の私には理解出来ないゲームというものを興じていましたり――
魔法としてもみたことのない、魔法かしら? いえ、全く原理から違う世界自体が違うらしきもの。
乙女ゲーム? 不思議な言葉ですが、私の頭の中にはそれを見てそう言葉が浮かびました。
その記憶にあるゲームの中に私の姿らしいものがあって、それを悪役令嬢と呼んでいました。
この私が悪役だなんて。女性に対してひどい嫌がらせをするなんて。
ルファード殿下が婚約者の私を差し置いて、別の令嬢に心を寄せるようなそんなお話でした。
学院でヒロインとなるラナサリア・メハサナ男爵令嬢と出会い、愛を育まれる。
一方私は殿下のお気持ちを失い、ヒロインに妬心を抱き危害を加えて、断罪、婚約破棄されるという筋書き――
それからというもの、髪型の縦巻きロールはやめてみました。見た目もありますわよね? わかるかぎりは回避出来るものはしておきたいですから、幾らかわかる符号は避けながら過ごすようになりました。
当然はじまる妃としての教育も真面目に受けながらも、不安でいっぱいでした。
そして時は過ぎ、私達は学院に通いはじめ、殿下はヒロインに出会いました。
そうですわね――
現状、やはり殿下はある意味ヒロインに心を奪われているのかもしれません。
ですが、これは恋、ではありませんよね?
「勝負だ、今度こそ私が打ち勝ってみせる」
高らかに殿下は語ります。
それに対してラナサリア様は殿下に向けカーテシーをし、話し始めました。
「殿下、恐れながら申し上げます。実は私との勝負待ちのお方が多数故、しばらく予定が詰まっておりまして…………」
ヒロイン、ラナサリア嬢は淡い金の髪と淡い紫色の瞳の令嬢。見た目は美しくも可愛らしい方なのですが、何故か凛々しくも見え、不思議な迫力があります。
攻略対象者であるはずの殿下はかなりお強いお方です。それであるにもかかわらず、ヒロインに勝てません。
「それなら致し方ない。学院にいる以上誰も同等は決まりだ。特別扱いは無用。順番は守る」
「お気遣い痛み入ります」
これが攻略対象者とヒロインの会話なのですね。
甘さもなにもなさに思いを交わし合うことがあるのか考えてしまいます。剣は交わしあっているようですけど。
戦いの末に芽生える恋なのでしょうか?
記憶の中の乙女ゲームとは全く違う展開に戸惑いは隠せません。
しかし、私、このお強いラナサリア嬢に嫌がらせとか、どうやって出来るというのかしら? ルファード殿下すら勝てないという現状ですのに。
するつもりもありませんが、しようにも心が折れます。無理ですわよね?
最近ではモブ令嬢のはずのレフィラン・アナトレス伯爵令嬢と時折語らうようになりました。
殿下も心を許しているようで、初めは疑いの眼差しを隠しながらでしたが、他の婚約者の方々とも仲良くされているようです。
不思議な方だと思います。ふっと気づくと心にするっと入り込んでいるのです。押し付けがましくもなく。
殿下と私のこともお似合いですと祝福してくださいました。
そしてそのレフィラン様は、ラナサリア様につきまとっています。
ラナサリア様は苦笑しながら受け入れているようですが。女性に優しいのですよね。ラナサリア様。
それを見て攻略対象の方々が、レフィラン様に特別扱いされているラナサリア様に妬心を抱くようで。
ゲームのストーリーとはかなり変わっていますが、ラナサリア様はひたすらお忙しそう。
恋愛にではなく、勝負に。ひたすら誘われて。
恋愛ゲームのヒロインじゃないですわよね。最早この有り様では。
end
後書き
お気に入り登録、しおりありがとうございます。
ありがとうございます恒例の番外です。
荒いつたない小話ですが、楽しんでくださる方がいらっしゃいましたら幸いです。
私は悪役令嬢というものらしいのです。
数年前、ファイメア・トラシアタ公爵令嬢として生きてきたこの私の前世が、異世界の庶民だったという記憶が蘇りました――
光り輝くような金の巻毛を長く背に流して、蒼の瞳のこのエルテルシア国の第二王子私の婚約者となるルファード・ライフェス・エルテルシア殿下が目前にいらっしゃるというにもかかわらず、体がいうことを聞いてくれませんでした。
そのお姿を目に映した瞬間に湧き出るように前世の記憶が蘇り、私は混乱してもちなおすべく努力はしましたが、どうにも出来ず結局立っていれなくなってしまい、その場に倒れ込みました。
慌てて倒れそうな私に手をさしのべようとしてくださった殿下のお姿が目に映りましたが、もう意識が保てません。
様々な断片的な記憶。ひとりの人の生きてきた証の欠片のようなものが私の中で急に膨らみ、それに翻弄され意識を失ってしまいました。
記憶の中の私は、今とは似ても似つかない姿であるにもかかわらず、それでいてこれは私であると私の中の何かが確信していました。
目まぐるしく場面は変わります。
狭い小さな部屋の中、楽しそうにひとりで本を読んでいましたり、今の私には理解出来ないゲームというものを興じていましたり――
魔法としてもみたことのない、魔法かしら? いえ、全く原理から違う世界自体が違うらしきもの。
乙女ゲーム? 不思議な言葉ですが、私の頭の中にはそれを見てそう言葉が浮かびました。
その記憶にあるゲームの中に私の姿らしいものがあって、それを悪役令嬢と呼んでいました。
この私が悪役だなんて。女性に対してひどい嫌がらせをするなんて。
ルファード殿下が婚約者の私を差し置いて、別の令嬢に心を寄せるようなそんなお話でした。
学院でヒロインとなるラナサリア・メハサナ男爵令嬢と出会い、愛を育まれる。
一方私は殿下のお気持ちを失い、ヒロインに妬心を抱き危害を加えて、断罪、婚約破棄されるという筋書き――
それからというもの、髪型の縦巻きロールはやめてみました。見た目もありますわよね? わかるかぎりは回避出来るものはしておきたいですから、幾らかわかる符号は避けながら過ごすようになりました。
当然はじまる妃としての教育も真面目に受けながらも、不安でいっぱいでした。
そして時は過ぎ、私達は学院に通いはじめ、殿下はヒロインに出会いました。
そうですわね――
現状、やはり殿下はある意味ヒロインに心を奪われているのかもしれません。
ですが、これは恋、ではありませんよね?
「勝負だ、今度こそ私が打ち勝ってみせる」
高らかに殿下は語ります。
それに対してラナサリア様は殿下に向けカーテシーをし、話し始めました。
「殿下、恐れながら申し上げます。実は私との勝負待ちのお方が多数故、しばらく予定が詰まっておりまして…………」
ヒロイン、ラナサリア嬢は淡い金の髪と淡い紫色の瞳の令嬢。見た目は美しくも可愛らしい方なのですが、何故か凛々しくも見え、不思議な迫力があります。
攻略対象者であるはずの殿下はかなりお強いお方です。それであるにもかかわらず、ヒロインに勝てません。
「それなら致し方ない。学院にいる以上誰も同等は決まりだ。特別扱いは無用。順番は守る」
「お気遣い痛み入ります」
これが攻略対象者とヒロインの会話なのですね。
甘さもなにもなさに思いを交わし合うことがあるのか考えてしまいます。剣は交わしあっているようですけど。
戦いの末に芽生える恋なのでしょうか?
記憶の中の乙女ゲームとは全く違う展開に戸惑いは隠せません。
しかし、私、このお強いラナサリア嬢に嫌がらせとか、どうやって出来るというのかしら? ルファード殿下すら勝てないという現状ですのに。
するつもりもありませんが、しようにも心が折れます。無理ですわよね?
最近ではモブ令嬢のはずのレフィラン・アナトレス伯爵令嬢と時折語らうようになりました。
殿下も心を許しているようで、初めは疑いの眼差しを隠しながらでしたが、他の婚約者の方々とも仲良くされているようです。
不思議な方だと思います。ふっと気づくと心にするっと入り込んでいるのです。押し付けがましくもなく。
殿下と私のこともお似合いですと祝福してくださいました。
そしてそのレフィラン様は、ラナサリア様につきまとっています。
ラナサリア様は苦笑しながら受け入れているようですが。女性に優しいのですよね。ラナサリア様。
それを見て攻略対象の方々が、レフィラン様に特別扱いされているラナサリア様に妬心を抱くようで。
ゲームのストーリーとはかなり変わっていますが、ラナサリア様はひたすらお忙しそう。
恋愛にではなく、勝負に。ひたすら誘われて。
恋愛ゲームのヒロインじゃないですわよね。最早この有り様では。
end
後書き
お気に入り登録、しおりありがとうございます。
ありがとうございます恒例の番外です。
荒いつたない小話ですが、楽しんでくださる方がいらっしゃいましたら幸いです。
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